大分トリニータ 始動レポート 早くも浸透する「新カタノサッカー」 【大分県】

3季ぶりに復帰した片野坂知宏監督の下で、8人の新戦力を加えたチームが動き出した。未知数な部分が多いのも確かだが、グラウンドの雰囲気は悪くはない。

「大枠のコンセプトは選手に伝えたが、プレーする選手が考え、躍動するようなサッカーをピッチの上で表現していきたい。戦い方を合わせて、そのなかで個々の強度やクオリティーを高め、目標を達成するために最後まで戦えるチームにしなければいけない。応援してくれる方々が熱狂する、進化した『新カタノサッカー』を見せたい」

初日の練習を終えた片野坂監督はあふれる思いを語り、新チームのコンセプトをひもとくヒントを与えてくれた。チームの始動は1月8日。前回指揮した6年間は開幕まで6週間でチームをつくっていたが、今年は例年に比べて1週間早い。「昨シーズンの終わりが早く、オフが長かったので、選手の体調面などを管理したかった」と片野坂監督。現時点ではまだ始まったばかりで、シーズンに向けて体を目覚めさせ、フィーリングを確認し、選手への意識付けを行っている段階だが、指揮官の目指すスタイルは明確だ。

初日の練習ではコンセプトの意識付けを明確にした

新シーズンを迎え、チームは生まれ変わろうとしている。監督交代は言わずもがなだが、新加入の大半が高卒、大卒の新人であること。チームの平均年齢は24.9歳と昨季より1歳若くなったこと。さらに今季から週2回の2部練習が決まっていることは、これまで以上に育成に重きを置くクラブの意志の表れでもある。

片野坂監督が多く口にする言葉、それは「4局面の振る舞い」「シームレス」というキーワード。攻守一体のサッカーは「攻撃」「攻撃から守備への切り替え」「守備」「守備から攻撃への切り替え」といった四つの局面が循環している。ただ、これらの局面は切り離すことができず、途切れのない、継ぎ目のない「シームレス」なスタイルを目指すことになる。「若い選手も既存の選手もポテンシャルの高い選手が多いので、チームの中で個が生きるサッカーができたらいいと思う。2部練をして成長につながる練習をしていけば効果は出る。チームを底上げし、競争を生みたい」。目指すスタイルを実践できるように土台を築いている段階、ともいえる。

初日の練習ではランニングやパス回しなど軽めのメニューに終わったが、パス練習では、動きを止めない練習を開幕前から続けていれば、実戦になっても自然と体が反応するようになっていくという意図を、選手が感じとっている様子だった。3年前に大分を指揮していたときは、あえて選手との距離感を保っていた片野坂監督だが、今季はコミュニケーションを図り、選手の力を引き出すことを念頭に置く。「ポジティブに接して、選手が前向きになるようにしたい。指導者はネガティブなプレー、ミスに目が行きがちになるので、それよりも強みを生かしていくことが大事」。ち密な戦術を落とし込み、選手を育成しながら結果を求める。難しいタスクを課せられた指揮官がどのような手腕を発揮するのか、実に興味深い。

800人のサポーターの前であいさつした片野坂知宏監督

(柚野真也)

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