可搬式冷房、全市町村が中学校に設置 県内で本年度に整備、一部は独自で小学校にも

 昨夏の猛暑を受け、県が可搬式冷房機器を導入する中学校に費用を補助する事業で、既にエアコンなどが整備されている長井市と大石田町を除く33市町村が県の補助を受けるなどして新年度に整備することが3日、全35市町村を対象とした山形新聞の聞き取りで分かった。補助対象外の小学校にも設けるとしたのは南陽、山辺、大江の3市町。暖房付きの機器もあり冬の災害時にも有用なことから県に対し、小学校への支援拡大を求める意見も出た。

 各地で議会12月定例会が終わり、35市町村の対応がまとまった。山形市は今年3月中旬までに全15校に6台ずつ配置する。鶴岡市も全11校に計35台を設置予定で、担当者は「猛暑が常態化する可能性がある。子どもたちが安全安心に部活動に取り組むために必要と判断した」と説明する。

 酒田市は「補助があったから決めた」ものの「実際に真夏の体育館でどれだけの効果が得られるかは分からない」とする。県の補助を使わずに小中学校に整備する山辺町も「効果は限定的で全館を涼しくするのは難しいだろう」と見る。大石田町は大石田中に既に4台あり、1台を追加する。

 小学校への対応は分かれている。長井市は全学校にエアコンがあり、舟形町では唯一の舟形小に大型装置が、大石田町では全小学校に可搬式装置が4台、大蔵村は大蔵小に1台が整備されている。

 戸沢村の戸沢学園は小中一貫型の義務教育学校で初等部と中等部が共用する。南陽市は大規模校に2台、小規模校に1台を入れる。大江町は「県の補助は出ないが、児童の安全を考慮し早期導入を決めた」。

 米沢市と中山町は導入を前向きに検討している。その他の自治体は県の補助の動向や、中学校での導入効果を見ながら判断する構えで「全36校を自前で整備するのは財政面で厳しい」(山形市)「助成がないと難しい」(遊佐町)との声が聞かれた。

 ◇可搬式冷房機器導入に対する県の補助事業

 夏場に部活動や体育の授業で体育館と柔剣道場を使用する機会が多い、高校・中学校などが対象。機器は1台約100万円を想定、中学校は「1校2台」を基本に、1校当たり100万円を上限に半額を補助する。県が県立学校に導入する機器は冷暖房双方の機能がある。

 県内の2023年の熱中症による緊急搬送者数は過去最多を更新。学校現場では7月、屋内の部活動を終えて自転車で帰宅途中だった生徒が倒れ、命を落とし、8月には山形市内の中学校で体育祭練習中の13人が運ばれたことなどを受け、決定した。

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