「働き方の選択肢広がる」障害者、AI音声合成担う はちのへ東奥朝日ソリューション(青森・八戸市)

データワークサポートの事務所で仕事に取り組む作業者=2023年12月、八戸市内
グッドデザイン賞の受賞祝賀会に出席した亀橋氏(中)=2023年10月、東京(本人提供)

 就労継続支援事業所を運営する青森県八戸市の「はちのへ東奥朝日ソリューション」(亀橋進代表取締役)が、人工知能(AI)を活用した音声合成の関連作業を大手企業から受託し、実績を上げている。「障害者の働き方の選択肢を広げる大きな可能性を持っている」として、2023年度のグッドデザイン賞を受賞した。亀橋代表は「パソコンがあれば仕事が自宅でもできる。全国の障害者やシングルマザーにも広めたい」と意欲を見せている。

 文字データを音声に変換する音声合成は、AIやIoT(多様な機器を通信でつなぐモノのインターネット)の進歩で需要が拡大している。ただ同社によると、音声の精度を上げるためには、イントネーションの補正など最終的に人間の手を加えることが必要となる。この作業は「データワーク」と言われる。

 同社は八戸市を中心に、市内外に複数の就労継続支援A型事業所を構え、同市の一般社団法人データワークサポート(DWS、大平透代表理事)と連携しながら、大手の新聞社や通信事業者などから委託を受けて、データワークの作業に当たっている。

 はちのへ社は19年、画像認識AIの開発に欠かせない「アノテーション」と呼ばれる作業を開始。障害者のアノテーション業務は全国の先駆けだったが、「次第にコスト競争となり、作業者の賃金に反映されないと考えた」(亀橋代表)として、より高度な音声合成の分野に業務を拡大した。

 取り組みが認められ、はちのへ社とDWS、シンクタンクの三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京)の3者による「就労支援データワークプラットフォーム」が23年度のグッドデザイン賞に選ばれた。

 全国のA型事業所では障害者約8万8千人が働いているが、作業者の適性と作業内容にはミスマッチもあるとされ、作業者の特性や志向に合った環境やガイドラインを設計、提供している点も評価された。

 DWSの米田親弘管理部長は「作業者や指導員の日頃の積み重ねが受賞につながった。県内の自治体や企業がデジタル化を進める時に、県内の事業所がその作業を担う『地産地消』ができれば」と抱負を話す。

 DWSはデータワークを通じた就労支援や雇用創出を全国に広げるため、「地域創生データワーク協議会」を22年に設立した。亀橋代表は「当社ができることは他の事業所でもできるはず。全国の事業所にもデータワークの仕事を提供していきたい」と先を見据えている。

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