資産形成に投資は不可欠?ギャンブルとどこが違うのかを金融アナリストが解説

2024年。いよいよ新NISAがスタートし、投資を始める方も多いようです。一方で「投資はなんとなく必要な気がするけど、本当に必要なのか?」「投資はギャンブルではないのか?」と考える方もいるようです。今回は資産形成において投資がなぜ必要なのか、その理由を詳しく解説いたします。


資産形成とは…その必要性は?

資産形成は、将来の生活の安定や目的を達成するために、手持ちの資金を増やすことを目指す活動のことを指します。これには、節約や貯蓄だけでなく、投資も含まれます。

今の時代、投資が資産形成に必要な理由としては、まずインフレーション(インフレ)対策が挙げられるでしょう。通常、経済が成長する際には物価も上昇します。これをインフレーションといいます。

日本銀行は年4回(通常1月、4月、7月、10月)の政策委員会・金融政策決定会合での金融政策運営の考え方を整理した経済・物価情勢の展望(展望レポート)を公表していますが、直近のレポートでは「物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、 既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が残るもとで、このところの原油価格 上昇の影響等もあって、2%を上回る水準で推移するとみられる。」と示しています。

インフレになるということは、同じ金額のお金で買えるものが減るということでもあります。賃金が物価上昇に負けているなかで、ただ貯蓄しておくだけでは物価上昇率を上回るリターンを得ることは難しく、実質的な購買力が減少してしまうわけです。そこで投資を通して資産を増やすことで、インフレの影響を相殺することが期待できます。

また資産を守っていくうえで資産の多様化は重要です。もちろんこの記事を読んでくださっている皆様は日本で働いて日本円を使って生活をされている方が多いと思うので、日本円で保有するのは合理的です。ただし、なにもしないと資産を日本円だけで持つことになります。

全ての資金を一つの投資先に集中させると、その投資先が悪化した際のリスクが高まります。資産を日本円だけで保有すると、円安になった時に資産が世界ベースでみると目減りしてしまいます。例えばその時に米ドルや金など異なる資産クラスに分散投資することで、リスクを分散させることができます。

時間を味方につけ、複利効果を享受

老後の生活費や子供の教育資金、夢の実現など、将来必要となる資金を計画的に増やすためには、単なる貯蓄よりも投資が効果的です。例えば約40年前にアメリカでは“401kプラン”など確定拠出年金やIRA(個人退職勘定)という一種の個人年金制度を活用して国民の金融資産を大きく増やすことにすでに成功しています。日本でもiDeCoやNISAなどを活用してコツコツと長期的に投資によって得られる利益を再投資していくことで利益が利益を生む複利の効果を享受し、老後に備えることが期待されます。

時間とともに複利の効果は増えますので、長期間投資を続けることで資産の増加速度が加速します。そのためつみたて投資をするならなるべく早く始めることが成功のセオリーと言われています。

投資とギャンブルはどう違うのか?

投資とギャンブルは似たような要素を持っていると捉えられることがあります。上がるか下がるか、丁半博打のように投資をすることも可能ですし、未来の不確実性の中でリスクを取ることで利益を追求する活動であることは同じです。

しかし、本質的には大きな違いがあります。まず目的と期間が異なります。投資の主な目的は資産の増加や将来のリターンの確保です。多くの場合、長期間にわたる成果を追求します。短期のトレードでも利益を積み上げていく、という再現性のあるやり方です。投資は淡々とやっていくべきものでしょう。

投資家は企業の業績、市場のトレンド、経済指標などの多岐にわたる情報を収集・分析し、賢明な判断を下すべきです。またリスクを意識して多様な資産に投資することでリスクを分散させたり、資金管理で自身の資産を守ることが必要です。

その一方でギャンブルは短期的な勝利を目指すもので、即時の利益追求が中心なのではないでしょうか。プロは別かもしれませんが、多くの場合、結果は運の要素が大きく、偶然によって大きく左右されるといえるでしょう。ギャンブルは情報や分析よりも運や直感に頼ることが多く、ワクワクドキドキ興奮できるのはギャンブルだといえるでしょう。賭けた金額を全額失うリスクがあり、投資に比べるとリスク管理の手段が限られています。

つまり投資をする際にはギャンブルとは異なり、情報に基づく分析やリスク管理、長期的な視点を持つ資産の増加を目指す行為であることを認識して、運や直感だけに依存して「なんとなく」投資をするのはやめた方が良いということです。投資にはリスクが伴うため、適切な知識と戦略が必要です。

投資は確率のビジネス

「そうはいっても投資はどんなに調べても100%良い結果は出ないでしょう?」とおっしゃる方もいるでしょう。
それはその通りです。投資は確率のビジネスと言われますが、どんなビジネスでも100%儲かるビジネスというものは基本的にはあり得ません。

投資の世界において、未来の市場の動きや企業の業績を100%正確に予測することはできません。情報をもとに最善の判断を下しても、それが必ずしも正確な結果をもたらすわけではありません。例えば「この銘柄は好決算となりそうだ!」と分析して投資をして、予測通り好決算だったとしても、買った時にすでに好決算が織り込まれていたり、需給の問題があったりして、下がってしまうこともあるわけです。

その不確実性の中で、投資家は様々な情報や分析を元に、特定の投資が成功する確率を高めることを目指します。この確率的な判断が、投資戦略の中心となります。
高いリターンを求める場合、それに伴うリスクも高まる傾向があります。これは確率の観点からも理解され、投資家は予想されるリターンとその確率、そして伴うリスクを評価し、バランスの取れた投資を目指します。

このリスク(損切りの金額や可能性)に対してどのくらいのリターン(利益)が見込めそうな考えるクセをつけるのが良いと思います。投資を行う上で、すべての投資が成功するわけではないということを理解し、受け入れることが重要です。また成功確率が高いと分析された投資でも、市場の変動や外部の要因により予期しない結果となることも考えられます。そのために資金管理や、資産の分散が必要となります。

短期的な市場の変動を上手く利用し、確率的に優位性のある場面でルール通りにエントリーして、資産を増やすチャンスを狙うのも良いと思います。目の前でチャートを見ながらトレードが完結すると、目を離した時に急騰急落するリスクを回避することができます。

投資を人生の味方に

資産形成は、未来の安定した生活や夢を実現するための重要なステップです。ただの貯蓄だけでは、インフレや未来のニーズに対応することは難しいため、投資を通じて資産を効果的に増やしていくことが求められます。しかし、投資にはリスクが伴うため、情報収集や知識の習得、そして冷静な判断が必要です。

投資は確率のビジネスであり、未来の出来事を100%予測することは不可能です。しかし、十分な情報と分析をもとに、成功確率を高めるような判断を下すことで、長期的な視点での資産の成長を目指すことができます。その上で、全てのリスクを排除することはできないため、確率的な結果を受け入れ、適切なリスク管理を行うことが重要です。

本年も皆様の投資のお役に立つ情報をお伝えできればと思います。本年もどうぞよろしくお願い致します。

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