次世代半導体、青森県内で量産へ 富士電機津軽セミコンダクタ(五所川原市)、EV需要に対応

3月から次世代パワー半導体の量産体制に入る富士電機津軽セミコンダクタ=五所川原市
炭化ケイ素を使った次世代パワー半導体のウエハー。この基板にさまざまな処理を行って回路を形成する(富士電機津軽セミコンダクタ提供)

 青森県五所川原市の富士電機津軽セミコンダクタ(桃井透社長)は3月、電気自動車(EV)などの電力制御に使われる次世代パワー半導体の量産体制に入る。EV普及に伴う世界的な需要拡大に対応する。夏には半導体チップの出荷を始め、2025年以降も生産能力を増強する計画だ。

 次世代パワー半導体はウエハー(基板)の素材に炭化ケイ素(SiC)を使う。シリコンを使う従来のパワー半導体に比べ、高い電圧に耐えることができ、電力の損失も抑えられる。電力効率が良いため、EVにおいては航続距離の延伸や搭載電池の小型化につながるとされる。

 親会社である重電大手の富士電機(東京)は22年、SiCパワー半導体の増産に向け、富士電機津軽セミコンダクタに設備投資することを発表。これに伴い同社は、製造に必要な「クリーンルーム」の拡張や、SiC専用の生産設備の設置、試作品の品質確認などを行ってきた。同社は富士電機グループ内のSiCパワー半導体の主要生産拠点となる。

 桃井社長は「製品の品質確認を行っているが、今のところ問題はない。24年3月から量産体制に入る。夏には出荷を始められる」と説明。25年以降に生産能力を増強し、さらに出荷数を増やしていく計画であることも明らかにした。直径6インチのウエハーを用いて半導体チップを生産、主に国内自動車メーカーに出荷する。

 SiCパワー半導体の量産開始以降も、現在の主力であるシリコン製パワー半導体ウエハーの生産は並行して行う。

 パワー半導体の需要増を背景に、富士電機津軽セミコンダクタの23年度上期の売上高は対前年同期比で150%となり、過去最高を記録した。具体的な金額は明らかにしていないが、桃井社長は「(SiCパワー半導体の)量産開始でさらに売り上げを伸ばせると考えている」と語る。

 富士電機によると、SiCパワー半導体を複数組み合わせた部品である「SiCモジュール」の世界市場規模は、22年度の1千億円余から、26年度には5千億円余まで急拡大する見通しで、その大半がEV用だという。同パワー半導体の需要増を見据え、日本国内では大手半導体メーカーによる生産拠点新設や増強の動きが相次いでいる。

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富士電機津軽セミコンダクタ 1973年に入間電子工業所五所川原工場として創業。日立入間電子五所川原工場、ルネサス北日本セミコンダクタ津軽工場などへの変更を経て、2012年に富士電機の傘下となり、現名称になった。五所川原市の「青森テクノポリスハイテク工業団地漆川」内にあり、パワー半導体ウエハーを製造する。従業員は416人(23年4月1日現在)。

パワー半導体 電流の直流と交流の変換や、電圧の調整などに使う半導体。モーターの回転を高精度に制御したり、太陽電池で発電した電気を送ったりする際に欠かせない。電気自動車(EV)や電車、家電製品に幅広く使われる。主な材料はシリコンだったが、電子機器の小型化や高効率化につながるとして、炭化ケイ素や窒化ガリウムの活用が広がっている。

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