常陸ブランド拡大 食や観光、価値向上 茨城県の戦略加速

「常陸乃国いせ海老」を発表した大井川和彦知事と関係者=昨年6月

「常陸」の名称を使った茨城県のブランド戦略が加速している。既に定着した「常陸牛」「常陸秋そば」など農畜産物に加え、本年度は伊勢エビ、トレイルコースなど食や観光分野で急拡大。常陸牛は最高級肉質「煌(きらめき)」を新設した。茨城県の優れた資源を常陸ブランドとして価値を向上させ、国内外に広く売り込みたい考えだ。

■高級食材

「かめばかむほど、味わい深い。自信を持ってプロモーションできる」。昨年11月、カモ肉のローストを試食した大井川和彦知事は太鼓判を押した。県は飛来する野生のマガモを「常陸国天然まがも」として、流通を始めた。

県内で人気の飲食店によるフェアも開催。水戸市やつくば市などの7店舗で、常陸国天然まがもを使ったローストや低温で煮たコンフィ、そば料理などを2月中旬まで提供している。

天然のカモ肉は高級食材となる。養殖と異なり、脂身が少ない豊かなうま味が特徴だ。

県農村計画課によると、茨城県への飛来数は全国有数の年間5万~6万羽に上り、レンコンなどの食害が深刻化している。県は捕獲とともに安定的な流通に向け、網猟の狩猟者登録を促すなどして、年間千羽を目標に掲げる。

■積極活用

常陸を冠した県産品は、1976年の銘柄牛「常陸牛」が知られる。2018年にはやわらかな口当たりと香りの良さが特徴の銘柄豚「常陸の輝き」を初出荷した。

本年度は新たな分野でのブランド化が一気に加速。茨城県沖で漁獲量が増えている伊勢エビの規格基準を明確化させ、「常陸乃国いせ海老」として販売を始めた。食だけでなく、日立や常陸太田など県北6市町の山間を巡るトレイルコースも、9月に「常陸国ロングトレイル」と改称した。

主な常陸ブランドはこれまでに7件。大井川知事は12月、常陸の名称について「これからも使えるところには使っていきたい」と、積極姿勢を見せる。

■海外視野

奈良時代初期に編さんされた地誌「常陸国風土記」には、常陸国は豊かな大地で古くから農業が盛んに営まれた理想郷と記されている。

現在、茨城県の農業算出額は全国3位。品目別では全国1位も数多く、「これだけのラインアップを提供できる県は少ない」(県販売流通課)。

常陸の名称は輸出や外国人観光客の誘致にもつながる。「Hitachi」の文字や響きは「海外の消費者や観光客に対して訴求力が高い」と期待される。

県営業戦略部の担当者は「海外への売り込みにはストーリー性も大切で、常陸の名称なら歴史的な由来もある。統一感あるブランドとして売り出したい」と話した。

【茨城県の主な常陸ブランド】
・県産銘柄牛「常陸牛」
・ソバの県独自品種「常陸秋そば」
・花豆の県独自品種「常陸大黒」
・県産銘柄豚「常陸の輝き」
・伊勢エビ「常陸乃国いせ海老」
・県北「常陸国ロングトレイル」
・捕獲マガモ「常陸国天然まがも」

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