リスクの選択、その時脳はどう動く 京都大学などグループ サルの神経回路で解析

京都大学

 失敗の確率が高くとも報酬が良い「ハイリスク・ハイリターン」に挑む場合と、成功確率を重視して少ない報酬の「ローリスク・ローリターン」を選ぶ場合のそれぞれの神経回路をサルの脳内で特定した、と京都大学などのグループが発表した。意思決定が偏るギャンブル依存症などの治療法開発につながる可能性があるという。1月5日、米科学誌サイエンスに掲載される。

 研究グループはニホンザルに報酬のジュースを得られる量と確率を変え、二者択一で選ばせた。頭部に埋め込んだ全長19ミリの電極から、サルが判断する瞬間に合わせてLED光を当てて脳の前頭前野の神経細胞を活性化させ、二つの神経回路の場所を突き止めた。

 ハイリスク型の神経回路は報酬を得た喜びを、ローリスク型は報酬を得られなかった失望感を、それぞれ増幅する役割を持つとみられるという。光の刺激によって、それぞれの回路が増強することも確認した。ハイリスク型が増強されると、ヒトのギャンブル依存症に似た状態になることも分かった。

 近年、コカイン依存症患者の前頭前野を磁気で刺激する米国の治療をはじめ、依存症治療に神経回路に直接介入する手法が模索されている。京大医学研究科の伊佐正教授は「意思決定のゆがみによる依存症の仕組みを脳のメカニズムから理解できれば治療に応用できるかもしれない」と話している。

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