総社市にある総社駅の目の前に、小さな子から大人の鉄道ファンまで楽しめる鉄道ギャラリーがあります。
それが「総社クロスポイント(CROSS POINT)」。
館内には希少な鉄道グッズがたくさん展示されているほか、プラレールや鉄道模型もあり、実際に列車を走行させられます。
そんな鉄道好きにはたまらないギャラリーを運営しているのは「合同会社 縁社屋(えんじゃや)」。
総社のまちづくりに関する事業を展開する企業です。
クロスポイントのほか、総社駅構内にレンタルスペースの運営をしたりしています。
また雪舟生誕地公園でのマルシェイベントなど、さまざまなイベントも企画・開催。
総社のまちづくりに力を入れる縁社屋と、運営する総社クロスポイントなどについて深掘りしていきましょう。
2023年(令和5年)12月時点の情報。価格は消費税込
縁社屋は2020年設立の総社市にあるまちづくり会社
縁社屋は、総社市にあるまちづくり会社です。
2020年(令和2年)に、総社市在住の有志が集まり設立されました。
ハード面からソフト面まで、さまざまな側面から総社市のまちづくりにかかわる事業を展開しています。
ハード事業では、総社駅前にある鉄道ギャラリー「総社クロスポイント」や総社駅構内のレンタルスペース「ステーションラウンジ・ADORIBA(アドリバ)」が代表的なものです。
そのほかにソフト事業として、各種イベントの企画・開催もしています。
総社クロスポイント
総社クロスポイント(CROSS POINT)は、縁社屋が運営する鉄道ギャラリーです。
場所は、総社駅のすぐ目の前(東側)。
総社駅の東口を出るとすぐ正面に見える建物の2階にあります。
なお1階に、喫茶「心温(このん)」や鍼灸「いつつのき」、ピザ店「VERY’S(ベリーズ)」などがあるのが目印です。
建物の北側に、2階へ上がる階段があります。
階段の壁などには、歴史のありそうな貴重な鉄道写真や駅名板がたくさん掲示されているので、必見です。
クロスポイントの館内には、以下のようなスペースがあります。
- プラレール
- 鉄道模型
- 鉄道関連グッズの展示
- 鉄道関連グッズ、クロスポイントオリジナルグッズの販売
順に紹介しましょう。
プラレール・コーナー
プラレール・コーナーでは、実際にプラレールの列車を走らせて遊べます。
レールの規模が大きく、列車の種類・数も旅客列車・貨物列車から新幹線までとても豊富です。
小さな子は大興奮し、時間を忘れて熱中してしまいそうですね。
実際に子連れで訪れたかたに、大変好評だそうです。
なおプラレールで遊ぶのは無料で、予約の必要もありません。
鉄道模型コーナー
鉄道模型(ジオラマ)コーナーは、「模型鉄」と呼ばれる鉄道マニアにはたまらないコーナー。
「Nゲージ」と「HOゲージ」の2種類の鉄道模型を展示しています。
駅舎のようすや線路沿いの風景もリアルで、見るだけでも楽しいです。
壁際のショーケースには貴重な鉄道模型も展示されているので、見てみてください。
鉄道模型コーナーでは実際に列車の走行体験が可能で、利用時間は1時間。
自前の列車を持ち込んでの走行もできます。
料金は800円(いずれも消費税込)。
また団体での貸切も可能ですが、その場合は前日までに予約してください。
鉄道グッズ展示コーナー
鉄道グッズ展示コーナーは、室内の半分ほどを占めるコーナーです。
さまざまな希少なグッズが展示されており、鉄道ファンにはたまらないでしょう。
展示グッズの一部を紹介すると、以下のようなものがあります。
- 鉄道模型
- 制服
- 切符
- 業務書類
- 業務用品
- 鉄道雑誌
雑紙「鉄道ファン」は、非常にたくさん展示されています。
しかも、創刊号や初期の号という非常に希少なものまで。
また、実際の鉄道会社で使用されていた制服や業務関連品も展示されています。
私は元・鉄道員なのですが、業務で使っていた合図灯やカンテラ・タブレット・時計などの道具、運転報や時刻表・ダイヤグラム・鉄道規定などの書類があるのを発見。
非常に懐かしい気持ちになるとともに、多忙な時代を思い出しました。
鉄道グッズ・オリジナルグッズ販売コーナー
クロスポイントでは、一部の鉄道グッズや、クロスポイントのオリジナルグッズを販売しています。
販売されている鉄道グッズは、実際の鉄道会社の制服や、記念切符、記念ステッカーなどです。
なおクロスポイントの公式サイトでは通信販売もしています。
レンタルスペース「ステーションラウンジ・ADORIBA(アドリバ)」
ステーションラウンジ・ADORIBA(アドリバ)は、総社駅にある井原鉄道の駅長室を利用したレンタルスペースです。
使用されていなかった駅長室を有効活用し、レンタルスペースとして改装して2022年9月にオープンしました。
駅長室の広さは約13平方あり、業務用冷蔵庫と流し台も設置されています。
また電源やWi-Fiも完備。
利用例としては、弁当販売などのポップアップショップのほか、ミーティングやパソコン作業、少人数の習いごと・レッスンなどがあります。
今後は喫茶営業の許可をとり、コーヒースタンド等もできるようになる予定です。
イベント企画
縁社屋では、クロスポイントやADORIBAなどのハード事業だけではなく、イベントの企画・開催といったソフト事業もおこなっています。
縁社屋が企画したイベントで代表的なものが、総社市赤浜にある雪舟生誕地公園でのイベントです。
公園でのマルシェやコンサート、たこあげ大会、夜ピクニックなど、楽しいイベントを開催しています。
このほか、古墳が多いという総社の地域性を生かした古墳巡りツアーなども開催しました。
さまざまな形で総社市のまちづくりに尽力する、合同会社 縁社屋。
業務執行役員の後藤大夢(ごとう ひろむ)さんへインタビューをしました。
業務執行役員の後藤 大夢さんへインタビュー
さまざまな形で総社市のまちづくりに尽力する、合同会社 縁社屋(えんじゃや)。
業務執行役員の後藤大夢(ごとう ひろむ)さんへインタビューをしました。
「小さな縁で、大きなまちづくり」を合言葉に起業
──縁社屋を起業した経緯を知りたい。
後藤(敬称略)──
縁社屋の設立は、2020年です。
地方創生の仕事をしている私や、観光にかかわる仕事をしている「心温」の佐野、空き家事業をやっていた安達、農泊事業をやっている前田の4人で起ち上げました。
基本的にみんな兼業です。
縁社屋は、遊休不動産の活用やイベント企画など、ハード面・ソフト面の両面でまちづくりにかかわる事業をしています。
活動コンセプトは「小さな縁で、大きなまちづくり」。
「こんな場所があるけど、なにかできないか」「こんなことをやりたい」といったような地域の小さな部分から、あまりお金をかけずに始め、それをたくさん増やすことで大きなまちづくりをしていこうと考えています。
設立時、総社駅前のビルの2階部分がずっと空き物件になっていました。
総社の駅前は昔に比べると店も減り、活気がなくなっています。
ですから、この駅前の2階部分を活用し、総社駅前に活気を取り戻すきっかけにしようというのを最初のテーマにしました。
人が集まり、対流していくという人の流れを生みだすことが目的です。
こうして生まれたのが、鉄道ギャラリーの総社クロスポイントでした。
総社駅前の活性化と鉄道写真家との縁がクロスポイントの生まれたきっかけ
──なぜ駅前にクロスポイントができたのか?
後藤──
岡山市出身で、著名な鉄道写真家の藤山侃司(ふじやま かんじ)さんというかたがおられました。
鉄道グッズもたくさん収集していたのですが、藤山さんは他界されてしまいます。
その後、ご遺族から弊社の安達へ鉄道グッズをどうしようか悩んでいると相談がありました。
縁社屋の代表をつとめる安達は、アンティークショップの運営もしていたためです。
そこで藤山さんの鉄道遺品を活用し、総社駅前のビル2階の空き物件を、鉄道をテーマにした場所にしようというアイデアが生まれました。
調べてみると、岡山エリアは現役で走る国鉄時代の車両が他エリアより多い「国鉄車両の聖地」のような場所だとわかりました。
駅前という立地、国鉄の聖地・岡山、そして藤山さんのすばらしい多数の鉄道遺品がある。
まさに、鉄道をテーマにした場所にふさわしいですよね。
また鉄道は小さなお子様は大好きですし、大人でも鉄道ファンのかたは多いです。
ですから、世代を超えた交流があると思います。
さらに地域外からのお客様も訪問されるだろうと予測し、地域の内と外の交流も図れると考えました。
こうして2020年7月、鉄道をテーマとした交流施設として総社クロスポイントが生まれたのです。
ハード面からソフト面まで総社のまちづくり事業に携わる
──その他の活動についても知りたい。
後藤──
縁社屋ではハード面だけでなく、ソフト面でもまちづくり事業をおこなっています。
たとえばイベントの企画・運営です。
代表的なものが古墳の多い総社の特徴を生かした「ぐるぐる古墳部」「古墳ミステリーツアー」。
ほかには、雪舟生誕地公園で不定期に開催しているマルシェや夜ピクニックといったイベントなどです。
またハード面では、2022年9月に総社駅構内にオープンしたレンタルスペース「ADORIBA(アドリバ)」があります。
総社駅の井原鉄道の駅長室は、ずっと空いていました。
コロナ禍まではJR西日本さんが借りて使っていたのですが、コロナ禍を機に利用をやめ、ふたたび空いた状態になったんです。
そんなときに縁社屋のほうへ、井原鉄道の駅長室の良い活用法はないかと相談を受けました。
もともと縁社屋は、遊休不動産の活用などのまちづくりが本来の仕事。
そこで、駅長室をレンタルスペースとして使うアイデアを思いつきました。
総社駅構内という場所で、さまざまな用途で使ってもらうことで、駅前ににぎわいを生むきっかけになるのではないかと考えたのです。
また駅長室を再活用するにあたり、岡山県立大学の学生さんとコラボレーションし、木のベンチなどのデザインをお願いしました。
いままでの総社駅にはなかった、いままでと少し異なるような雰囲気を出したかったためです。
なおADORIBAは物販のほか、Wi-Fiや電源もありますので小会議やセミナー、勉強会、打合などにも利用できます。
ちなみに2023年12月現在は改装中。
前は調理はできませんでしたが、今後は喫茶営業の許可をとり、コーヒースタンド等もできるようしたいですね。
総社はなにかをやろうとしたら、自然と人が集まって連携が生まれる土地
──今後の課題ややってみたいことを教えてほしい。
後藤──
運営面で課題なのは、やはり資金面ですね。
クロスポイント設立時は、クラウドファンディングで資金調達しています。
おかげさまで、予定の倍以上の資金が集まりました。
また総社市は「市民提案型事業」というのをやっていまして、そこに応募することもしています。
提案が採択されると補助が受けられるためです。
このように、いかに資金をうまく節約するかは常に考えていますね。
あとは、人手の問題もあります。
ただ総社って、けっこうおもしろい人たちが多いんです。
だからなにかをやろうとしたら、自然と人が集まって連携が生まれたりします。
これはとてもありがたいです。
あとは岡山県立大学の学生さんに、イベントのお手伝いをしていただいたりしますね。
また別の問題として、さきほどのとおり縁社屋のメンバーはみんな本業をもっているので、やりたいことは多くても時間が足りないという悩みがあります。
なので時間と人手、資金をうまく活用し、やりたいことをどんどんやっていける体制をつくっていきたいですね。
鉄道車両の聖地にある鉄道ギャラリー・総社クロスポイントと、総社のまちづくり会社 縁社屋
国鉄車両の聖地と呼ばれる岡山の総社駅前にある、総社クロスポイント。
小さな子から大人まで、少しでも鉄道に興味があれば楽しめる場所です。
ぜひ足を運んでみてください。
また、総社のまちづくりに尽力する縁社屋が開催するさまざまなイベントも楽しいものばかり。
縁社屋のイベントに訪れてみてはいかがでしょう。