2024年を感じながら聴く【80年代ロック名盤ベスト10】懐かしむより、超えていけ!  2024年の今聴くべき80年代ロック名盤ベスト10

“今” をどういうふうにとらえているか?1980年代の名盤カウントダウン!

謹賀新年、本年も宜しくお願いします! 

ーー というわけで、自分にとっては今年最初のコラム。編集部からの指令は、“2024年を感じながら聴く80年代ロック名盤ベスト10”。面白そうなテーマだ…… と飛びついたはいいが、これがなかなか難しい。2024年、すなわち “今” をどういうふうにとらえているかで、選ぶものも変わってくる。生活にさほど困っておらず、心にたっぷり余裕のある人ならば、ワム! のような陽気なアーティストのアルバムを選ぶかもしれない。熱烈に恋をしている人ならホイットニー・ヒューストンのラブソングを好むだろう。

ーー ともかく、名盤というのは人それぞれだ。ここで取り上げた10枚は、自転車操業的な自営業者で物価高騰に頭を悩ませている、そんな筆者が独断と偏見でセレクトしたものであり、ちょっとばかりの時代への目配せも入っている。便宜上、順位は付けたが、特に意味はない。以上をお断りしたうえで、今聴くべき1980年代の名盤カウントダウン、行ってみよう!

俺は奇跡を信じている、俺はより良い世界を信じている

第10位 ラモーンズ『ブレイン・ドレイン』(1989

ラモーンズの80年代の代表作を選ぶのは、なかなか困難な作業だが、“俺は奇跡を信じている、俺はより良い世界を信じている” という1曲目「アイ・ビリーヴ・イン・ミラクルズ」に2024年の希望を託して、このアルバムを。バンドの実質的なリーダーだったギターのジョニー・ラモーンは今年没後20年、オリジナルドラマーのトミー・ラモーンは没後10年となる。

第9位 U2『WAR(闘)』(1983)

ウクライナでもガザでも戦闘が収まらないまま、2024年のニュー・イヤーズ・デイがやってきた。ニュースを見る度に心が痛む、そんな2023年を繰り返さないことを願いつつ、U2が平和への願いを込めたこのアルバムを。ボノは「ブラディ・サンデー」の中で、こう歌う――“いつまで、この曲を歌わなければいけないのか?”

第8位 フェアーグラウンド・アトラクション『ファースト・キッス』(1988)

なんと、まさかの、再結成&来日公演決定! 英国グラスゴーで結成された4人組のアコースティック・バンド、フェアーグラウンド・アトラクションが唯一残したオリジナルアルバム。シンプルでオーガニックなサウンドは装飾過多な80年代には新鮮に響いたが、今聴いてもまったく古びない。

第7位 a-ha『ハンティング・ハイ・アンド・ロウ』(1985)

個人的に今年もっとも楽しみにしている映画のひとつは、マーベルコミック原作の人気シリーズ最新作『デッドプール3』。前作ではa-haの大ヒット曲「テイク・オン・ミー」が流れる場面で、ちょっと泣いたなあ…… などと思い出しつつ、同曲を収録したファーストアルバムをチョイス。

今の政権にリンクする?ポール・ウェラーの書く辛辣な歌詞

第6位 ザ・スタイル・カウンシル『アワ・フェイバリット・ショップ』(1985)

ジャムの解散後、ポール・ウェラーがミック・タルボットと結成したスタイル・カウンシルは、当時の日本ではオシャレなアコースティック・サウンドとして売り出されたが、ウェラーの書く歌詞はジャム時代以上に辛辣になっていった。英国サッチャー保守党政権への怒りは、今の日本の政権与党に対するそれとリンクする気がしないでもない。

第5位 ビリー・ジョエル『イノセント・マン』(1983)

こちらも祝来日! 16年ぶりの日本公演ということで、大御所ビリー・ジョエルの代表作を。本作も80年代の作品にしてはアレンジに派手さがなく、60年代色が濃厚。往年のR&Bへのリスペクトをストレートに反映したことが、時代の枠から突出した要因か。ちなみに、近々のステージではこのアルバムからタイトル曲など3曲をプレイしている。

第4位 R.E.M.『グリーン』(1988)

キャリア初期のR.E.M.は本国アメリカ人でさえ歌詞が聞きとれないバンドと言われていたが、このアルバム辺りから歌詞が聞き取りやすくなってくる。I.R.Sレーベルとの契約を終え、ワーナーと契約した最初のアルバム。1曲目の「ポップ・ソング’89」ではないが、天気の話ではなく、そろそろ政府について、本気の世間話をした方がいい時期かも!?

リリースから40年を経たスプリングスティーンの名盤

第3位 シンディ・ローパー『シーズ・ソー・アンユージュアル』(1983)

リマインダー世代なら知らない人はいない大ヒットアルバム。日本では本国アメリカよりもリリースが約半年遅れたので、日本でのカウントでは40周年となる。このアルバムが今なお愛されているのは、女性の主張が明確に表われているからだろう。実際、ヒット曲「ハイスクールはダンステリア」はフェミニストのアンセムに。「シー・パップ」が女性の自慰行為を題材にしていることも有名。

第2位 ニュー・オーダー『ロウ・ライフ』(1985)

そういえば、昨年まであれほど恐れていた新型コロナウィルスって、どうなった? 5類移行で今では報道こそされなくなったが、国立感染症研究所感染症疫学センターの調査によると今冬も患者数は増加傾向にあるようだ。このアルバムに収録された「パーフェクト・キス」は当時世の中を不安に陥れていたHIVウィルスのことを歌ったと言われているが、“ヤツの銃に気づかないフリをして、外へ出て楽しもうぜ” という詞は、行動制限がなくなった今のことを歌ってるいるようにも思える。

第1位 ブルース・スプリングスティーン『ボーン・イン・ザ・USA』(1984)

2024年はアメリカ大統領選の年。4年に一度のこのタイミングで、よく耳にするのが本作のタイトル曲だ。アメリカ賛歌と誤解されているが、これはむしろアメリカに生まれたことを嘆く曲。スプリングスティーンは他にも貧困や労働問題といった社会問題をこのアルバムで歌っている。リリースから40年を経たが、あの頃から世の中は良くなったのだろうか?“ダウンバウンド・トレイン(落ち目の列車)” に乗っている気がしないか? 日本人も考えた方がい。

ーー ざっと挙げてみたが、筆者の聴いているアルバムには偏りがあるし、選べる範囲にも限界がある。当然、違う意見もあるだろう。そんな声を、コメント欄やXに寄せてもらえれば嬉しいです。ちなみに第2弾として90年代編もセレクトした。こちらも読んでいただければ幸いである。

カタリベ: ソウママナブ

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