DF小沼 縦横無尽/山田高V王手 先発唯一の2年生/全国高校サッカー

話題のロングスローだけでなく、堅実な守備でチームの快進撃を支える青森山田のDF小沼=6日午後、国立競技場

 第102回全国高校サッカー選手権で2大会ぶりの優勝に王手をかけた青森山田。先発選手で唯一2年生のDF小沼蒼珠=そうじゅ=(東京都出身)は体を張った守備で相手の突破を食い止め、機を見た攻撃参加、飛び道具のロングスローと攻守で躍動している。

 6日、高校サッカーの聖地・国立競技場で行われた市立船橋(千葉)との準決勝。1-0の前半44分、相手FWが最終ラインの裏に抜け出してきた。後方から全速力で追いついた小沼は、突破を図った相手とボールの間へ巧みに体を入れてクリア。小沼が追いつけなければGKと1対1の大ピンチを迎えていただけに、勝負を左右するビッグプレーだった。正木監督が「3年生が緊張する選手権。小沼が一番伸び伸びやっている気がする」と評するほどの高いパフォーマンスを今大会はみせ続けている。

 小沼の名前が全国に知れ渡ったのは昨年9月の高円宮杯プレミアリーグ第15節。試合終了間際、途中出場の小沼がロングスローで投じたボールが相手GKの手をかすめ、そのままゴールに吸い込まれた(記録はオウンゴール)。この得点でチームは劇的な逆転勝利を収め、試合後は交流サイト(SNS)上に動画が拡散。「あんなにバズる(話題になる)とは」と本人も驚くほど注目を浴びた。

 9月までは控えに甘んじ、途中出場が目立った小沼。10月に主力選手のサイドバック小林拓斗(3年)=大阪府出身=の負傷を機に得た出番を生かした。プレミアリーグ第17節で初先発を飾ると、サイドで上下動を繰り返せる走力、守備での高いプレー強度という武器を発揮。対面するJリーグ下部組織のドリブラーに仕事をさせず、ロングスローだけの選手ではないことを知らしめ、先発定着につなげた。

 ピッチを離れるとムードメーカーの一面を見せる、チームの愛されキャラ。「緊張している選手がいたら笑わせるようにしている」と、今大会では変顔を披露したり、ウオーミングアップエリアで声を上げたりしてチームの雰囲気づくりに一役買っている。そんな小沼を正木監督は「昨年の秋からチームに勢いとポジティブさを与え続けてくれている」とたたえる。

 「決勝を楽しみ、3年生と最高の景色を見たい」。必ず試合前日にそり上げるという丸刈りの背番号3のプレーは決勝でも要注目だ。

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