お小遣い長年未納です。「請求書」送りました…中1の数学自由研究、最優秀賞の出来栄えにお父さんは舌を巻く

「算数・数学の自由研究」作品コンクールで最優秀賞を受賞した川原千鶴さん=鹿児島市の鹿児島大学付属中学校

 「お小遣いが長年未納のため、以下の通りご請求いたします」。鹿児島市の鹿児島大学付属中学校1年、川原千鶴さんは昨夏、父親の正行さん(44)に1枚の請求書を手渡した。記されていたのは未払い期間の合計ではなく、工夫して計算した遅延金を含めた総額。切実な思いで取り組んだ成果は、第11回「算数・数学の自由研究」作品コンクール(理数教育研究所主催)の中学校の部で最優秀賞に選ばれた。

 研究のタイトルは「父への請求書発行」。千鶴さんは小学6年の4月から中学1年の8月までの17カ月間、毎月の約束だったお小遣いをもらえなかった。父親に催促しても、「そのうちね」とはぐらかされるばかり。まとめて請求しようと思いつき、「説得力のある説明で、少しでも増やす方法はないか」と考えた。

 もらえたはずの合計額(月500円、中学からは月千円の計1万1000円)を元金にまず、定期預金と外貨預金の二つについて金利や為替レートを調べて検証。金利が極端に低い定期ではほとんど変わらず、外貨は増えるが、為替レートの予想が難しいと分かった。

 次に、支払いが遅れた時に請求できる遅延損害金に着目。年率を法定の最高に当たる20%とした場合、未払いの17カ月間で遅延金が1404円と、三つの方法の中で最も高くなった。元金と合わせた1万2404円を請求するまでを、表やグラフを用いながらA4判10ページにまとめた。

 コンクールでは中学生の作品約1万2100点の中から、最優秀賞3点の一つ「塩野直道賞」を受賞。「利息の計算をするという着眼点のユニークさに加え、現実感や真剣さが伝わる」と高く評価された。県内の児童生徒の最優秀賞獲得は初めてという。

 請求書を受け取り、遅延金の説明を受けた正行さんは、「それまでは聞き流していた。よく調べており、文句なしの出来栄え」と舌を巻く。千鶴さんは、「動揺しながらも払ってもらえた。最近また滞っているので、次はまた新たな請求方法を考えたい」と話している。

「遅延損害金を請求する場合」などについて、グラフも使ってハイレベルにまとめたレポートの一部(理数教育研究所ホームページより)
「算数・数学の自由研究」作品コンクールで最優秀賞を受賞した川原千鶴さん=鹿児島市郡元1丁目の鹿児島大学付属中学校

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