「万博」の活かし方

2025大阪・関西万博は開催までいよいよ500日を切った。最近はテレビの情報番組やネットのニュースで取り上げられる機会が増えてきた。だが、肝心の中身はポジティブで残念な話題が多いように思う。

そもそも、1970年と同様にはならない

2025大坂・関西万博
シンボルマーク

万博は大型のイベントだ。イベントであるからには集客効果を問われるのは当然だが、今の状況で来園者数を約束するのは厳しいのではないだろうか。よく1970年の大阪万博が引き合いに出されるが、そもそも当時と今では世の中の状況が異なっている。

あの頃は既に高度経済成長の終盤に差し掛かっていた。けれど、人々は元気で世の中はまだまだ盛り上がっていた。日本中の期待感が漂う中、万博の会場には「まだ見ぬモノ」「知らないコト」が国内外から集められた。アポロ12号が持ち帰った「月の石」には4時間以上の長蛇の列ができた。それらに出会うために6,421万人が集まったのだ。

テレビのワイドショーで誰かが喋っていたが「月の石」に勝とうと思えば、大谷、山本込みのドジャーズに出場(出演)してもらうぐらいかも。

万博は、最大のチャンス!?

それでは「今度の万博」はイベントとして以外にどう活用するのだろうか。大阪での開催が決定したことを山陰インバウンド機構(当時)で聞いた私は、最大のチャンスがやってきたと考えた。

ただでさえ混雑している京都・大阪に、更に観光客が押し寄せると、関西のホテルはあふれてくるに違いない。地域の定員を超えるインバウンド客を山陰への誘致に活用しようと考えた。そして、今は中国運輸局と連携して「2025万博に訪れるインバウンドを中国地方に呼び込むための新たな観光モデルコースづくり」に取り組んでいる。

万博のメインテーマ「いのち輝く」に呼応する複数のジャンル別に中国5県の観光資源を抽出してツアーをリプランニングしていくプロジェクトだ。

埋もれた「地域資源」磨き上げのトライアル

ゴールデンルートの外側、山陰地方の魅力

今の取組みを通じて可能性と新しい課題も見えてきた。先ず、地方には魅力的な地域資源がまだまだ埋もれたままだということ。例えば、「宮島に劣らない景観美を誇る社寺」「中国山脈のすそ野で育まれてきた食文化」「山村の集落で守り継がれてきた伝統芸能」など。日本固有の魅力である自然、歴史、文化はインバウンドが頻繁に往来するゴールデンルートの外側にこそ残っている。

「今度の万博」は日本の魅力を再認識して国内外で共有するための「お祭り」と捉えて、新しい観光資源と新たな売り方にトライアルしてみるといいのではないだろうか。

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 福井善朗(ふくい・よしろう) 山陰インバウンド機構 前 代表理事

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