富山県西部1万4250戸で断水 能登半島地震、氷見市と高岡市の一部復旧

倒壊した家屋の片付けをする住民=3日午後3時20分ごろ、氷見市宇波

 富山県内で最大震度5強を観測した1日の能登半島地震の影響で、県内は3日午後4時現在、氷見、高岡、小矢部、射水の4市の計約1万4250戸で断水が続いている。氷見市や高岡市の一部などの計約5150戸は復旧した。路面が崩落するなどした道路は依然、復旧のめどは立っていない。

 富山県が3日に発表した。断水が続いているのは氷見市の約1万戸と高岡市の約4250戸。一方、氷見市は約4千戸、高岡市は約840戸が復旧し、射水と小矢部の2市はおおむね復旧した。

 県は3日、第4回災害対策本部員会議を開き、避難者数や被害の状況を報告した。同日午前10時半現在、避難所への避難者は富山、高岡、氷見、小矢部、射水の5市で計490人。避難所は計43カ所に開設した。

 県内の主な道路の被害状況は、国道359号は崩落の影響で小矢部市五郎丸から石川県境まで通行できない。国道471号は道路に亀裂が入るなどしたため、小矢部市後谷と富山市八尾町栃折でそれぞれ全面通行止めが続いている。能越自動車道の高岡-七尾城山インターチェンジ(IC)間は緊急車両以外は通行止めとしている。

 県のまとめでは、高岡市を除く家屋被害は全壊が氷見市の2件、一部損壊は魚津、氷見の2市の計7件、程度不明は黒部市、小矢部市、朝日町などで計48件。高岡市は、3日午後1時現在で一部損壊が70件、塀の倒壊が90件としている。

 県内の建物関係の被害では新たに、高岡市や射水市などの29の高齢者施設で断水や水漏れを確認。障害福祉サービス事業所は南砺市や富山市などの計10施設で被害が出た。

 県は県内の負傷者数について、魚津市の軽傷者が1人減ったと報告した。理由は不明。県のまとめと北日本新聞の取材に基づく県内の負傷者数は重傷3人、軽傷34人の計37人となった。

 県警によると、地震発生後に連絡が取れなくなっていた50~90代の男性4人は全員発見された。県警は3日、被害が大きかった氷見市で犯罪抑止活動などを行う「移動交番」の運用を始めた。

 富山地方気象台は4日まで大雨の恐れがあるとして、土砂災害や浸水、河川の増水に注意を促した。新田八朗知事は災害対策本部員会議で「引き続き支援に努めてほしい」と各部局や関係機関に呼びかけた。

「片付けどこから」 住民ら途方に暮れ

 元日に震度5強の揺れに襲われた氷見市や高岡市の被災地では3日、住民らが損壊した家屋の後片付けに追われた。正月三が日の最終日を返上して懸命に作業をしたが、あまりに大きな被害で復旧の見通しが立たず「どこから手を付けていいか分からない」と途方に暮れる人も。断続的な余震も復旧作業を阻んだ。

 氷見市栄町にある弥助鮮魚店の二塚千栄子さん(74)は、倒れた家具を起こしたり、店に散乱した容器を拾い集めたりした。店内のコンクリートの床が真っ二つに割けるなどし、被害は大きい。「精神的にも肉体的にもつらいが、できることからやっていくしかない」と語った。

 同市北大町の女性(86)は、近くに住む長男(63)と長女(59)と一緒に、粉々に割れた自宅の玄関扉のガラスを集めた。壁や床に複数の亀裂が生じ、台所に土砂が入り込んだという。長男は「(玄関が吹き抜け状態で)雨風が入ってくるのが気になるし、防犯面も心配。母が住めるように、作業を続けるしかない」とため息をついた。

 同市宇波の井山孝幸さん(72)は自宅の2階が倒壊し、1階部分にあった車2台が押しつぶされた。「部屋の仏壇だけでも出したいが、手が付けられない」と話した。

 3日も度々余震があり、住民らは作業の中断を余儀なくされた。家屋から道路に出て、不安そうに揺れが収まるのを待つ人もいた。

 高岡市伏木古国府の古書店「古本なるや」では、店主の堀田晶さん(49)が散らかった本を片付けた。約100冊が泥にまみれたり、傷付いたりして売り物にならなくなったというが「何とか営業を再開したい」と前を向いた。

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