「漆芸家として第一歩を踏んだ地が…」 輪島市で修業した沖縄の芸術家、能登地震の被災地を案じる

 能登半島北部に位置し、地震で甚大な被害を受けた輪島市は、漆器の輪島塗の産地として有名で沖縄との関わりも深い。輪島で修業し、沖縄県内で活躍する漆芸家たちは今、被災地を案じている。

 1989年から約15年、輪島で漆芸の修業や職人として活動した照喜名朝夫さん(65)=那覇市=は、輪島市河井町にある輪島塗の老舗ビル「五島屋」が崩壊したのをニュースで知り、ショックを受けた。五島屋は修業先。「漆芸家として第一歩を踏んだ地。なじみのあるビルが完全に崩壊してしまい本当に残念だ」と声を落とした。

 「輪島には親族のようにお世話になった人がたくさんいる。今は不安と悲しさでいっぱいだが、すぐに駆けつけることもできず、ただ無事を祈ることしかできない」と話した。

 観光名所として知られる「朝市通り」では地震によって大規模な火災が発生し、約200棟が燃えた。漆芸家として周辺に26年間住んでいた大見謝恒雄さん(70)=那覇市=は焼け落ちた町並みをニュースで見て「悔しさが込み上げる。現地の知り合いにも連絡が取れず、今は身を案じることしかできない」と落ち込んだ様子だった。

 石川県輪島漆芸美術館と友好提携を結んでいる浦添市美術館では、漆芸専門の美術館として学芸員が交流し技術を高め合ってきた。漆芸家の糸数政次館長(69)は「輪島漆芸美術館にはたくさんの素晴らしい作品が収蔵されている。作品も無事であってほしい。被災地を全力で支援していく」と語った。(社会部・垣花きらら)

(資料写真)2023年に浦添市美術館で展示された、漆芸家の大見謝恒雄さんの作品。輪島市に26年間住んでいた

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