昨年8月に死去した青森県弘前市出身の洋画家佐野ぬいさん(享年90)が生前手がけた素描画から選び抜いたデッサン展が5日、東京・表参道の「Galerie412」で始まった。企画に携わった次男の壮さん(57)は「母の抽象画の作品を知る人であれば、『こんな佐野ぬいは見たことがない』と思うだろう。ぜひ見てほしい」と語っている。
一般財団法人nuit・company主催。同法人の代表理事を務める壮さんら関係者が、杉並区の自宅に残されていた大量のスケッチブックに描かれていた800点に上る未発表の作品群から、モノクロのクロッキーやスケッチを中心に約30点を選んだ。
「ぬいブルー」と呼ばれる青を基調とした作品で知られる佐野さんだが、街並みや人物、静物など多彩な題材に目を向けていたことが分かる。佐野さんがアシスタントに生前「人物を描くのは嫌い」と漏らしていたことを知る壮さんは今回、数多くの人物画を目にしたことが驚きだったという。
壮さんは「母は具象画が苦手なので早い時期から抽象画を描いていたと疑っていた。これらの作品を目にして、しっかりとした技術の上に青を基調とした一連の作品があることが分かった。母の仏壇に線香を上げながら謝っている」と冗談交じりに語った。
展覧会は18日まで。入場無料。