新幹線さえあれば…衝突事故で混乱する航空会社と、羽田空港で感じた“飛行機頼み”の脆さ

1月2日午後6時ごろ。
東京・羽田空港で発生した着陸直後の日本航空の旅客機と、海上保安庁の航空機の衝突事故。 最初にこのニュースに触れたのは北海道稚内市内だった。

新幹線で訪れた北海道

記者は、年末年始の休暇に合わせて、札幌市内の親戚を訪問していた。
鉄道が好きなので、愛媛県松山市から札幌市内まで、新幹線と特急列車を乗り継いで赴き、それに合わせて北海道内を旅行している最中だった。
夕方になり、ホテルでのチェックインを済ませた直後のことだ。

飛び込んできた衝撃のニュース

燃え上がる旅客機の中継映像。
衝撃的なニュースを伝えるテレビ画面に釘付けとなった。 ほどなくして、旅客機の乗員乗客全員が避難を済ませたとの続報が流れた。 しかし海上保安庁の航空機の乗員5人は亡くなった。
年始からの痛ましい大事故だ。

他人事ではなかった事故

だがそれは、決して他人事ではなかった。

「明日の羽田空港乗り継ぎは大丈夫だろうか…」

記者は3日、北海道から愛媛へ戻る予定を立てていた。
午後1時10分に稚内空港を飛び立ち、その2時間後に羽田空港へ到着する便に乗り、東京でおよそ4時間滞在したのち、午後7時35分に羽田を飛び立ち、午後9時10分、松山に到着する予定だった。
仕事始めとなる4日は、午前中から取材の予定が入っている。

ニュースによると、年末年始の多客期ということもあり、羽田空港は早期に再開される方針という。
搭乗予定の全日空のウェブサイトで、運航状況を何度も確認しながら眠りについた。

次々に発生する想定外

迎えた3日朝。
稚内から松山に向けて帰る日だ。
不安を覚えながら空港へ。
そしてロビーで待つことおよそ1時間。 雪の中、羽田からの飛行機が少し遅れながらも到着するのが見えた時には、ほっとしたが、それもつかの間だった。

食事券を握りしめて

「管制指示により出発時間は2時間以上遅れる」

保安検査場を通過して搭乗を待っていると、アナウンスが流れた。
羽田空港での事故から一夜、その影響はやはり避けられないのだろう。
東京から先の乗り継ぎについて、航空会社の係員と相談する乗客の姿も見られた。

ちなみにこの時、航空会社から、稚内空港で当日のみ利用できるという食事券が配られた。

なんとか離陸できたが…

飛行機は、予定の出発時間からおよそ2時間半遅れて稚内を離陸した。羽田には午後5時半ごろに到着するという。

それでも午後7時半発の松山便には十分に間に合う。東京での滞在時間に余裕を持たせていたのは幸いだった。

順調にフライトを続ける飛行機だったが、茨城の上空に差し掛かった時、旋回を始めた。

空の上でも待つことに

「事故の影響で羽田空港が混雑しているため、上空で待機する」

結局、羽田に着陸したのは午後6時時半ごろ。 松山便が離陸する1時間前のことだった。

人であふれた羽田空港

羽田空港は、年末年始の帰省ラッシュということもあり、ものすごい混雑だ。
電光表示板には、遅延や欠航の文字がずらりと並んでいる。 キャンセル待ちだろうか、保安検査場を過ぎたロビーにも人があふれかえっている。

遅延は無さそうだ

全日空のアプリを何度も何度も更新する。 遅延は無さそうだ。
かき込むように食事をして、搭乗口に向かい、飛行機に乗るための行列に並んだ。 なんとか帰れそうだ。

搭乗直前「不可抗力」そして…

しかし出発時刻の直前、突然「不可抗力」を理由に欠航が告げられた。

対応に当たる係員は、事故の影響によるものでは無いと話すが、それ以上の詳しい説明はない。

いずれにせよ、松山へ向かう最終便に乗れなくなったことには変わりない。
途方に暮れる暇もなく気を取り直し、翌朝一番の便に振り替える。

それでもまだ何とかなる…!

午前6時50分の便に乗れば、松山へは午前8時25分に到着できる。
仕事始めにはなんとか間に合いそうだ。
全く綱渡りだ。
しかし“試練”は終わらなかった。

預け入れていた手荷物は?

全日空に預けていた手荷物、その返却場所として指定されたのは、保安検査場を出た先、到着ロビーの通路だった。

通路の端に次々と並べられていく、おびただしい数のトランクケース。 どの欠航便の荷物が、どの場所に置かれているのか、アナウンスはない。
受け取りを待つ人たちが大勢集まり、身動きが取れなくなる。 気分が悪くなり倒れ込む人の姿もあった。

翌朝に備えて…

結局、記者が荷物を受け取れたのは午後9時過ぎ。
翌朝一番の飛行機に乗るため、空港近くのホテルへ向かった。 出費がかさむのは痛いがやむを得ない。

4日朝。 午前6時50分の松山便に乗るため、午前4時半に起床した。

早朝に迫られた決断

眠い目をこすり、全日空のアプリから搭乗予定便の確認をする。

すると、まさかの「欠航」の文字が。

振り替えたはずの便は、午前3時ごろに再び欠航が決まったのだという。
更に振り替えを試みるが、午前中の便は全て満席となっている。
午後の便なら空席はあるものの、また直前に「欠航」となる可能性も無くはない。

のぞみに望み掛ける

意を決して、新幹線で戻ることとした。
午前6時13分に品川駅を出発する博多行きの「のぞみ」に乗れば、岡山へは9時21分に到着できるようだ。

しかし問題はその先だ。

午前中の取材はできません

松山へ向かう特急列車「しおかぜ」は午前10時35分に岡山を発車、松山駅に着くのは、およそ2時間半後の午後1時15分となるのだ。
上司に、午前中の取材はできない旨を伝えた。

松山~新大阪が1時間半に?

四国新幹線整備促進期成会によると、新幹線ならば、松山から新大阪までを、およそ1時間半で結ぶという。リニア中央新幹線との乗り継ぎが条件になるが、東京も3時間圏内とのこと。

「これなら仕事に間に合ったな…」
記者の漏らしたひとり言は夢物語なのだろうか。

開通から35年が経過した鉄道道路併用橋・瀬戸大橋は、新幹線の運行も想定して建設された、本州と四国を結ぶ重要な結節点だ。

同じ年に開通した、本州と北海道を結ぶ青函トンネルもまた、新幹線の運行を想定して建設されたものだが、開通から28年の悲願を経て、新幹線は実際に北の大地を走り出した。(今回の北海道旅行でも、“地続き”となった函館に降り立つ感慨は深いものがあった)

新幹線にあって飛行機に無いもの

飛行機には「速達性」があるものの、気象条件などに影響を受けやすい上に利用できる乗客数は限られている。

一方の新幹線には、飛行機には無い「確実性」があると思う。
元日に発生した令和6年能登半島地震でも、新幹線を含む鉄道は、運航のできなくなった飛行機の“救済役”として、年末年始の人流を支えるべく活躍している。

好調な北陸新幹線

当初はその効果が疑問視されていた、東京と金沢を結ぶ北陸新幹線も、2015年に開通して以降、人流の増加に大いに貢献した。

運輸総合研究所によると、それまでは800万人程度で推移していた観光客数は、新幹線の開通で1000万人を超えるまでに増加した。さらに今年度末には、金沢から福井県敦賀市まで延伸される。

四国を走る日は来るのか

全国で唯一となった新幹線空白地の四国。

紆余曲折を経て、導入に賛否両論があることも承知しているが、四国新幹線、あれば無駄にはならず、重宝する人も少なくないのではーーと感じた。

© 株式会社あいテレビ