馬の視力と危機を察知する方法

馬の能力で一番高いといえば、聴覚に優れていることはご存知だと思います。その他の能力はどうなのでしょう。
今回は、馬の視力について、また馬の危機察知能力についてまとめました。

馬の視力は?

馬の視力は、多少の個体差はありますが大体0.6〜0.8程度と言われています。人であれば、車の運転や精密な作業をする場合に眼鏡をかけて視力を矯正するレベルです。
思ったよりも馬の視力は弱いと思われた方も多いのではないでしょうか?

草食動物である馬は、肉食動物の襲撃から身を守らなければならないので、遠くのものを見るための視力が良いと思われがちです。
実際には犬よりも視力は良く、人よりも弱いくらいだそうです。

どうやって危機を察するの?

馬の視力は人の0.6倍程度ですが、一体どのようにして危険を察知することができるのでしょうか?

実は、馬は視力以外のいくつかの能力によって危機を回避しているのです。ひとつずつ見ていきましょう。

視野

まず馬の顔で注目すべきことは、馬の目の位置です。
馬の目はほぼ真横についており、両目の間が離れています。そして顔の幅より少し飛び出ています。
実はこれには理由があるのです。
野生の馬は、主に広い草原で生活しています。隠れる場所の少ない草原では、いつ肉食動物に襲われるかわかりません。
目が横にあると広い視野を持つことができます。正面を見ながら、側面や後方など広い範囲を見渡すことができ、敵の存在に素早く気付くことができます。
具体的には、馬の視野の広さは350度ほどです。瞳孔が横長に開いていることで、ほぼ自分の周囲を見渡すことができるのです。

ただし、馬は真後ろを見ることができません。そのため馬の真後ろに立つことは非常に危険です。
馬は臆病なので視野の外に人が立つと、驚いたり恐怖を感じてしまい蹴ってくることもあります。

ちなみに私たち人間の視野はどのくらいか、ご存知でしょうか?
人の視野は200度程度です。
後ろを見る場合は、首を動かさなければなりませんね。

動体視力

視力はあまり良くない馬ですが、動体視力は優れています。馬の後方でほんのわずかに動くものを素早く察知し、敵に襲われる前に逃げることができます。また遠方で動く物体を捉えると危険を察知できるため、すぐに逃げることができます。

暗視能力

馬は昼行性の動物ですが、野生で生きていた頃の名残で夜でも物を見ることができます。
馬は猫と同じ目のしくみを持っていて、夜になると目が光って見えるのです。

光が瞳孔から入ると網膜に像を結び、網膜表面の視細胞を刺激します。その刺激は電気信号に変えられて視神経を通じて脳に送られます。
しかし夜は光が弱いので視細胞が受ける刺激も弱くなり、物が見えにくくなります。
ところが馬の目の網膜の後ろ側にはタペタム(輝板)という反射板のような装置が存在します。
タペタムは、網膜で吸収されずに透過した光を反射する役割があります。反射された光はもう一度視細胞を刺激します。
つまり、タペタムがあることで光の刺激を2回受けることができ、馬は暗い夜でも物を見ることができるのです。

聴力

馬の視力はあまり良くないので、目からの情報よりも耳からの情報で周囲の状況を把握しています。そのため、馬の近くでいきなり大きな音を出したり驚かせてはいけません。
また馬は、人には聞こえない超音波の音まで聞くことができるそうです。

左右それぞれの目で別のものを見れる!

さらに馬には人にはない能力があります。
単眼視という、左右それぞれの目で別のものを見ることができる特徴です。単眼視での視野の範囲は、およそ285度です。そのため草を食べているときでも周囲を警戒することができるのです。

ただし馬の目では、距離感を捉えることはかなり難しいです。両目で観ることのできる視野の範囲は65度しかないので、視野の約80%は片目で見ています。さらに、焦点を合わせる筋肉も発達していません。
そのため、馬が遠くを見るときは頭を下げて上目使いで見て、近くを見るときには頭を上げて焦点を合わせています。

一方、肉食動物は顔の正面に目があり、120度の視野を両目で見ることができます。
つまり肉食動物の方が両眼で見る範囲が広く、より正確に距離を捉えることができるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

馬の視力は人よりも少し弱いくらいですが、視力以外の多くの能力を持っていることがわかりました。草食動物として地球上に長くその種を維持するために、色々な能力を持つようになったのでしょう。

次回馬に乗る時には、是非馬の目を見て接してみて下さいね。

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