【高校サッカー】「あの負けで自分は変わった」青森山田・GK鈴木将永(青森市出身)、夏の涙ばねに進化

昨夏の敗戦を糧に成長し、選手権優勝に貢献したGK鈴木(右)=8日、国立競技場

 全国高校サッカー選手権で優勝を果たした青森山田のGK鈴木将永(3年)=青森市出身=は最後まで絶対的な守護神として君臨し続けた。「あの負けで自分は変わった」。安定感のあるプレーの裏には、1点の重さを痛感した昨夏の悔しさがあった。

 選手権、高円宮杯プレミアリーグ、全国高校総体(インターハイ)の「高校3冠」を掲げた現チーム。最初の「冠」を手にするべく昨年7月、北海道インターハイに乗り込んだ。初戦、2戦目を快勝し、迎えた3回戦・明秀日立(茨城)戦。同点で迎えた後半アディショナルタイム、最終ラインの裏に敵陣から縦パスを放り込まれ、青森山田DFを振り切った相手FWがゴール前に迫ってきた。雨で滑るピッチ状況。ペナルティーエリア外まで飛び出すべきか-。「一瞬判断が遅れた」(鈴木)。前に出る決断ができず、相手にドリブルで持ち込まれ、決勝点を許した。

 課題だったカバリングが失点につながり「自分のせいで3冠が消えた。後悔しかない」。失点の責任を背負い、鈴木はインターハイ以降、苦手分野と徹底的に向き合った。遠征でミスを重ねながら、飛び出しのタイミングを試行錯誤。失点シーンを何度も見返し、自身を奮い立たせた。

 青森山田中時代から指導する古川大海GKコーチは「できないことに対してぶれずに取り組めるのが将永の良さ」とし「課題は改善されてきた」と成長を認める。

 高校最後の選手権は“鈴木の大会”になった。PK戦にもつれた初戦と準決勝は鋭い読みで相手のキックをストップし、チームを勝利に導いた。試合中は最終ラインの裏のスペースを鋭い出足でカバー。相手の決定的なシュートを抜群の反応で防いだ。正木昌宣監督が「うちには絶対に止めてくれるGKがいる」と絶賛する活躍ぶりだった。

 「夏の負けから、できないことに取り組んで成長スピードが急激に上がった。地道にやってきた意味があった」。そう実感し、観客から優勝をたたえる大きな拍手を浴びる中、ユニホームで涙を拭った。

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