[社説]県内政治と県議選 将来の方向示す議論を

 今年、任期の折り返し点を迎える玉城デニー知事にとって、6月の県議選は、文字通り正念場となる。

 県議会の現有勢力は与党24議席に対し、野党・中立は23議席(採決に加わらない議長を除く)。

 県議選では13の選挙区で、48(定数)の議席を争う。

 翁長雄志前知事の死後に行われた2020年の前回県議選では、県政与党が辛うじて過半数を制した。

 だが、与党が現職4人を失い、議席数を一つ減らしたのに対し、野党・中立は改選前から3議席伸ばした。

 「オール沖縄」勢力は22年の参院選、知事選の全県選挙に勝利した。その一方、市長選では自公勢力が那覇市を含め7連勝した。

 「オール沖縄」は知事選で辺野古を争点化して3戦3勝し、自公は辺野古を争点としない地域密着型選挙で強みを発揮してきた。

 「オール沖縄」の退潮傾向は否定できないが、名護市辺野古の新基地建設や不平等な基地負担に対する県民の反発は根強い。

 過去の各種選挙に見られるジグザグの戦績は、こうした沖縄独特の政治事情が背景にある。

 県議選で与党が過半数を制すれば、知事の求心力は維持され、県政運営に弾みがつく。野党が過半数を占めることになれば、予算・人事などさまざまな面で行き詰まり、玉城知事の公約実現が困難になる。

 県議選の結果次第では、沖縄の政治が大きく転換する分岐点になるかもしれない。

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 辺野古新基地建設に向け、政府は今月中旬にも、大浦湾に広がる軟弱地盤の改良工事に着手する。

 県が承認していない工事を国が裁判所の決定に基づいて代執行し、海を埋め立てて基地を建設するというのは、全国的に見てもまったく例がない。

 なぜ、沖縄ではそれが許されるのか。

 南西諸島防衛に絡む要塞(ようさい)化の動きも県内各地で活発だ。民間の空港・港湾を整備し、平時から自衛隊や米軍が使えるようにする構想も浮上している。

 県議選の各選挙区はそれぞれ、暮らしに密着した独自の課題を抱えており、暮らし・子育て・経済などが重視されてきた。

 有権者の関心がそこに集中するのは当然である。

 代執行による基地建設や南西諸島の要塞化という沖縄の将来に関わる事態も浮かび上がっている。

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 県議選はこうした課題に正面から向き合い、沖縄の未来を指し示すものであってほしい。

 前回県議選の投票率は、コロナと悪天候の影響で50%を割った。若い有権者の政治離れは市町村議会議員選挙や県議選で顕著だ。

 政治の在り方が「古い」と感じられ、興味が湧かないという若い世代が多い。

 論戦を活発化すれば、おのずと有権者の関心が高まり、投票率も上がる。

 若い有権者の関心を高めるための取り組みが必要だ。

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