救助犬で捜索、能登半島地震 倒壊家屋で要救助者を、和歌山・新宮市のNPO

倒壊した家屋の中から要救助者を捜索する和歌山災害救助犬協会のメンバー(石川県輪島市で)=協会提供

 最大震度7や津波が観測された能登半島地震で被災した石川県で、和歌山県新宮市のNPO「和歌山災害救助犬協会」(榎本義清理事長)が要救助者の捜索活動に取り組んだ。榎本理事長(61)は半島に集落が点在して幹線道路が少ないといった面で、南海トラフを震源とする大規模地震の発生が懸念されている紀伊半島との共通点を感じたと指摘。「ひとごととは思えない。それぞれができる方法で支援を」と呼びかけている。

 同協会は家屋の倒壊や土砂崩れなどで安否不明になった被災者を鋭い嗅覚で捜し当てる災害救助犬を育成し、災害現場に出動している。会員は現在10人ほどで、救助犬としてシェパードとラブラドルレトリバーの計5匹が所属。これまでに東日本大震災(2011年)や紀伊半島大水害(同年)、熊本地震(16年)などの被災地に出動しており、今回の出動で7回目という。

 1日に発生した能登半島地震では、先に現地入りをした救助犬団体と連携しながら、榎本理事長ら4人が2日午後0時半ごろ、救助犬2匹とともに2台の車で新宮市を出発した。金沢市を過ぎると道路が各地で寸断されており、3日午前5時半ごろ、17時間ほどかかって能登半島の先端にある石川県珠洲市の市役所に到着。隣の輪島市で救助犬が足りないという情報があったことから転進を決め、同日午後8時ごろに同市にたどり着いた。

 輪島市では4日早朝から、自衛隊の要請に基づき、他の救助犬団体とともに倒壊した家屋の中から要救助者を捜す活動に取り組んだ。取り残された人がいないかを一軒ずつ確認する活動を進めたが、持参した食料やガソリンが底をついてきたことやメンバーの体調などを考慮し、5日の昼過ぎで活動を切り上げた。住民から行方不明になった人の捜索を頼まれたこともあったが、生存者の発見には至らなかったという。

 榎本理事長は能登半島を訪れた印象について「地形が似ており、紀南で大規模地震が発生した場合も各地で交通が遮断されてしまい、救助が入れない状況になるのではないかと感じた。命をつなぐのは水と食料なので、その確保をそれぞれが事前にしっかりと考えておく必要がある」と指摘。家が倒壊しなくても家の中で家具によって被災するケースも多いとみられ「救助する側として取りこぼしてはいけないと感じたし、皆さんには家具の固定を改めて呼びかけたい」と話した。

 その上で「被災された方に寄り添う気持ちを持ち続け、義援金を寄付したり、現地からボランティアの呼びかけが始まったら力を貸していただいたりと、それぞれができる支援をお願いしたい。私たちも状況を見ながら再び出動することを検討したい」と話している。

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