米民間企業の月着陸船「ペレグリン」推進システムで問題発生 推進剤が漏洩か

アメリカの民間企業アストロボティックによる米国民間企業初の月着陸ミッション「Peregrine Mission One(PM1)」の着陸船として日本時間2024年1月8日に打ち上げられた「Peregrine(ペレグリン)」が問題に直面しています。アストロボティックやアメリカ航空宇宙局(NASA)によると、ロケットからの分離後にペレグリンの推進システムで何らかの異常が発生した模様です。【最終更新:2024年1月9日11時】

【▲ ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の新型ロケット「ヴァルカン」のフェアリングに格納されるアストロボティックの月着陸船「ペレグリン」(Credit: ULA)】

PM1のペレグリンは日本時間2024年1月8日16時18分に米国フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地からユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の新型ロケット「Vulcan(ヴァルカン、バルカン)」初号機で打ち上げられ、発射約50分後に月へ向かう軌道に投入されました。

機体にはNASAの5つの科学機器をはじめ、カーネギーメロン大学の小型月探査車や日本の民間企業のタイムカプセルなど、NASAの商業月輸送サービス(CLPS)の下で合計21のペイロードが搭載されています。アメリカの民間企業で開発された月着陸船の打ち上げは今回が初めてです。

関連記事:ULA、新型ロケット「ヴァルカン」初号機打ち上げ 月着陸船ペレグリンの分離に成功(2024年1月8日)

アストロボティックによると、ヴァルカンから分離に成功したペレグリンとの通信はNASAの深宇宙通信網(ディープスペースネットワーク)経由で確立され、推進システムの起動と安全状態での運用を開始。しかしその後に推進システムで異常が発生し、太陽電池でバッテリーを充電するための姿勢制御が不安定になってしまいました。

運用チームの努力によって太陽電池を太陽に向け直すことには成功したものの、推進システムの故障に起因するとみられる推進剤の損失が発生していることから、アストロボティックは実現可能な代替ミッションを評価していると述べています。日本時間2024年1月9日6時すぎにはペレグリンに搭載されているカメラで撮影された画像が公開されました。

【▲ アストロボティックの月着陸船「ペレグリン」のペイロードデッキに搭載されているカメラで撮影された画像(Credit: Astrobotic)】

日本時間2024年1月9日11時すぎにアストロボティックから発表された最新情報によると、現在の推進剤消費ペースに基づけば、ペレグリンが安定した状態で太陽を指向し続けられるのはあと40時間程度と推定されています。ただし、推進剤漏洩による姿勢の乱れを防ぐためにペレグリンの姿勢制御スラスターは耐用寿命を大幅に超えて作動し続けているといい、スラスターが耐えられなければより早い段階で姿勢制御が困難になる可能性もあります。発表時点でのアストロボティックの目標は、姿勢制御ができなくなって電力を失う前に、可能な限りペレグリンを月に近付けることだということです。

PM1のペレグリンに関しては新たな情報が発表された後に改めてお伝えします。

Source

  • NASA \- Payload Assessments Continue for NASA Science Aboard Peregrine Mission One
  • NASA \- Astrobotic Experiences Issue Aboard First NASA CLPS Robotic Flight to the Moon
  • Astrobotic Technology \- News & Press
  • Astrobotic (X, fka Twitter)

文/sorae編集部 速報班

© 株式会社sorae