「タクシー拾えてラッキーでしたね」アフターコロナで悩む観光業の人手不足と“ノウハウ不足”

「タクシーを拾えてラッキーでしたね」

先日、鹿児島の駅でタクシーを拾った際に、運転手さんにかけられた言葉です。詳しく話を聞いてみると、運転手の高齢化やコロナのタイミングで離職者が増えたことなどが影響し、鹿児島で一番大きい駅の周辺でさえタクシーがいないそうです。

アフターコロナの今、インバウンドの増加も相まって観光業が回復に向かう一方で、タクシー業界は人手不足が深刻化していることを肌で感じました。

観光業における人手不足は連日ニュースでも話題となっていますが、ノウハウ不足は課題が顕在化されにくい領域です。私はインバウンド需要への対応やマーケティング戦略の領域など、ノウハウが足りていない企業も多くあると感じています。今回の記事では、観光業における人手不足と“ノウハウ不足”について考察します。

アフターコロナで悩む観光業の人手不足

前述したように、タクシー運転手の人手不足は深刻な課題となっています。業界団体の調査によると、全国のタクシー会社で働く運転手の数は2023年3月末の時点で23万1938人となっています。コロナ前の2019年3月末と比較すると5万9578人減、率にすると20.4%減少しているとのことです。

運転手不足を補おうと、新しい取り組みがスタートしています。2023年11月、電脳交通が空いた時間に副業でタクシー乗務員として働ける実証実験「スポドラ」を、三和交通と連携して始めることが発表されました。これにより週1日、1日4時間からという短時間の条件で副業として働けるようになるそうです。

タクシー運転手だけではなく、人気観光地がアフターコロナの苦境下を人手不足で悩んでいるというニュースが後を絶ちません。コロナ禍での人員調整が影響し、部屋は空いているが人手不足の影響で稼働ができないという施設が多くみられます。

京都市観光協会が2023年8月に公表した「観光業界における人手不足についての臨時調査」によると、回答事業者の7割が人手不足を感じており、とくに「接客」職の人手不足が顕著という結果となりました。

人手だけではない!ノウハウ不足も課題

人手が足りないだけではありません。インバウンド対策のためのマーケティング戦略を考えたり、観光戦略を練ったりする“ノウハウ”も不足しています。私が代表取締役を務める㈱Another worksが運営する複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」でも、観光業におけるノウハウを求める様々な求人が出されています。その一部を紹介します。

①インバウンド to Cマーケティング

中国人向けのマーケティング支援に精通した複業人材を募集しています。時給は1000円~3500円で、具体的な業務内容はWeChatのアカウント運用になります。

②ライター

ホテルや飲食店でのインバウンドサポート業務でも複業人材を募集しています。外国人接客のためのマニュアル作成や、多言語対応コンテンツの企画や作成などが具体的な業務になるため、基本的な業務はリモートワークが可能です。

③店舗運営のコンサルティング

食堂の店舗運営やオペレーション改善に関するアドバイスがほしいという内容でも複業人材を募集しています。具体的な業務内容は、インバウンド用のメニュー作成、店内レイアウトの変更や導線の見直し、作業オペレーションの改善などのアドバイスが中心になります。

今回ご紹介したのはあくまで一部の事例となりますが、他にも経営企画、DX戦略などさまざまな職種で複業人材が求められています。観光業では現在人手不足が深刻な課題となっていますが、潜在化している“ノウハウ不足”も急務の課題ではないでしょうか。

寄稿者 大林尚朝(おおばやし・なおとも) ㈱Another works代表取締役

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