20歳の節目、着付けで支えて半世紀 雲仙市の本多さん(89) 若い世代に送るエール

振り袖を着せたマネキンの帯結びについて語る本多さん=雲仙市小浜町

 20歳の節目を彩る振り袖。着付師であり、後進の指導にも尽くす女性がいる。「おびの翠着付(みどりきつけ)研究会」会長、本多ミドリさん(89)=長崎県雲仙市小浜町=。「若い人に日本伝統の着物文化を残したい」-。半世紀以上、晴れの日を“縁の下”から支えている。
 同町生まれ。幼い頃から着物姿の人形を作るのが好きで美容師を志した。25歳の時、姉の後を継いで地元で美容院を開業。1959年から着付け指導を始め、89年からは九州各地で指導者向けに講習。県内でも長崎、佐世保、諫早で年6回開く。国家検定1級着付け技能士、県認定着付けマイスターを持つ。
 着物は染めや織りの柄で季節や慶弔を表現。振り袖には、松竹梅や扇、鶴、亀甲模様などに幸福な人生への願いが込められている。流行に左右されず、体形が変わっても着られ、まとえば心が穏やかになる-。技術とともに伝えている持論でもある。
 近年、着付師は高齢化や和装離れに伴い減少。振り袖を着る人が集中する成人の日は、着付師捜しが難しくなっている。一方で、着付けに興味を持ち、講習に参加する若手美容師らは、そう多くない。

壇上で帯結びの手順を説明する本多さん(手前)=1988年7月、雲仙市小浜町(本多さん提供)

 「もっと簡単に、もっと着やすくしたい」。そんな思いで85年ごろに開発したのが帯結び補助具「おびの翠」。その後、特許を取得し「きれいな仕上がりで苦しくない、脱ぎたくない着付け」を追究してきた。
 令和時代の20歳には、振り袖にベレー帽やブーツを合わせたがる女性もいる。「そうした着付けもしてあげて、正統な着こなしの写真も撮ってほしいと、美容師の皆さんに伝えています。(成人の日は)一生に一度ですからね」。春夏秋冬やTPOを大切にしているが、朱色の振り袖に白の帯、ピンクやオレンジの小物を合わせるなど、現代的な雰囲気も取り入れる。
 20歳の頃の自身を振り返ると、東京から帰郷して姉とともに美容院経営を切り盛りしていた。「京都や東京の一流デパートのマネキンを見て回り、流行のヘアスタイルを学んでいたほど」。好奇心と向学心は今も変わらない。「昔にかじりついてはいけない。生涯勉学です。いったん目指した仕事は諦めず、努力し続けてほしい」。若い世代へ熱くエールを送る。

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