GOOD BYE APRIL - "流行りのシティポップ"の遥か先を行く本物の"AOR"バンド、新宿LOFTにて至高のワンマンライブを開催!

「夜明けの列車に飛び乗って」は一番J-POP度が高い曲

──ちゃんと話をするのは久しぶりですよね。ちょうど去年の今頃(12月)に初めて取材して以来だったかと(当時のインタビューはこちら)。

倉品:去年はまだ「BRAND NEW MEMORY」を本格的に作る前でしたね。林哲司さんとの作業もまだこれからってタイミングだったんで。直前も直前でデモ出しをまさにこれからぐらいのタイミングだったと思いますよ。

──そうそう、そうでした。取材中に実はオフレコで…と林さんの名前が出てきたときは驚きました(笑)。

倉品:ですよね(笑)。ちょうど曲のやりとりとか始まる直前で、メジャー・デビュー決定もまだ解禁前だったんじゃないですかね。

──個人的にはめちゃくちゃ好きな曲でした。次作「サイレンスで踊りたい」もいろいろ話は聞きたかったんですけど。ミュージックビデオに阪田マリンさんも出演されてたし。

倉品:彼女もネオ昭和ってコンセプトで僕らと近いことをやられてるなって思って、インスタとかチェックしてたんですよね。お互いにベストなタイミングでご一緒できたなって。

──あの曲はバンドとしてどういうスタンスで挑んだんですか。

倉品:わかりやすく言えばダンスチューン路線でやってみようと。割と最初にバンドで話してたのが「BRAND NEW〜」がライブでもじっくり聴かせる曲になっているので、次はアッパーな盛り上げ曲がいいんじゃないかって。

つのけん:そこはバンド内でもけっこう話しましたよね。

倉品:アース・ウインド&ファイアーとかエモーションズとか、そういう80'sディスコなソウルミュージックってアイディアとしてはずーっと暖めてはいたんですよ。チーム全体の意見もいい具合にブレンドできて形になったなとも思ったので、じゃあ次は冬のリリース・タイミングだし、ロマンティックな曲をやってもいいのかなと。

──なるほどね。その「夜明けの列車に飛び乗って」に関しては作る上で狙ったポイントを今日聞きたかったんですよ。

つのけん:でも3曲の中では一番J-POP度が高い曲じゃないですかね。ザ・歌ものというか。もともと僕たちは昭和歌謡が好きだし、そういうハーモニズムを意識して、そこにここ数年のシティ・ポップ路線で得たものをどう活かせるかってところは狙ったところかもしれないですね。あらためてJ-POPをやろうっていうチャレンジにもなってるし。

倉品:うん。今年の大きなテーマとしては「BRAND NEW〜」から自分たちなりの普遍性、王道的メロディっていうものをもう一度真正面からやってみようっていう姿勢はあったんです。「サイレンス〜」はその反動というか、裏返しみたいなところで「それだけじゃないよ」ってアピールしておきたかったんです。あとはもともと年間プランの中で冬にシングルを出すってのも決まってたんですよ。さっきも言ったように冬はロマンティックなじんわり聴いてもらえるような曲を出したいっていうのもあり…でも「BRAND NEW〜」の次がその路線だとギャップがないじゃないですか。

──そりゃそうだ(笑)。

倉品:そこで「サイレンス〜」を出しておこうって思ったんです。

──なるほど。表裏一体の曲だったんですね、「BRAND NEW〜」と。夏、冬って対照的な季節でもあるし。

倉品:ですね。僕らの場合、季節感をずっと大切にしてきていて。例えばシティ・ポップの名曲と言われる楽曲ってやっぱり夏の曲が多いじゃないですか。

──ウインター・ソングって括りだとありますけどね。わかりやすい例えになる曲は少ない。

倉品:はい。だから自分たちなりに冬のシティ・ポップってどうやったら形になるんだろうって考えながら作った曲でもありますね。

──どうしてもシティ・ポップ=リゾートソングって捉え方はありますからね。「冬」だとシチュエイションとしても限定されちゃうしなかなか難しい。ちなみにもともとデモとしてモチーフみたいなものはあったんですか?

倉品:曲自体は2019年に作ってて。僕も今日思い出したんですけど、サザンオールスターズの「YOU」から着想を得てデモを作って。その過程で自然に山下達郎さんの「THE THEME FROM BIG WAVE」がリンクしてきて。

──そうか。それであのイントロなんですね(笑)。

倉品:ですね。デモ製作過程であの2曲がうまい具合に合体して。テンポ感もあの2曲は近いんですけど。それがどうしてこんなに冬の香りがする曲になったのかは自分でもわからない(笑)。

どこのシーンにもハマらないバンド人生を歩んでいる

──ちなみに最初聴いたとき、90年代のビールのCMソングを思い出しましたね。「冬物語」ってCMソングを毎年作ってた時期あるんですよ。なのでJ-POP王道を狙いに行ったんだなってのはすごい伝わってきた。

倉品:なるほど。でもあんまりこの路線って演ってる人が少ないと思うんですよね。だからこそしっかり完成できたのは良かったなと。僕らって誰もやってないことを演るって大事にしてるところなんですよ。王道の音楽性だからこそ、あんまりそういうふうに見られないかもですけど。前もお話したように僕らってどこのシーンにもハマらなかったバンド人生を歩んでるので(笑)。

──うん、そうだねえ(笑)。

倉品:そういう意味では結成当初から浮き続けていて、期せずして誰もやってないことを演れてるんですけど。でもいつからか、自分の中でも意識はずっとありますよね。20年、30年と長いタームで続けていくためには誰もやってないことをやんなきゃダメだよなってことだと思うんです。あるときからそこに気づいて、ずっと意識してるところではあります。今回もそういう曲を自然と選んだのかもしれませんね。

──シンプルにとてもいい曲だと思いますよ。

倉品:もともと自分の中でもすごい古い曲だったってのもありますけど、作為的じゃないんですよ。

──レコーディングするにあたって特別意識したポイントとかってありました?

倉品:サックスをフィーチャーしようってのは最初からありました。あとはピアノですね。作ったのが4年ぐらい前なのでデモ自体が僕の中では青かったんです。その青さを今の自分たちの年齢なりにどうやって払拭したアレンジしようかなって。

──楽器編成的にもJ-POP感につながる要素ではありますよね。

倉品:アルトサックスがTRI4THの藤田淳之介さんで。狙いとしては達郎さんのライブで土岐英史さんが鳴らしていたサックスとかその辺を踏まえながらアレンジのブラッシュアップをしてたんですけど、曲を作った当時って僕らの中にそれほどシティ・ポップって意識はなかったんですよ。

──なるほどね。

倉品:だから曲の骨格自体がJ-POP的だったのかもしれないですね。その辺をうまく構築できたからこその仕上がりかもしれません。

──自らハードルを上げた1曲だなあって思いました。前作2曲もすごく好きな曲なんですけど、今回のシングルってすごく間口が広いと思うんです。だから今まで知らないお客さんに届いていく可能性は十分あるし、そのぶん誤解されることもあるよって思いました。

倉品:それはそうかもしれないですね。この曲ってスーパーで買い物してたときに思いついたんですよね。その直前にサザンの「YOU」を聴いてやたら感動してて(笑)、ちょうどテレビのスタジオライブかなんかで演奏されてたのを観たんですよ。それが素晴らしくって。「やっぱりいい曲だよなあ」って感動しながらスーパーに買い物行って思いついたという。で、ああいうところで流れる音楽って感覚としてJ-POP的なものが多いじゃないですか。

──そうですね。それこそジャンル関係なく。

倉品:そこで僕は自分たちの「YOU」みたいな曲がスーパーで流れるのを錯覚したというか。聞こえてきちゃったんですよね、自分の脳内で。「これはよさそうな曲が出来るぞ」って家に帰ってすぐに作ったのがこの曲なんですよってことを今思い出しました(笑)。

──じゃあ流してもらわなきゃダメじゃない(笑)。

つのけん:「サイレンス〜」のときってそれこそシティ・ポップの要素も踏まえたディスコ・チューンを意識したりとか尖らせる部分はより尖らせるとか、あとは林さんと一緒に「BRAND NEW〜」を作ったときって抜かりなくというか最後の最後まで諦めない、詰めるところは詰めるっていう制作姿勢はものすごく勉強になりましたし。そういう自分たちの経験値を上げてきたものが今回活きてるとは思いますね。あとはJ-POP感っていう部分だとドラムが鍵になってると思ってるんですよ。

──あ、それは納得です。

つのけん:スネアの音色はめちゃくちゃJ-POPの音色なんです。前2作はその部分がシティ・ポップしてるんですけどね。いい意味で若い音色になってると思ってて。

──リバーブ処理もそういうふうに聞こえるのを手伝ってる気はします。

倉品:それはありますよね。

つのけん:はい。シティ・ポップって細かいニュアンスとかタッチ感って縦のラインが強いんですけど、この曲に関しては横幅が強いというか開けたイメージになってる。シンバルの1音の長さもこれまでとは違ったアプローチで。いい意味で若々しいというか疾走感ある仕上がりになってるんです。そこに行き着くまでに今までの研究が活きてるなっていうのはあります。

倉品:あえてJ-POP感をうまく構築できたよね。

つのけん:そうそう。だから僕の中でもすごい納得のいく出来になってると思ってます。

倉品:ドラムが作ってるムードは大きいかもね。林さんと作業してて、学んだことのひとつに全パーツに意味を持たせるって部分なんですよ。それって当たり前だし、そうなってなきゃいけないんですけどね。例えばダビングしているシンセの音色ひとつにしても…気づいてはいたんですけど、やり切れてないところが林さんとご一緒することであらためて意識できるようになったんですね。裏で鳴ってる旋律とか、音色の選び方とか。そういうのをメンバーそれぞれが1音1音鳴らしていく意味合いっていうのをこれまで以上に「濃く」できた1年だったんじゃないかと思いますね。今まで薄かったところもあったと思うし。

つのけん:みんな抜かりなくやる意識を持てた1年だったんじゃないかな。

ワンマンは今までの経験値をちゃんと形にして伝えていけるライブにできたら

──そしてそうやってレコーディングで得た経験値をいかにライブに落とし込んでいくかってことですからね。僕がハードル上げたねっていうのはそういう意味もあります(笑)。

倉品:ですよね(笑)。また別のベクトルもありますからね。

──そのハードル上げた先が今回新宿ロフトで1月8日に行なわれるワンマンライブであるわけじゃないですか!

つのけん:なかなか話の繋げ方が強引ですね(笑)。

倉品:もちろん大いに期待してほしいんですけど(笑)。でもライブに関しても僕らバンド14年目に入りましたけども、結成当初からロフトにはお世話になってまして。

つのけん:ほんとそうです。

倉品:だからロフトに出させてもらうようになってから13年ぐらい経ってるんです。そんなに時間が経過してるにもかかわらず、すごい新鮮なんですよね、気持ち的に。で、ここまでやってきて僕らとしてはまだまだ全然変わっていくというか進化していけるじゃんって思いながら演奏できてるんです。そんな気持ちに気づかせてくれたのは10月に六本木でEPOさんとジョイントライブをやれたことが大きくて。型にハマらないライブを自分たちではやっていこうと思ってやってきたけど、まだまだ型にこだわってたんだなって。外せる型いっぱいあるじゃんって。

つのけん:そうそう。いろいろEPOさんからも学びはありました。演奏面でも僕らをリードしてくれましたね。

倉品:自分たちがライブで必要だなって思ってたことが「あ、全然関係ないんだ」と思えたというか。発見がたくさんありましたね。それって僕らがポップスを演ってるからこそなんですよね。おそらくロックバンドってことだと全然違うじゃないですか。ライブにおける臨場感とか自分たちの躍動感の伝え方ってもっとわかりやすいものを求められるじゃないですか。

──うん。ポップスは違いますからね。

倉品:楽曲自体のあるがままの姿を体現しなきゃいけないっていう大命題があるし、それが前提にある上で自分たちなりの躍動感を伝えていくのって難しいことだなって思ってたんですけど、今はそれがようやくやれそうだって思えるようになったんですよ。

──EPOさんとジョイントした後にキンモクセイとも共演果たしたじゃないですか。

つのけん:最高でした(笑)。メンバーそれぞれがちゃんと楽しみながら音楽を演ってる姿勢はシンパシーしかなかったです。

倉品:ですね。ほんと楽しかったですよ。

──彼らもシーンから浮いてたからなあ(笑)。そういう意味で両方のバンドを知ってる僕からすれば会うべくして会ったなとは思ってて。

つのけん:すぐに仲良くなったよね。

倉品:ライブハウスシーンで浮いてたって話では盛り上がりましたね(笑)。話をしててギャップを感じないというか。他人とは思えない人間性の近さは感じましたね。あ、もちろん同じポップスを愛する先輩バンドとしてのリスペクトはありきでの話です!

──でも2023年ってバンドにとってもいい経験ができた1年だったんじゃないかな。その総決算が1月8日のワンマンライブということで。

つのけん:今までの経験値をちゃんと形にして伝えていけるライブにできたらと思ってます。

倉品:2024年のバンドとしての目標もあるんですよね。やっぱりもっといろんなところで今まで以上にライブをやっていきたいし、アルバムを作って届けたいってこともあるし。そういう貪欲さをいい意味でバンドとしても伝えていける公演になればいいなって思ってます。

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