GACKT自白!格付け個人76連勝“間違えない考え方”は「一部の金持ちが価値を決める」

(撮影:竹中圭樹)

7日放送の『芸能人格付けチェック!2024お正月スペシャル』(ABCテレビ・テレビ朝日系)に出演したGACKT(50)。チームの相棒・DAIGO(45)のミス連発により、最後は“映る価値なし”になったものの、今年の平均世帯視聴率は20.7%(ビデオリサーチ調べ、第2部19時~21時56分、関東地区)を記録する人気ぶりだった。個人での連勝記録は76に伸ばしたGACKTが「格付け」で過去一番エグかった問題は? そして勝ち続けている秘策とは? 発売中の自伝『自白II』に収録された《第3章 格付け》からの“自白”を再編集して緊急公開する――

もちろん、【格付け】の問題は偶然で正解しているわけではない。ボクの正解率に対し『ヤラセ』『勘』などと頭の悪い言葉を使う者もいるが、『ヤラセ』など問題外、勘で当てているとすれば天文学的確率をクリアーする運の強さを持っているということになる。そんなものを持っているのなら、そもそも別のことに使ってる。知識と経験をもとに勝負しているにすぎない。もちろん、わからない時もある。偶然当たったこともある。興味のなかったものや苦手なものだ。だが、番組の特性上、自信満々で答えなければならない。番組では二人ペアでチームを組んで出ているが、パートナーに対しての出題でボクが間違っていたことも少なくない。パートナーが当て、自分の予想が間違っていた時「マジか…、間違ってたのか、ボクじゃなくて良かった…」とその都度安堵している。

ボクが得意とするジャンルは、エンタメ、音楽、ダンス、肉、ワイン、食材に関してだ。特に音楽に関しては、『役者の人たちにわかるわけがない』と思う高すぎるレベルの問題も多い。音楽に携わっている者にとってもかなりレベルの高い問題だ。

そもそも【格付け】には間違っても仕方がないという気持ちで出始めた。だが、連勝を重ね始めた途端、周りが勝手に期待し始めた。無責任に騒ぎ始めた。『勘弁してくれ、ストレスでしかない…』これが正直な気持ちだ。数年前、ヘアサロンに行った時のことだ。突然、そのサロンのオーナーに指摘された。「GACKT氏、言いづらいけどハゲができてるよ…」と。鏡で見た時に「マジか!」と思わず声が漏れた。500円玉ほどの円形脱毛症が後頭部にできていた。格付けの収録1カ月前の出来事だ。「もう、格付けはやめた方がいいんじゃない?」と心配そうに言われたことが、なおさら悲しかった。『いやいや、バラエティー番組のことをそんなにシリアスに言うなよ…』と。写真を撮った。ひくつく顔で。もちろん、その時はショックでもあったが、メンタルの弱い男だと自身を笑った。髪をショートにしようと思っていたが泣く泣く諦めた。

連勝の責任も勝手に自分で感じていたのだろう。だから、ボクは常に言う。『バラエティーに向いてない』と。どうしても熱が入る。そもそも性格が向いてない。格付けの番組収録中、盆栽の問題解答後、「盆栽のことなんてわからない!」と言えば、放送終了後しばらくして盆栽協会から大量の資料が送られてきた。『ボクに何を期待してんだ…?』と多くの資料を目の前にし愕然とした。だが、このまま何もしないのはもっと癪に障る。その資料を読み漁り猛烈に勉強した。普段、自分が好きなものは自分から勉強するが、腹立たしさから勉強するのは妙な気分だ。だから何度も言う。ボクはテレビに向いてない。この言い方が自分を表現する上で正しいかはわからないが、ボクはただの〈追求癖のあるオタク〉だ。ただのハマり症のオッサンでしかない。

■浜田さんから叱られた

2023年の元日に放送された格付けの100万円のワインを当てる問題は過去一番にエグかった。ワインの銘柄の表示もない。いつもはラフィット、ムートンとワインの銘柄の発表がある。何年物かの情報も出る。それに対し5000円相当の銘柄のわからないワインとの味を比べ、どちらがその高級ワインかを見極める。これが通例の出題形式だが、今回の収録時は一切なんの情報もなし。つまり参考にするヒントがない。これを番組収録時に聞いた時、内心では『ふざけんな!』と叫んでいた。これではまるで世界でトップのソムリエテストだ。ただでさえプレッシャーが大きい復帰一発目の番組にもかかわらず、『なんてことやらせんだ!』と怒りが込み上げた。結局、答えを導くまでに番組出演史上一番時間がかかった問題となった。色を見ればブルゴーニュかボルドーかはすぐわかる。この深く鮮やかな漆黒赤色はボルドー。それを口に含み転がす。値段のことも考え始めた。『今は円安、2年前は70万、100万ってことはヴィンテージではない…』とこんな感じだ。

今回はメルローか、カベルネソーヴィニヨンかという二つの選択肢しかなかった。かなりラッキーなことに普段よく飲んでいるワインということもあり、答えを導き出すことができただけだ。ワイン通の人は当然、カベルネだと思ってしまうだろう。メルローなら予想できる銘柄はニコイチ(二者択一)となるが、カベルネなら銘柄まで辿り着くのは異常なほど難しいだろう。メルローだったからこそ銘柄も自ずと当たったというだけにすぎない。その後、浜田さんに「勘弁してくださいよ、あんな出題!」と言うと「オマエが当てすぎなんや!オマエを間違えさせるためにこっちは必死なんじゃ!」と叱られる始末。なぜ叱られるのか。

【格付け】にはワインの問題が毎回出るが、そもそもワインを好きになったのは24歳の時だ。最初はグラスを回しているのがただカッコいいというレベル。何が美味しいかなどまったくわかっていなかった。飲んでいるワインのレベルも相当低かった。

基本、芸能人の友達が少ないボクにとっては起業家の友人たちと遊ぶことがほとんどで、その付き合いで彼らから教えてもらった多くの知識は人生の糧となった。経営者が集まる場に呼ばれて行くと、必ずと言っていいほど上質なヴィンテージワインが出てくる。それまでに飲んでいたワインとはまったく違うもの。『何故、これほどまでに味が違うのか、口の中に含んだ時の感覚がまったく違う』と。更に値段を聞いてビックリした。ワインに関する知識を彼らから聞き深みにハマり、世界各国からワインを集めるようになった。仕事柄、海外に行くことも多いが、それぞれの国で有名なワインを飲み漁った。

自分が美味しいと思うワインの中で、好んで飲むのはブルゴーニュ。そのブルゴーニュの中で群を抜いて素晴らしく、別格だと感じるのはやはりロマネコンティのヴィンテージだ。今なら1本700万円は軽く超えるだろう。会食でロマネコンティを開ける場に何度かいたが、初めて口にした時、『こんなワインがあるのか!』と驚愕した。そして値段を聞いて『誰が買うのか?』と理解できなかった。それからDRCのことを勉強し始めた。もちろん、そんな高級ワインだけを頻繁に口にするわけではない。普段、口にするもので好きな銘柄はリシュブール。大切な人と飲む時はこれだ。

仲間と飲む時、一人で飲む時とでは開けるワインも変わってくる。仲間と気軽に飲む時はシャンベルタンが多い。作り手にもよるが、手頃なものだと15万~25万円ほどで手に入るだろう。シャンベルタンと言っても好みが分かれるほど種類は多く、シャルム、マジ、シャペル、シャンベルタン、クロ・ド・ベーズ、リュショット、ラトリシエール、グリオット、マゾワイエールをその時の気分で飲み分け作り手の味の違いを比べながら、「そもそもブルゴーニュとボルドーは何が違うのか」などという基礎的な長い話から始め、アルマン・ルソーとは?などと御託を並べながらワインの素晴らしさと知識を共有するその時間が好きなだけだ。フランスのボーヌに行った時はフランスのワインやワインに携わる人を守る姿勢に感動した。ボーヌを守るために取っている政策など、ワイン話は話し始めればキリがない。ちなみに、この話を何度しても覚える気のない者は、「なんか聞いたねぇ」と何度も同じ質問をしてくる。これが現実だ。

■世界の一部の金持ちが、高級なものの価値を決める

バンドをやっている20代半ば、よく遊びに行っていた神奈川の友人・市川氏がいた。20代半ばの頃から30代半ばの彼が亡くなるまでの間、車屋だった彼から常にクルマを買っていた。ディーラーからではなく個人である彼からクルマを買っていたのは、彼のこだわりがクルマに対してはもちろんのこと、他のことに対しても素晴らしく繊細で、彼の物事に対する姿勢に惚れたからだった。めちゃくちゃデカい屋敷に住み、屋敷の入口には売り物のクルマを並べ、整備から改造まで一人ですべてやってのける知識と技術、そして強いこだわりを持っていた。夜中仕事が終わってから彼の屋敷に向かう東名高速のドライブもまた、当時のボクには貴重な憩いの時間だった。彼の屋敷で寝落ちし、朝の5時半にそのまま東京の現場に向かうこともザラにあった。それほど、彼と過ごした時間は貴重で彼から受けた影響は大きかった。

そんな彼のこだわりはクルマだけではなく、コーヒー、酒、音楽、映画と幅が広く、彼とはよく映画談義を交わしていた。「コーヒー飲む?」と笑顔で言うと、そこからコーヒーを出してくれるまでの間、その豆はどうやって作られたのか、その豆の特徴など背景を細かく説明しながら最後にカップを並べ優しくコーヒーを淹れる。そして、「はい、どうぞ」とここまでが長編CMを見ているかのような、まるでバリスタと話しているかのような感覚だ。話の引き込み方が非常に上手い。彼から学んだことは知識だけではなく、その独特の話し方、雰囲気作りがいかに大事かということだ。映画の話をし始めると、監督、出演している俳優の名前をすべて覚えているだけでなく、その俳優の他の出演作品もすべてエッセンスとして盛り込んでいく。彼の話の引き込み方に感動し『覚える』という意味、知識を物にするという努力と覚悟はこういうことなのだと気づかされた。映画の話を一つするにしても、作品のタイトル、俳優の名前だけでなく、『どれだけ感動したか』を誰かに話すためには、伝えるためのドラマの組み立てができないとダメなんだと思うようになった。単純に、「あの人」「あの作品」では説得力に欠ける上に話が薄っぺらい。当時、スマホなどなく調べるのもいちいち大変な時代だ。そもそも『あれ』『これ』『あの』『その』では自分が感動したというドラマを組み立てることもできない。話を組み立てるために必要な『覚える』という基本行為には、さらに専門用語も理解する必要がある。その背景までも深掘りするならより覚えることは増えてくる。次々に出てくる新しい言葉に苦しみながらも、『覚える』ことがいかに本気の覚悟と実行力が必要であるかを実感した。彼との出会いから、常にどんなことにも深さを意識し追求するようになっていった。今のGACKTを形成する大きなきっかけとなった。

ワインに話を戻すが、価値・価格には色んな要素があり、美味しい美味しくないはもちろんのことだが、希少性・ブランディング・設備や作り方・設備投資さえも価値付けの対象となる。世の中の大多数の価値観で高級なものの価格が決まるのではなく、世界の一部の金持ちがその価値を決める。彼らが価値・価格を上げる。だから高くなる。知識のない者たちは「なんでこれがそんなに高いんだ!」と言う。彼らにとっては世の中の大多数が[高い物]という共通認識を持てば、『これは高い物だ』と受け入れるのだが、認知されていないものであれば『これがなんでそんなに高いのかまったく理解できない!』『無駄』『無駄遣い』となる。つまり、これは[知識=価値]とも言える。[知識を増やす=その物の詳細や価値を理解できる能力を手に入れる=自身の能力が上がる=自身の価値が上がる]と言っても過言ではない。知識を増やすためには多くの時間を費やすが、その対価は想像よりも遥かに大きいということだ。

知識は誰にも奪われることのない財産。知識を増やすことを軽んじている者も多いが、死ぬまで知識を増やすことにもっと貪欲になるべきだろう。自分自身の価値が上がっていくことだと認識できれば、勉強であれ、研究であれ、知識を増やす行為がとても貴重な時間となる。そして人との出会いは、人生をより豊かにする大きなきっかけとなる。

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