【マレーシア】国内不動産市場は好調見込み、業界大手[建設]

英系不動産サービス大手ナイトフランクは、8日発表した2023年下半期(7~12月)の不動産市況リポートで、国内経済の堅調な推移に支えられ、不動産市場は安定成長をたどるとの見通しを示した。

同報告書によると、不動産市場の供給過剰懸念を受けてデベロッパー各社が新規販売数の調整に動く中、23年1~9月の国内住宅市況は、取引件数ベースで前年同期比1.3%増、取引額ベースで3.5%増となった。

ナイトフランク・マレーシアの調査・コンサルタント部門のジュディ・オン専務取締役は、「インフレ圧力と政策金利の引き上げにもかかわらず、住宅不動産市場は明るい方向に向かっているようだ」とコメントした。

ナイトフランクによると、堅調さの背景には実需向けの住宅取得を促す政府の優遇策などがある。また、このほど発表された外国人向け長期滞在査証(ビザ)制度「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)」の条件緩和もプラスに働くとした。

今年1月から施行された外国人および外資系企業に対する印紙税の実質的な引き上げも、不動産価格の安定に寄与する見通し。

オフィス市場に関しては引き続き需給の不均衡が懸念されるものの、首都圏では一等地の高級オフィスのリースで回復傾向がみられるという。

小売物件に関しては、首都クアラルンプールで新規ショッピングモールの開業が続く一方で、インフレや今年3月のサービス税率引き上げ、5月1日導入予定の高級品税、補助金制度の見直しが消費意欲を鈍化させる可能性を指摘した。ただ、雇用環境の改善や観光業の回復が下支えし、小売市場は引き続き好調だと予想している。

■首都賃料、モントキアラで下落

ナイトフランクによると、クアラルンプールの高級住宅市場では、モントキアラを除く各エリアで賃料が横ばいから上昇傾向にある。エリア別では、クアラルンプール中心部、欧米人の好むバンサー、市内屈指の高級住宅街として知られるダマンサラハイツが上昇した一方、各国大使館の立ち並ぶアンパンヒラー・Uタント通りは横ばい、日本人が多いモントキアラは若干の下落だった。

ナイトフランクは、新規物件の竣工に伴い、より優れた設備を備えた物件が賃貸市場に投入されるため、賃料は引き続き上昇傾向にあるとしている。

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