素敵な歳の重ねかた!ユニコーン「すばらしい日々」新しい年にふさわしい90年代の名曲  とても素敵な歳の取り方をしているユニコーンの名曲「すばらしい日々」

青春の喪失を歌った「すばらしい日々」

ユニコーンの代表曲というとファーストヒットとなった「大迷惑」というイメージが強いのだろうか? バンドブーム少女やパチパチ読者には「Maby Blue」なのかもしれない。しかし、私にとってのユニコーンは「すばらしい日々」なのだ。この曲を『新しい年にふさわしい90年代の名曲』として紹介していきたい。終わりゆくバンドをテーマにした楽曲だが、今の彼らの活動と重ねてこの曲を聴くと過ぎ去った “すばらしい日々” が年を重ねた今も存在していると思えてならないからだ。

「すばらしい日々」は奥田民生の作詞、作曲。1993年4月21日に9枚目のシングルとしてリリースされ、翌5月21日にアルバム『スプリングマン』が続いてリリースされた。そして、本作リリースに伴うツアーが終わった後、ユニコーンは解散した。

解散の報を聞いた後、「すばらしい日々」を改めて聴いて、この曲で歌われている歌詞の真意が理解できた。

 すばらしい日々だ 力あふれ
 すべてを捨てて僕は生きてる
 君は僕を忘れるから
 その頃にはすぐに君に会いに行ける

日本ロック史に残る名パンチラインだと断言したい! リーダーの川西幸一が脱退し、メンバーの音楽的志向はバラバラになり、バンドとしての結束は弱くなり、解散に向かっていることが読み取れる。

しかし、バンドが解散すれば、奥田民生も自分の音楽を追求する自由が手に入る。それは嬉しいことでもあると感じるのだが、ユニコーンというバンドを失ってしまう喪失感が切なく歌われている。

解散に向かうバンドをセンチメンタルに奏でたメロディとサウンド

その曲調も12弦のリッケンバッカーが奏でるジャグリーなイントロから始まる。曲の展開は地味ながらも、印象的なメロディーに前述のパンチラインが歌われる。この部分、すごくセンチメンタルな気持ちを掻き立てられるのだ。

そして、曲の構成も大きく分けるとメロディは3つだけ。現在のポップミュージックはもちろんのこと、90年代のそれと比較してもシンプル極まりない構成だ。

削ぎ落とされたサウンドと地味なメロディにも関わらず、これだけ印象的な歌を作り上げたユニコーンの創作レベルはピークに達し、このバンドで目指すべき目標を見失ってしまったのではなかろうかとも感じさせる。

ユニコーン解散後、奥田民生はソロアーティストとして大活躍する。「すばらしい日々」で表現されたシンプルなギターサウンドに飄々としたボーカルというサウンドを基本路線とし、ヒット曲や名曲を何曲も生み出しており、その活躍は周知のとおりだ。

思い出になった「すばらしい日々」、そして、ユニコーン再結成

バンドに捧げた青春の想いを歌った「すばらしい日々」。80〜90年代が良い思い出となった頃の2009年、ユニコーンは突如、再結成を果たした。再結成後は、キッチリと2年に1枚アルバムをリリースし、コンサート活動もコンスタントに行っている。

普通、再結成後のバンド活動は同窓会ノリで、アルバム制作のペースもゆっくりしたものになるのだが、ユニコーンの勤勉さは特筆ものと言えるだろう。

そんな彼らの最新アルバム『クロスロード』が昨年(2023年)11月にリリースされた。本人たち曰く、本作は明るい作品とのこと。大人になったユニコーンが余裕綽々にポップなロックを鳴らしている。肩の力が抜けているのに力強い演奏、要所要所に盛り込まれる遊び心も忘れていない。これぞ2020年代のユニコーンを堪能できる作品だ。

収録曲の中でも民生とABEDON(阿部義晴)の作った曲は一聴してユニコーンらしい印象的なメロディを奏でている。しかし、他のメンバーが作った曲は、最初は何だかヘンテコリンな遊んでいるような楽曲で、「あ〜っ、この曲、捨て曲かも…」と思ってしまったのだが、アルバムを通して聴くうちに妙に耳に馴染んでクセになる。この馴染んでくる感じは、昔からのユニコーンの得意なパターンで、知らず知らずにアルバムをリピートしてしまうのだ。また、作詞作曲もメンバー全員がほぼ等分に分け合っており、現在のユニコーンが民主的に運営されていることが伝わってくる。

ユニコーンにとって、今この瞬間こそが「すばらしい日々」

「すばらしい日々」は終わりゆくバンドと青春を嘆くように歌われた楽曲だった。しかし、現在のユニコーンの充実した作品、メンバー自身がバンド活動をめっちゃ楽しんでいる様子を見聞きするにつけ、彼らにとっては、今この瞬間こそが「すばらしい日々」なのではないだろうか?

アラ還のメンバー同士が心地良い距離感を保ちつつ、互いをリスペクトして、作品づくりに励んでいる。同時に遊び心も決して忘れていない。そんな雰囲気で取り組んだ創作の結果、風通しの良いポップ・ロックを生み出している。

とても素敵な歳の取り方をしているユニコーン! 何とも羨ましい限りだ。

カタリベ: 岡田 ヒロシ

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