気象庁新長官の森隆志氏…どんな人物? 福井出身、「週1で自転車タイヤの空気圧を確認」

森隆志氏

 気象庁の新長官に福井県福井市出身の森隆志氏(59)が就任する。能登半島地震で今後の防災の在り方に注目が集まっているが、森新長官はどんな人物なのか。2023年6月に掲載した本紙インタビュー記事を再掲し、その人柄に迫る。

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 気象庁には、長官に次ぎ次長と並ぶナンバー2の「気象防災監」というポストがあります。2020年に新設されたばかりで今年1月、福井市出身の森隆志さん(59)が就任しました。仕事ぶりを尋ねると「首相官邸の近くに住み、いつでも駆けつけられるよう電動自転車のタイヤの空気やバッテリー残量は常にチェックしています」。地震、大雨、噴火といった災害から国民の命を守るため、普段から気を抜かない意識がうかがえました。

 ――気象防災監は「気象庁の専門的知見から、官邸や関係府省の幹部らとハイレベルな調整を行い、災害時の政府全体の意思決定の迅速化を図る」とされています。地震発生時など30分以内に官邸に駆けつけないといけない立場ですね。

 「緊急事態発生時に関係省庁の局長らが集まる緊急参集チームの一員として官邸に駆けつけたのは1月5日の就任以降、4月13日の北朝鮮のミサイル発射時の1回のみ。5月5日の能登地方を震源とする地震(震度6強)の際は、代行をお願いしていたので別の職員が緊急参集チームに対応しました。午後2時42分に地震が発生し、私は気象庁に午後3時半に出勤後、ただちに官邸に出向き、松野博一官房長官に地震の概要を説明しました」

 ――日ごろから心掛けていることは。

 「地震、大雨、噴火など災害はいつ起こるか分からないので、普段は首相官邸から1キロの距離にある宿舎に住んでいます。夜寝るときには携帯電話はもちろん、着替えをベッドの横に置き、週に1度は宿舎に置いてある電動アシスト自転車のタイヤの空気やバッテリーの残量を確認しています。休日も官邸から半径2キロ以内を目安に遠くへは行かず、買い物や散歩に行くときはタクシーをつかまえやすい大通りを歩くよう心掛けています。お風呂に入る際には携帯電話をお風呂のドアノブにぶら下げて、いつでも電話やメールに対応できるようにしています」

 ――緊急参集チームでの役割は。

 「最初に気象庁から地震などの概要を説明する役割を担っています。例えば▽どのような地震だったか▽津波の恐れはあるのか▽今後の地震活動の見通しはどうか―などです。このため、いざというときに自分が早く官邸に着かないと緊急参集チームの会議が始められないという緊張感は常にあります。20分以内には到着するよう心掛けていますね」

⇒地震の緊急会見で目にする鎌谷紀子さんも福井県出身

 ――地震に関するこれまでの職務で、印象に残っているものは。

 「1995年の阪神・淡路大震災の際に、国土庁防災局(現在の内閣府防災)で地震担当の係長をしていました。約1か月半、深夜まで対応しましたが、国民の皆さまから、政府の初動が遅かったといった多くの苦情の電話をいただきました。その教訓から緊急参集チームもできて、今は自分がチームの一員として、災害時に少しでもお役に立てたらよいなと感じています」

 ――防災に関して、福井県民への呼びかけを。

 「福井県は大雨による災害の危険もあります。2004年の福井豪雨では、たまたま帰省しており、福井市内の実家が床下浸水し、玄関で水をかき出しました。横を流れる用水があふれたためで、あまり想定していない被害でした。昨年8月にも線状降水帯による大雨など、南越前町などで被害がありましたが、地球温暖化の影響もあってか、近年は大雨が激甚化・頻発化の傾向にあります。洪水以外にも、街中で(下水に流れきれなかった)水があふれたり、土砂崩れが起こったりと大雨による災害はさまざまです。自宅の周囲がどのような環境にあるか、どのような災害の恐れがあるかを日頃からイメージし、大雨時には、気象庁ホームページの『キキクル』を見たり、自治体の情報に注意したりして、身を守る行動を心掛けてほしい」

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※森氏は1月10日付で就任する予定でしたが、国土交通省は気象庁長官を交代させる人事発令を延期。能登半島地震への対応を優先するためで、新たな発令日は未定としています。

日頃の業務で大切している心構え

2022年9月に行ったインタビュー動画(心構えへ言及は6:50~から)

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