本紙記者、南極へ・夜通しの氷上輸送 建設資材や冷凍食材を昭和基地に

夜通し作業が続けられた氷上輸送=昨年12月29日午後10時42分(現地時間)、昭和基地沖

 【昭和基地=報道部・小田信博】昭和基地での設営や生活に必要となる物資をコンテナに詰め、南極観測船「しらせ」で運んだ後、接岸して同基地に搬入する氷上輸送が昨年末に行われた。第65次南極観測隊(橋田元隊長)と第64次越冬隊(樋口和生隊長)が協力し、夜通し作業を続けた。

 今回はブリザードの影響で日程がずれ込み、12月28~31日に実施した。そりを取り付けた雪上車で海氷上を移動するが、日中は氷が緩む恐れがあるため、気温が下がり氷が固くなる深夜から未明にかけて行う必要があった。

 雪上車4台が船と基地のコンテナヤードを往復しながら、建設資材や冷凍食材が入ったコンテナを50個以上運んだ。途中で氷の割れ目が見つかり、搬送ルートを変更する場面もあったが、作業は順調に進んだ。

 輸送担当の隊員らは連日、夜を徹して作業を行った。雪上車のドライバーは休憩を挟みながら何時間も運転を続け、荷受け担当は身を切るような風が吹く中、事故がないよう慎重にコンテナを移動させた。物資が届かなければ、基地の運営はままならなくなる。観測隊の活動を全力で支える隊員が白夜の太陽に照らされ、輝いて見えた。

「しらせ」で年越し、能登半島地震の情報が隊員にも伝わる

 第65次南極観測隊(橋田元隊長)は、年末年始を接岸中の観測船「しらせ」で過ごした。石川県能登半島で発生した地震の情報は隊員にも伝わり、被災地を案じつつ、一年のスタートを切った。

 夏期間に昭和基地入りした観測隊は原則、「しらせ」で年を越すのが慣例となっている。大みそかの夕食には年越しそばが出され、隊員はおみくじを引くなどして楽しんだ。

 地震発生の一報が入ったのは、元日の午前10時半(日本時間午後4時半)ごろだった。インターネットがかろうじてつながる公室では、スマートフォンで状況を確認しようとする隊員の姿が多く見られた。おせち料理は味わったが、新年祝賀会は中止となった。

 南極では入ってくる情報が限られ、現地に駆けつけることもできない。改めて、日本から遠く離れた場所にいることを実感した。隊員からは「未来の子どもたちのために、今できることを頑張ろう」といった声が上がっていた。

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