「食欲がない」ときは無理をしない。「心と体が休めるもの」を体に入れるコツ

悩みやストレスがきついときなど、自覚できる不調に「食欲がない」があります。

食べることを楽しむにもエネルギーが必要で、落ち込んでいるときほど何かを口に入れることすら億劫に感じますよね。

ですが、食べないと体は動かず、同時に心もしおれていく一方になります。

「食欲がない」ときはどう過ごすのがいいのか、無理のない食べ方についてお伝えします。

心の不調と確実にリンクする体の状態

恋人から別れ話を切り出されたり、仕事で致命的なミスをしたりと、心が大きなショックを受けると体も同時に緊張します。

体の緊張とは、呼吸が浅くなり肩に力が入り外からのダメージに耐えようと身構える状態です。

それが過ぎると今度は一気に脱力し、何をするにもやる気が起こらず普段できていることでも面倒くささを感じます。

心に不調が起こると体もそれに沿って確実に調子を崩し、そのなかでも多くの人が経験するのが「食欲の消失」ではないでしょうか。

お腹は減るが食べたいと思わない、好きな食べ物が今はそうでもない、キッチンに立つのが億劫になるのは、食事への関心を心が失っているからです。

極端になると「空腹すら感じない」という人もいますが、考えないといけないのは体を動かすエネルギーは食べ物からしか摂取できず、食べないでいる限りいつまでも体力は減り続けるという現実です。

食欲がないことを放置して食べないまま過ごす、無理やりでも適当なものを口に放り込んでそれで終わってしまうような過ごし方は、かえって心の回復を妨げます。

心と体が密接につながっている以上は、食べないことで余計に前を見る気力は育たず、落ち込みが続きます。

そんな流れを断ち切るために、食欲がないときほど体と心が休めるものを無理なく食べることを、意識したいですね。

「ストレスなく食べる」を意識する

食事は、単純な生命活動の点でも決してないがしろにしてはならず、「食べる」ことは活動のエネルギーを生む根源です。

それでも、落ち込みがひどいときはそれが重労働になり、つい放置してしまいます。

食べないでいる、目についたものをいい加減に口にするのは、いつまでも元気な自分から遠ざかることを、忘れてはいけません。

食欲がないときは、「ストレスなく食べる」ことを心がけましょう。

それでは、どんな食べ方がいいのでしょうか。

「手軽さ」が大事

今はコンビニエンスストアに走ればお弁当でもカップ麺でもすぐ手に入ります。

それすら面倒なときは、ネットスーパーなどを利用するのも手。

食欲がないときは、食事についてあれこれ考えることがそもそもストレスになるので、手軽さが大切です。

普段から食事に気をつけている人なら、つらいときでも「自炊しなければ」「栄養第一で考えなければ」といつもの自分で動こうとしますが、そんな無理がかえって心を追い詰めます。

いつもは手にしないプロテインバーや栄養素の詰まったゼリー状のパックなどは、手軽に栄養補給が叶う優れもの。

毎日それだと栄養の偏りが気になりますが、元気がなく食欲がないときはいわゆる「一時しのぎ」として利用するのも、悪いことではありません。

何も食べずにいる状態を防ぐのが目的なので、好みの味のものを口に入れてみて食べやすさを把握しておくと、次に何かあったときも助けてもらえますね。

「消化に良いもの」を選ぶ

元気がないときは、内蔵の動きも鈍くなります。

食欲がないけれど、「それでも何か食べなければ」と焦ってしまう人がいますが、体に入れるなら消化に良いものを選ぶのが体に負担をかけないコツです。

スープやお味噌汁などの汁物は、内臓のはたらきも優しくなるためおすすめ。

カップで売られているものも多く手軽に食べられるのがメリットで、たとえば具材の入ったお味噌汁に塩おにぎりを一つ足すだけでも、内蔵は刺激を得て動き始めます。

筆者ははるさめスープが好きで家にストックしていますが、汁物は内蔵に負担をかけずに体をあたためてくれるため、心がほっとします。

食欲が出ないときは、無理に固形物を取り込むのではなく消化の良さから食べやすいものを選ぶのも、エネルギーを蓄えやすくなります。

「水分」で血のめぐりを良くする

風邪をひいたときなど、明らかに体の不調で食欲がないときは、おじやや雑炊などが口に入れやすいですよね。

卵の入った雑炊などは水分が多く、タンパク質に炭水化物が摂れるだけでなく水分でお腹を膨らませてくれて、その後の寝付きを良くしてくれます。

水分は、内蔵が食べ物を消化する際に必要不可欠なもので、食物繊維を正しく機能させて排便を促し、体をすっきりとさせてくれるもの。

ストレスが強く飲み物などもろくに摂らずにいると、水分不足の体では血のめぐりも悪くなり余計に動くことがつらくなります。

血のめぐりが悪いことのデメリットは体の「冷え」で、特に指先などの末端は冷えると動きが悪くなることは、経験している人も多いのではないでしょうか。

先の項目に挙げたスープ類は、体を内側からあたためてくれるだけでなく水分もしっかりと摂れるのが良く、スムーズな血流を助けてくれます。

おかゆや雑炊なども同じで、食欲がないときは栄養と一緒に水分を摂ることを意識してみると、体は動く力を穏やかに取り戻していきます。

栄養のバランスにこだわりすぎない

食事の理想はやはりバランスよく栄養の考えられたメニューですが、落ち込んでいるときはそんなことより「ストレスなく食べる」のが肝心。

食事を抜く、いわゆる「欠食」が体にとっては大きなダメージとなるため、食欲がないときは無理に主菜や副菜を揃えるのではなく、「いかにラクに食べるか」をメインに考えましょう。

その状態がずっと続くのではなく、「今は元気になるためのご飯」と考えると、お昼に野菜サラダを抜いたってそれよりもちゃんと食べ物を口にすることのほうがよっぽど重要です。

朝食はプロテインバーと野菜ジュース、昼はコンビニでパスタだけ、夜はスーパーで買ってきたお惣菜だって、それが「いま食べられるもの」なら、少しでも楽しんで口にするほうが健全です。

栄養のバランスを考えた食事は、元気になってから再開できます。

食べることで内蔵は動き、エネルギーを作り出す一方でリラックスする睡眠を促し、体と脳を休める機会を与えてくれます。

そう考えれば、食欲がないときほど「無理のない食べ方」が自分のためだとわかりますね。

「とっておき」を食べる

たとえば、味や形が好きなケーキ屋さんのもの、独創的でここでしか買えない惣菜パンを売っているパン屋さんのものなど、「とっておき」がある人は食欲がないときこそ口に入れてみるのも、元気を与えてくれるきっかけです。

「とっておき」だからこそ気分のいいとき、テンションが高いときに楽しみたいと思う人が多いですが、好きなものは落ち込んでいるときにも心を安定させてくれる大切な存在。

実際に「しんどいときほどあそこのクッキーを買うの」と話す筆者の友人は、好きなそれを目にすることでストレスが減るといいます。

いつものように心ゆくまで味わうような余裕はなくても、特別に楽しんでいるものを食べることで、「ああやっぱり美味しい」と自分の感覚を取り戻すこともあります。

食そのものにあまり興味がなくてそんな「とっておき」が浮かばないという人もいますが、好きな食べ物、好んで食べるメニューをあえて落ち込んでいるときに食べてみると、普段の調子を思い出すきっかけになることも。

自分の好きなものは、食欲がないときでも意識を変える一つの手段です。

食事を大切にすることで心と体も休まる

誰だって落ち込むことはあり、食べる気が失せるほどエネルギーが枯渇してしまう状況は避けられません。

そのとき考えたいのは、食べることは活動の基本であり、心と体は確実につながっている真実です。

食欲のなさを放置すれば、それがそのまま心からも回復する力を奪うのだと、忘れてはいけません。

だからといって無理な食事はよりストレスを強くするため、食欲がないときほど「いま食べられるもの」を意識する、負担の少ない食べ方を考えることが、自分を救います。

繰り返しますが、「欠食」は消化するものが体内にないため内蔵ははたらく機会を失って体力を落とすダメージとなり、感染症などにかかりやすくなるリスクが高まります。

食事を大切にするのは自分のため、どんなときでも「食べること」が活動を維持します。

心と体を休める食べ方を普段から見つけておくのも、いざというときに悩むことなく動けますね。

エネルギーを切らさない自分でいることを、忘れずにいたいですね。

「何も口にしたくない」とき、心と同時に体も積極的に動く意思を失い、何をするにもつらくなります。

それを放置することがかえって自分の状態を悪くするのが現実で、前を向けないときでも「食べることだけは諦めない」と思うと、それが底力になります。

自分にとってストレスのない食べ方を知り、今だけと割り切って動くのも生きるため。

食事を考えることは「自分をおろそかにしないこと」だと考えたいですね。

(mimot.(ミモット)/ 弘田 香)

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