災害の映像を見て気分が落ち込んだら 向き合い方を専門家に聞いた

比嘉紀枝さん(本人提供)

 2024年は年明けから、能登半島地震や羽田空港での航空機衝突事故が発生し、新聞やテレビ、インターネットなどで現場の様子が連日、報道されています。悲惨な現場の様子を伝える映像などに長時間触れることで、気分が落ち込んだり、体調を崩したりすることがあります。こうした報道にどのように向き合ったらいいのか、沖縄県公認心理師協会災害対策担当理事の比嘉紀枝さんに聞きました。(聞き手=社会部・榧場勇太)

 ―気分が落ち込んだり、体調を崩したりするのはなぜでしょうか。

 「悲惨な映像を見て、その状況に自分が陥ったときのことを想像して怖くなったりすることは正常な反応で誰にでも起こり得ることです。しかし、繰り返し、長時間触れることで体調を崩し、気分が悪くなったりしてしまうことがあります。地震はこれまでも日本の各地で発生し、過去に自身や身近な人が被災した方も多いはずです。そのときの体験がよみがえってしまうことが不調の原因になります」

 「航空機事故に関しては、沖縄ではオスプレイ事故や米軍基地関連の事故の報道も多く、それらと似たような感覚を持ったりすることもあるかもしれません。報道機関は情報を伝えるために衝撃的な部分を切り取って繰り返し伝えている印象があります」

 ―災害報道とどのように向き合えばいいですか。

 「悲惨な映像などに触れた量と心理的反応は比例するといわれています。報道を通じて次の災害への備えや対処のために情報を得ることは必要なことですが、触れている時間をコントロールすることが必要です。特に過去につらい体験やトラウマのある方は反応が強く出ることもあります。子どものいる家庭では、つけっ放しになっているテレビを通じて子どもが映像にさらされている場合もあり、大人の方が情報をコントロールする必要があります」

 ―どういった症状が出ますか。

 「気分が落ち込むなど心理的な不調、頭やおなかが痛いなど体の不調、じっとしていられないなど行動面での不調の三つが代表的といわれています。大人の場合はアルコールやたばこが増えることもあります。子どもの場合は症状が分かりにくいことがありますが、興奮気味だったり、イライラしたりすることがあれば注意が必要です」

 ―不調が出た場合の対処は。

 「情報をコントロールするためにスマートフォンやテレビから意識的に離れる時間をつくることが必要です。その上で運動する、音楽を聴く、ゆっくりお風呂に入るなど自身に合ったストレスへの対処法を実践し、食事や睡眠の時間を大切にしてください。また、家族や友人と話して安心できる環境をつくることも大切です」

 「一人で悩んでいる場合や症状が1カ月続く場合は心理師に相談したり、精神科を受診することも検討してください。県精神保健福祉センターではそうした悩みを相談することができます」

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