パンサラッサ引退式…矢作師「イクイノックスの子供を負かして欲しい」

1月8日、中山競馬場で最終レース終了後に、パンサラッサ(牡7・栗東・矢作芳人)の引退式が執り行われた。同馬は海外G1・2勝、2022年にはドバイターフ(芝1800m)でロードノースとの同着2着や、2023年サウジカップ(ダ1800m)で、日本馬初勝利を上げるなど国内外で活躍。

競馬ファンの心を掴む逃走劇

サウジカップ・矢作芳人調教師 (C)Jockey Club of Saudi Arabia // Mathea Kelley

2022年の天皇賞・秋では、大観衆を魅了する逃走劇を演じてイクイノックスの2着に入り、ラストランとなった昨年のジャパンカップ(12着)でも、競馬ファンの心を掴む渾身の大逃げを披露。芝ダートの二刀流として記録にも記憶にも残る名馬だった。

引退式には多くの競馬ファンが残り、パンサラッサの最後の姿を見届けた。今後は種牡馬として、その素晴らしいスピード能力を受け継いでいく。

●矢作芳人調教師
ーーパンサラッサはどんな魅力のある馬でしたか?
「ファンの皆さんが大逃げのたびに喜んでくださるのが、僕も本当に競馬ファンのように嬉しかったです」

ーー海外G1・2勝をする素質は感じられたのでしょうか?
「全く思っていませんでした(笑)。彼はコントレイルと同期だったので、横に天才がいたものですから、中々彼と比較するのは難しくて、人間で言えば努力の馬で、サラブレッドの場合、中々努力では素質には敵わないのですが、それを克服したのがパンサラッサだったと思います」

ーー子供達にはどのような期待を?
「やはりイクイノックスの子供を負かして欲しいです」

ーー最後に挨拶を
「まずこの度の、能登半島地震で被災された皆様に心からお見舞いを申し上げると共に、被災地の1日も早い復興復旧を願ってやみません。また、この寒い中遅くまで残ってくれたファンのみんなありがとう。このような盛大な引退式を行なってくださったJRA、その他関係者の皆様ありがとうございます。リスグラシュー、コントレイル、ラヴズオンリーユー、このパンサラッサで引退式は4頭目になります。馬にも人にも恵まれた調教師だなと思います。パンサラッサは他の3頭より国内での実績は少し劣るかもしれませんが、本当に記憶に残る、心に刻まれる走りをしてくれた馬だと思っています。去年の今頃、パンサラッサのサウジカップ挑戦を決めた時に、色んな雑音が外野から聞こえてきました。無謀だとかダートなのに何を考えているんだとか色々言われました。自分の考えを強烈に後押ししてくれたオーナーの広尾さんにも感謝しています。その難しいミッションを見事に成し遂げてくれた、パンサラッサ、吉田豊、うちのスタッフに心から感謝しています。矢作厩舎もパンサラッサの走りを胸にこれからも挑戦し続けます。応援よろしくお願いします」

吉田豊「1番思い出に残っているのは天皇賞」

サウジカップ・パンサラッサ (C)Jockey Club of Saudi Arabia // Mathea Kelley

●吉田豊騎手
ーーパンサラッサとの日々で1番思い出すことはなんでしょうか?
「海外で大きいところを二つ勝たせてもらって、二つとも嬉しく思います。1番思い出の残っているのは天皇賞で、負けた時が1番悔しいという思いが強いですね」

ーーパンサラッサが1番与えてくれたことは?
「長く乗っていて、正直海外とか大きいレースでああいうレース前に緊張する思いをしてレースを乗れる機会があるのかなと思っていたのですが、パンサラッサに緊張する機会を与えてもらってありがたいなと思っています」

ーー今、パンサラッサに伝えたいことは?
「本当にお疲れ様という一言で、第二の人生があるので子供に期待しています」

ーーパンサラッサの子供でまた逃げますか?
「そういう機会が是非あって欲しいなと思っています」

◆パンサラッサ 27戦7勝
(牡7・栗東・矢作芳人厩舎)
父:ロードカナロア
母:ミスペンバリー
母父:モンジュー
馬主:広尾レース
生産者:木村秀則
馬名の由来:かつての地球に存在した唯一の海。父名(海の神)より連想

◆主な勝ち鞍
福島記念(G3)
中山記念(G2)
ドバイターフ(G1)
サウジカップ(G1)

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