【ミャンマー】国境貿易の低迷続く、紛争激化から2カ月[経済]

各地で紛争が激化してから2カ月以上がたったミャンマーで、国境貿易の低迷が続いている。中国向けでは、激しい戦闘で完全に機能を停止している国境ゲートもあり、タイ、インド、バングラデシュとの交易も軒並み減少している。軍事政権は経済統制を緩めることで輸出の促進を図ろうとしているが、思惑通りには進まず、貿易赤字の圧縮に苦戦している。

軍政下の商業省発表の公式統計によると、2023年10月29日から12月29日まで約2カ月間の国境貿易は、輸出が前年同期比33.6%減の7億1,900万米ドル(約1,040億円)、輸入が56.7%減の1億7,500万米ドルだった。国境貿易収支の黒字幅は19.8%減の5億4,500万米ドルとなった。

国境を接する4カ国との輸出入は軒並みマイナスで、このうち中国向けは輸出が37.9%減の3億900万米ドル、輸入が71.5%減の2,400万米ドル。北東部シャン州北部のチンシュエホー経由の輸出入は停止状態で、最大の玄関口である同州ムセ経由も大幅に落ち込んでいる。

シャン州北部では10月下旬、三つの少数民族武装勢力が国軍に対する一斉攻撃「作戦1027」を開始した。国軍の増援を遅らせるために道路の封鎖や橋の破壊などを行い、国境貿易の中継地である各都市などを占拠。中国政府が仲介姿勢を示したが攻防が続き、3勢力は今月5日、中国国境の町ラウッカイを占拠したと発表した。

ラウッカイは、3勢力の一角であるミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)がかつて実効支配していたコーカン自治区の中枢都市。今回の一斉攻撃の主要な目的の一つとされる。軍政と3勢力は中国の仲介で和平交渉を行っているが、停戦には至っていない。

「作戦1027」に続き、他地域の少数民族武装勢力や2021年2月のクーデター後から国軍に抵抗する各地の民主派武装組織「国民防衛隊(PDF)」も国軍への攻勢を強めている。過去2カ月の対タイ国境貿易では、パイプラインを通じたガス輸出が計上されるティーキーを除くと最大の玄関口である東部カイン(カレン)州ミャワディ経由の輸出入が大きく減少している。

■約9カ月間の貿易赤字13.52億ドル

本年度の初日の23年4月1日から12月29日までの約9カ月間の国境貿易は輸出が8.9%減の41億1,200万米ドル、輸入が26.5%増の20億7,300万米ドル。貿易収支は20億3,900万米ドルの黒字だったが、前年同期と比べると29.1%減った。

国境を通じた輸出入はミャンマーの貿易の柱で、停滞が長期化すれば全体の貿易収支を圧迫する。海上は輸出入共に2桁減少しており、貿易全体では輸出が14.7%減の106億8,500万米ドル、輸入が6.9%減の120億3,700万米ドル。貿易収支は赤字幅が3.4倍の13億5,200万米ドルに膨らんだ。

分野別の輸出は、工業製品や農産物をはじめとする主要セクターが軒並みマイナス。輸出が不振な中、財別の輸入額も軒並み落ち込み、「消費財」「CMP(裁断・縫製・梱包=こんぽう)原材料」の低迷が目立った。

© 株式会社NNA