宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#01
2024年1月1-7日
【まとめ】
・2024年は「重要な選挙の年」。最大関心事は11月5日の米大統領選挙。
・2024年は、為政者が判断ミスをする前に有権者が判断ミスを犯す可能性も。
・日本にとって最も重要と考えるのは4月の韓国総選挙。
謹賀新年、今年も宜しくお願い申し上げる。2年前の本コラムで筆者は「年頭から少しまじめに考えた。過去一年間、もしくはそれ以上の期間にわたり、もしかしたら筆者は『放電』ばかりしていたのではないか、しっかり『充電』ができていなかったのではないか、という反省である」と書いた。あれから2年、その思いは一層強まっている。
要するに、「充電」なければ「原稿」なし、ということだ。今年は原稿の数が更に減るかもしれないが、このカレンダーだけは別である。これまで毎週お付き合い下さった読者の皆様方には改めて御礼申し上げたい。本年もこの外交安保カレンダーは週一回のペースで書き続けるつもりなので、何卒宜しくお願い申し上げる。
さて、元旦から内外の国際情勢評論の多くは2024年を「重要な選挙の年」と見ているようだ。発想自体は目新しくない。彼らの最大関心事は11月5日の米大統領選挙だろう。それ以外にも、民主的か否かは別として、世界の数十カ国で選挙が行われる。全ては網羅できないが、ここでは内外で報じられる「注目選挙」を挙げておこう。
1月07日 バングラデシュ総選挙?
1月13日 台湾総統・立法院選挙
2月04日 エルサルバドル大統領選挙
2月08日 パキスタン総選挙?
2月14日 インドネシア大統領選挙
2月25日 セネガル大統領選挙
3月01日 イラン議会選挙
3月05日 米大統領予備選挙・党員集会のスーパーチューズデー
3月15~17日 ロシア大統領選挙
4~5月 インド総選挙?
4月10日 韓国総選挙
4月28日 日本の衆参統一補選
5~8月 南アフリカ総選挙?
5月02日 英総選挙?
6月02日 メキシコ大統領選挙
6月6~9日 欧州議会選挙
7月15日 米共和党全国大会
8月19日 米民主党全国大会(シカゴ)
10月27日 ウルグアイ大統領選挙・議会選挙
11月05日 米大統領・連邦議会選挙
これ以外にも、チュニジアとベネズエラで年内に大統領選挙が予定されているし、日本だって自民総裁選や総選挙がいつ行われても不思議ではない。今回は個々の選挙につきコメントはしない。おめでたい筈の新年早々なのに大地震や大事故など悲しいニュースが続き心は痛む。犠牲者の方々には心から哀悼の意を表したい。
さて、昨年末筆者は「2024年は再び『為政者による判断ミス』の年になる」と書いたが、これだけ選挙が続くと、為政者が判断ミスをする前に、有権者が判断ミスを犯す可能性も考える必要がある。その典型例は米大統領選挙だろうが、残念ながら、国民は民度以上の指導者を選べない。これが民主主義の本質ではないだろうか。
昨年最後の原稿ではこう書いた。「トランプが勝てば(勝っても驚かない)米内政は大混乱となり、外交面では判断ミスが再開されるだろう。最悪の場合、ウクライナは見捨てられ、パレスチナはイスラエルの思い通りとなる。ロシアとイランという地域現状変更勢力が中国への依存を深め、米中関係は対立を続けるだろう。その時までに日本が内政上の混乱を収束できなければ・・・。」今もこの思いは全く変わらない。
最後に、今年の選挙について簡単に触れたい。筆者が日本にとって最も重要と考えるのは4月の韓国総選挙だ。韓国の有権者が朝鮮半島を取り巻く国際情勢を如何に見ているか、現在の保守政権に如何なる評価を下すのか、は日韓関係の将来にとって極めて重要だからだ。米韓とも「有権者の判断ミス」がないことを祈ろう。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真: 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領、ジョー・バイデン米国大統領、日本の岸田文雄首相が共同会見に臨む(2023年8月18日 米国・メリーランド州キャンプデービッド)出典:Chip Somodevilla/Getty Images