「父としての背中見せられたかな」親子でつかんだ一番マグロ 菊池正義さん、正真さん(青森・大間町)

1億1424万円の最高値を付けたクロマグロを釣り上げた菊池さん(右)と長男・正真さん=2023年12月31日、大間町(本人提供)

 「びっくりしたとしか言えない。でも、憧れ続けた一番マグロはうれしい」。5日に行われた東京・豊洲市場の初競りで、1億1424万円の最高値を付けたマグロを仕留めた青森県大間町の菊池正義(まさよし)さん(57)は、マグロ漁歴約30年で初めてつかんだ「一番」に喜びをかみしめた。

 昨年12月30日午後4時過ぎ、マグロはえ縄漁船「第57大運丸」(9.7トン)に長男・正真(しょうま)さん(32)と乗り込み年内最後の漁へ。31日未明、尻屋崎沖周辺の海域で、約80本仕掛けた針の中に手応えを感じた。15分以上の格闘の末、引き上げたのは238キロの大物だった。処理を行った正真さんから「腹の厚みがすごい」と言われ、「もしかしたら一番かもしれない」と期待が高まった。

 5日午前5時40分ごろ、親交のある東京の漁師から吉報が届いた。「『正義さんのマグロが選ばれたらしい』と聞いた。値段もびっくりで驚きの連続。まだ実感が湧かない」と報道陣の取材に語った。

 祖父の代からマグロ漁を営む。小学1年の夏休みから父・正(しょう)さんの漁船に乗るようになった。5年の時、正さんは他界したが、マグロが波間を跳ねる漁船からの景色や父の背中に憧れを抱き、漁師を志した。

 26歳ごろに独立し、初競りには何度もマグロを出荷したが、2022年と23年、2番目に高い値を付けたのが過去最高。22年は弟・一夫さんと一番を争ったが惜しくも届かなかった。

 焦がれ続けた一番をたぐり寄せた菊池さんは「大間の漁師は一番を狙うが、そう簡単に取れるものではない。(大間産の)13年連続の最高値を維持できてよかった。息子にも、父としての背中を見せられたかな」と優しくほほ笑んだ。

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