【アジア】【年始特集】23年下期「減収減益」が4割[経済] 前期から拡大、「増収増益」は2割未満

NNAがアジア太平洋地域に進出する日系企業に2023年下半期(7~12月)の業績見通しを聞いたところ、「減収減益」との回答が全体の40.7%で最も多かった。前回調査(23年上半期=1~6月)の38.4%から拡大し、業績不振の企業がじわりと増えている。「増収増益」予測は19.1%。幅広い業種で内外からの受注が減少しているとの声が聞かれ、世界的な経済成長の停滞が日系企業の業績にも影を落としていることがうかがえる。

NNAが23年12月5~11日に実施した調査(有効回答数737件)によると、アジア太平洋地域に進出する日系企業の23年下半期の業績見通しは「減収減益」が最多で、以下「増収増益」、「前年同期並み」(17.1%)、「増収減益」(7.9%)、「減収増益」(6.8%)などと続いた。

約半年前の23年6月下旬に実施した、同年上半期の業績見通しを聞いた調査と比較すると、「減収減益」は2.3ポイント拡大した。多くの国・地域、幅広い業種で「受注減」(ベトナム/繊維)、「受注が減少したため」(マレーシア/電機・電子・半導体)、「出荷する物がない」(中国/運搬・倉庫)と受注の減少を業績低迷の理由に挙げる企業が目立った。「増収増益」は前回調査から横ばい。好業績の理由としては「コロナによる移動制限の撤廃」(フィリピン/貿易・商社)のように新型コロナウイルスの流行収束による経済活動の正常化のほか、「22年は半導体不足の影響があったため」(インドネシア/四輪・二輪車・部品)と半導体供給の回復を挙げる企業も多かった。

■中国、韓国、マレーシアで苦戦目立つ

23年下半期の業績見通しを回答企業の国・地域別に見ると、中国と韓国、マレーシアで「減収減益」と予測する企業の比率が5割を超えた。

不動産企業の経営危機、不動産市況の低迷が新型コロナ禍からの景気回復に冷や水を浴びせた形となっている中国では、「減収減益」と予測した企業の比率が52.3%と韓国、マレーシアに次いで高く、一方で「増収増益」との回答は12.2%でマレーシア、韓国に続く低水準にとどまった。「減収減益」の理由では、「受注金額が少なく、売り上げにつながらない」(機械・機械部品)と受注減を挙げる声や、「22年下半期はある程度、景気がよかった」(四輪・二輪車・部品)と前年と比較して景気が冷え込んでいるとする指摘があった。ほか「日系自動車メーカーの販売苦戦のため出荷量が減少」(その他の製造業)と、中国市場で電気自動車(EV)シフトの波に乗り遅れ苦境に立たされる日系自動車メーカーの影響が及んでいるとする意見も少なからずあった。

23年第3四半期(7~9月)の国内総生産(GDP)成長率が前年同期比1.4%と、同期にマイナス成長となった日本を除けば東アジアでも最低水準の成長にとどまる韓国。同国で23年下半期の業績見通しを「減収減益」とした企業の比率は、今回の調査対象国・地域中で最高の52.9%に達した。「減収減益」を予測する理由としては、「電子業界を中心とした経済状況の悪化」(電機・電子・半導体)や「前年度に比べ大幅に需要が減少したため」(電機・電子・半導体)と世界的な電子産業の低迷が影響しているとする企業が目立った。

マレーシアは「減収減益」予測が52.6%で2番目に高く、「増収増益」は5.3%と唯一の1桁台にとどまっている。「減収減益」の理由では「22年はコロナ明け特需があったため」(四輪・二輪車・部品)、「需要の減少、中国による“デフレ輸出”のため」(その他の製造業)などがあった。

香港は中国への依存度が高い経済構造のためか、「増収増益」予測が調査対象国・地域で下から4番目の15.6%、「減収減益」は上から4番目の43.8%と、中国での調査と似通った結果となった。「減収減益」の理由は「中国で同製品の販売が始まり、香港での購入がなくなったため」(その他の製造業)、「22年が好調過ぎた」(運搬・倉庫)などが挙げられた。

ほかタイ、シンガポールは23年第3四半期のGDP成長率がそれぞれ1.5%、1.1%と低水準にあることを反映してか、「増収増益」と回答した企業はそれぞれ15.9%、15.6%と全体平均(19.1%)を下回った。ただ「減収減益」はタイで43.2%と高かったが、シンガポールでは28.1%と平均(40.7%)以下だった。「減収減益」の理由を見ると、「金利上昇による需要減」(タイ/四輪・二輪車・部品)、「前年は半導体不況の入り口、今期は底に落ち込み、現在横ばい」(シンガポール/電機・電子・半導体)などとなっている。

■インド、フィリピンは好調

今回の調査で23年下半期の業績見通しを「増収増益」と答えた企業の比率が2割以上となったのは、高い順にインド、フィリピン、台湾、インドネシア、ベトナム、ミャンマーだった。

世界最多の人口による内需を背景に、23年第3四半期のGDP成長率が7.6%とアジア主要国・地域の中でも群を抜いて高かったインド。「増収増益」と回答した企業の比率は46.3%と、調査対象国・地域で最も高かった。好業績の理由も「自動車・バイクの売れ行きが好調」(四輪・二輪車・部品)や「景気全体が堅調」(小売り・卸売り)、「大規模案件が増加している」(サービス)と内需に関連したものが目立った。

フィリピンも「増収増益」と回答した企業の比率が36.4%と高かった。理由を見ると、「建機関連や製油・給油関連製品の取り扱い増」(貿易・商社)、「自動車の売れ行きが好調なため」(四輪・二輪車・部品)と国内市場の好調を挙げる企業が多かった。

台湾とインドネシア、ベトナムで「増収増益」と回答した企業の比率はそれぞれ26.8%、23.4%、21.7%だった。理由としては「22年は半導体不足で商品が少ない状況だったが、23年は通常の量に戻ったため」(台湾/四輪・二輪車・部品)、「景気回復による需要増や、原料相場高騰が一服したことによる」(インドネシア/食品・飲料)、「販売拡大および原材料価格の下落」(ベトナム/食品・飲料)などがあった。

■好業績は食品・飲料、不振は運搬・倉庫

業績見通しを回答企業の業種別で見ると、「増収増益」と答えた比率が最も高かったのは「食品・飲料」で58.3%に達した。これに「サービス」(25.9%)、「小売り・卸売り」(25.0%)、「その他の製造業」(23.5%)、「その他の非製造業」(23.1%)が続いた。

「減収減益」は「運搬・倉庫」が55.8%で最高。次いで「電機・電子・半導体」(51.0%)、「その他の非製造業」(49.0%)、「貿易・商社」(48.9%)、「繊維」(45.5%)となっている。

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