ペット同乗サービス提供のスターフライヤー明かした「避難時には連れ出せない」意外な理由

(写真:アフロ)

1月2日に発生した、日本航空と海上保安庁の航空機が東京・羽田空港の滑走路で衝突した死傷事故。海保機のほうは乗っていた6人のうち5人が亡くなったが、日航機では乗客・乗員379人全員が脱出に成功し、この脱出劇はCNNやBBCといった海外メディアが「奇跡」と銘打って報じるほど大きな話題となった。

しかし、日航機でも命を落とした者たちがーー。それは、手荷物として貨物室内に預けられていたペットたちだ。1月3日、日本航空は会見で「ペットを預けた乗客は2名いる。どちらも残念な結果になっている」と明かした。

■ネット上ではペットの同乗や緊急時の扱いについて議論が勃発

するとネットでは「ペットを貨物室に積み込むことを禁止してほしい」という署名が拡散され、なかには「非常時にはペットも一緒に避難を!」と自身の考えを発信する人たちも現れた。例えばフリーアナウンサーの笠井信輔(60)は3日のブログにこう綴っている。

《荷物1つ持って降りる事は許されないのが脱出です。命が大事ですから ただ、今回貨物室に一体いくつの命が積まれていたのでしょうか?連れ出せないのは決まりです でも、その悲しみの深さは測りしれません》

いっぽうで、ペットの同乗や緊急時にともに避難することについては否定的な声も多く飛び交った。たとえば、立憲民主党の米山隆一衆院議員(56)は6日、自身のXで《飛行機事故の様に1秒を争う緊急の線引きでは「人間と人間でない物」で分けるのは当然で、ペットは線の外に置かざるを得ません。それが嫌なら陸路で行くか、ホテルや他人に預けておくかでしょう》と綴っている。

そんななか注目を集めているのが、航空会社の「スターフライヤー」だ。同社は’22年3月から「FLY WITH PET!」として、ペット同乗サービスを国内線定期便の一部でスタート。さらにサービスの対象路線が拡大することとなり、今月15日からは国内線の全路線・全便で、キャビン内へのペット同伴が可能となったのだ。しかし、同社は公式サイトでこうアナウンスしている。

《緊急脱出が必要になった場合、ペットは連れていけませんので、ペットを機内に残して脱出いたします》

そのため、Xでは《スターフライヤーも、緊急時はペットは機内に置いていくという決まりらしいですね。そこにいるのに連れていけない…そうなると余計に混乱しそうです…》《緊急時にペットを置いていかなければならないという条件有り。いずれそういうところも改善されるといいですね》といった声が相次いでいる。

■スターフライヤーが明かした「避難時は機内に」の理由

ペットのキャビン内への同伴は可能でも、非常時にともに避難できないのはなぜなのか? スターフライヤー社に問い合わせたところ、広報担当者は次のように明かした。

「機内の同伴サービスを行うために多数の調整を行い、ペットを指定の範囲内のケージに入れて手荷物扱いをして乗せることで、このサービスを実現することができました。

ただ手荷物は緊急時に脱出する際、機内に置いていかなければなりません。こちらにつきましては、どの航空会社でも同様で国によって定められています。スターフライヤー個社の判断で変えることはできず、そのため非常時に、ペットを一緒に連れて避難することができません」(以下・カッコ内は広報担当者)

さらに、広報担当者は「『動物の命と荷物は違う』という声が上がっていることは把握しております」として、こう続けた。

「今後ご意見を踏まえつつ、弊社の中でもできることを考えていきたいと思っています。皆様の声が航空業界全体に届けば、サービス向上のために『非常時にはペットも一緒に避難を』という案を検討するきっかけになり得るかもしれません。ただ行政によって制限がかかっているため、なかなか変えることが難しいところではあります」

いっぽう「FLY WITH PET!」にはリピーターもいるほど、反響が大きいようだ。

「サービスを利用されているかたからは、『隣で常に様子を確認できるので安心感がある』というお声をいただいており、コンスタントに毎月ご利用されているかたもいらっしゃいます。貨物室で離ればなれではなく、そばで一緒に旅を楽しむことができるという点に魅力を感じていらっしゃるのかなと考えております」

今回の議論が、人にもペットにもよりよい航空機の在り方につながるかもしれないーー。

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