【高校サッカー】「部員205人でつかんだ優勝」青森山田主将・山本虎が負傷を通じ学んだこと

試合が終わった瞬間、ガッツポーズで喜ぶ青森山田の山本主将=8日、国立競技場

 歓喜に沸くスタンドに両手を突き上げた。「日本一の景色だ」。8日の第102回全国高校サッカー選手権で2大会ぶりに優勝した青森山田。主将を務める山本虎(3年、青森市出身)は高校入学後、度重なる負傷に悩まされた。プレーできない悔しさを知るからこそ、今大会でピッチに立てなかったメンバー外の選手たちの思いを背負い、205人の「青森山田ファミリー」で戦った。

 「高校の半分以上はけがとの闘いだった」。1年時から2年連続で右足の甲を疲労骨折。昨年1月には右膝を痛めて離脱した。苦しむ山本に影響を与えたのは2学年上のDF大戸太陽(東海大2年)。主力DFだった大戸は第100回大会県予選決勝前に左膝前十字靱帯(じんたい)を損傷。足の甲を痛めていた山本とともにリハビリを行いながら、練習の準備をしたり、仲間に助言を送ったりとサポート役に徹した。

 大戸のために-と一丸になったチームは選手権で優勝。若松佑弥トレーナーは「大戸の世代はチームのために何ができるかを考えることができていた。プレーできなくても力を尽くす大切さを虎は学べたと思う」と振り返る。

 現チーム発足と同時に主将に任命された山本。大戸の世代や、準々決勝で敗退した1学年上の世代を間近で見て「部員全員が勝利に向けて同じ気持ちを持つことが優勝には必要」とチームの一体感の醸成に気を配った。

 発信力のあるMF芝田玲ら同学年選手のサポートもあり、例年以上に選手同士で話し合いを重ね、時にはチームを一喝した。昨年秋、主力選手が私生活でチーム規律に反し、指導陣から公式戦1試合出場停止のペナルティーを受けると「トップチームにいる自分たちが私生活からきちんとしないといけない」と厳しく律した。

 チームにプロ内定者や圧倒的な力を持つ選手は不在。それでも正木監督が「近年で最も一体感がある」と評するほどのチームに成長した。優勝候補がそろった最激戦ブロックに入った今大会では組織力を武器に勝ち上がった。FW米谷壮史(3年、青森市出身)が「苦しくなったらスタンドの選手を見る」と言うようにメンバー外の選手たちの声援が力を与え、試合終盤で同点に追いつき、勝利した試合もあった。

 表彰式で優勝カップを掲げた山本。これまでの悔しさを思い出すより、ただただ、うれしさが勝った。「部員205人でつかんだ優勝。最高の仲間と日本で一番長い冬を過ごせたことを誇りに思う」。満面の笑みで語った。

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