工夫次第で百万円単位の差がつく! 定年後の退職金の手取りを増やすテクニック

退職金の金額は減少傾向にあります。大学卒の場合、1997 年には平均で2,871万円あった退職金が、25年後の2022年には1,896万円と、約1,000 万円も減っています。高校卒の場合でも同様に、退職金が減っていることがわかります。

一方、公務員は法律で退職金の支払いが規定されています。とはいえ、こちらも金額は不安定です。たとえば、国家公務員の場合、2015年度には約2,181万円あった退職金が、2018年度まで約4年かけて、約2,068 万円に減少しています。その後多少持ち直しましたが、2021年度はまた減少。今後も、民間同様に減少する可能性があります。

今回は、少しでも得をするためにも、是非とも活用したい定年後の退職金の手取りを増やすテクニックをお伝えします


工夫するかしないかで、退職金の手取りに百万円単位の差がつく

そもそも、企業は法律上、退職金を支払う義務はありません。「退職金額の推移」によると、退職金制度のある企業は80.5%となっています。

従業員1,000人以上の企業であれば92.3%が実施している一方、30〜99人までの企業では77.6%と減っています。老後資金に活用しようとあてにしている退職金が実はなかった、ということもないとはいえませんので、まずは会社に退職金制度があるのかを確認しておきましょう。また、総務や経理などの担当者に、退職金がおおよそいくらになるか、聞いておきましょう。

退職金自体は増やせなくても、退職金の手取りを増やす方法はあります。退職金にも所得税や住民税といった税金がかかりますが、受け取り方を考えて、退職所得控除や公的年金等控除といった控除をうまく活用すると、退職金の手取りを多くすることができます。

また、再就職・再雇用時の契約で給与の一部を退職時の退職金に回して後払いしてもらったり、退職するタイミングを1日ずらしたりするだけでも税額が減り、手取りを増やせます。

このように工夫するかしないかで、退職金の手取りに百万円単位の差がつくこともありえるのです。

退職金の税金はどのように計算するの?

毎月の給与と同じように、退職金にも所得税と住民税がかかります。退職金にかかる所得税・住民税は、退職金の受け取り方によって金額が変わってきます。退職金の受け取り方には、大きく分けて「一時金」「年金」「一時金&年金」の3 種類があります。

退職金を一時金として一括で受け取るときには「退職所得」という所得になります。退職所得は分離課税といって、他の所得とは区別して課税されます。退職所得に所定の税率をかけ、控除額を差し引くことで、所得税や住民税の金額を算出します。なお、一時金の場合は社会保険料の負担がありません。

著書「1日1分読むだけで身につく老後のお金大全100」(自由国民社)より

退職金を年金で受け取る場合は「雑所得」という所得になります。雑所得は、他の所得と合わせての総合課税。雑所得に所定の税率をかけ、控除額を差し引くことで、所得税や住民税の金額を算出します。また、年金で受け取る場合は社会保険料もかかります。

著書「1日1分読むだけで身につく老後のお金大全100」(自由国民社)より

退職金を一時金&年金で受け取る場合は、一時金の部分は退職所得、年金の部分は雑所得として税金を計算します。

退職日が1日違うだけで損をすることがある

退職金を一時金で受け取るときに利用できる退職所得控除の金額は、勤続年数によって変わります。この勤続年数は「年未満の端数」を切り上げて計算します。

たとえば、22 歳から60 歳まで、38 年間にわたって1つの会社に勤めてきた方の場合、退職所得控除は800万円+70万円×(38年−20年)=2060万円となります。

しかし、退職日を1日のばして「38年と1日」で退職すれば、勤続年数は「39 年」とカウントされます。そのため、退職所得控除は800万円+70万円×(39年−20年)=2130万円となります。

著書「1日1分読むだけで身につく老後のお金大全100」(自由国民社)より

勤続年数20 年超の退職所得控除の金額は、退職日の1日の違いで70万円も変わるのです。20 年以下で退職した人の場合も同様の考え方で、1日の違いで40 万円変わる可能性があります。

退職所得控除の金額が退職金よりも多ければ、退職金に税金はかかりません。退職金に税金がかかりそうという人は、会社に退職日をずらせないか相談してみるといいでしょう。

退職金のお得なもらい方とは?一時金? 年金?

退職金を「一時金」「年金」「一時金&年金」で受け取った場合の手取りはどう違うでしょうか。「2,000 万円を一時金で受け取った場合」「2,000万円を年金で受け取った場合」「1,000万円を一時金、1,000万円を年金で受け取った場合」の3パターンのシミュレーション結果が下の表です。

著書「1日1分読むだけで身につく老後のお金大全100」(自由国民社)より

収入の合計が「額面合計」、そこから税金・社会保険料を差し引いた金額が「手取り合計」です。額面合計が最も多いのは年金受取ですが、手取り合計が最も多いのは一時金受取です。退職所得控除の税優遇が大きいため、手取りを増やしたいならば一時金がいい、というわけです。

退職金の額が退職所得控除より多い場合は、退職所得控除の金額までは一時金で受け取り、残りは年金で受け取る「一時金& 年金」を利用すれば、退職所得控除も公的年金等控除も活用しながら税金を減らせます。

一方、「一度に大金を手にすると無駄遣いしてしまいそう」ならば年金受け取りも一案。一定額ずつ振り込まれるので無駄遣いもしにくくなりますし、会社の運用によって額面の総額も増やすことができます。

再雇用・再就職した際の給与の一部を退職金に回すと節税できる

再就職・再雇用されたときに給与の一部を退職時の退職金に回して後払いしてもらうと、税金や社会保険料を節約できます。

60歳から65歳までの5年間、月給30万円(年収360万円)で働いた場合と、月給25 万円(年収300 万円)で働き、毎月5 万円を退職金に回した場合を比較すると、5 年間の税金・社会保険料の合計は約56 万円も少なくなる(その分手取りが増える)計算です。

著書「1日1分読むだけで身につく老後のお金大全100」(自由国民社)より

退職金にかかる退職所得控除は、前回利用した時点から5 年空けることで、前回利用時点以降の勤続年数に応じた退職所得控除が活用できます。つまり、この例では、60歳時点で活用した退職所得控除とは別に、再就職・再雇用の勤続年数に基づく退職所得控除が活用できます。ただし、勤続年数が5年以下の場合、「退職所得」が300万円超のときは「2
分の1 課税」が適用できないので注意しましょう。

なお、給与の一部を退職金に回すことで、納めるべき社会保険料が減るため、給与を退職金に回さない場合と比べて、もらえる老齢厚生年金が若干減ることには注意しましょう。

『1日1分読むだけで身につく老後のお金大全100

著者:頼藤太希・高山一恵
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