「OMO」に関する調査を実施(2023年)~OMO施策が生み出す顧客視点の魅力的なCX(顧客体験)、BtoC事業者による生き残り戦略の一手に~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のOMO施策への取り組みの実態を調査し、参入企業の動向、将来展望等を明らかにした。

1.調査結果概要

BtoC 市場において、商品やサービス自体で競合と差別化を図ることは難しくなってきており、質の高いCX (顧客体験)の提供が差別化の重要な要素となっている。競合に取り残されないようにするために、顧客の購買情報を基にした個人に適する商品の提案、決済・ポイントサービスの拡充等、顧客に適した魅力的なCXを体現するマーケティング手法としてOMO(Online Merges with Offline)に注目が集まっている。本調査におけるOMOとは、オンラインとオフラインの双⽅の強みを融合させ、両者間の垣根を無くしたシームレスなサービス提供により、購買行動だけでなく顧客のあらゆる体験や利便性を高めるためのマーケティング手法を指す。

ただし、各企業(BtoC事業者)がCX向上に取り組む中で、顧客は利便性の高さが担保されていることをもはや当然のこととして捉えている。そのため、BtoC事業者にとってはCX向上の取り組みにより大きなメリットを生み出すというよりも、顧客の選択肢として残り、「脱落しない」ためにOMOに注力する必要性が高まっている。今後も、顧客の損失を防ぐためにその必要性が高まるものと考えられる。【画像挿入位置】

2.注目トピック~OMO関連システムに求められる要素とは

BtoC事業者がOMO施策により顧客に適したCXを体現するためにはデジタル技術を用いたシステムが不可欠であり、今後OMOに取り組む企業の増加に伴い、関連システムへのニーズも高まるとみる。

ただし、既にOMOに取り組んでいるBtoC事業者においては、新しいシステムの導入に伴い業務負担が増加することで、従来の顧客に提供するサービスの品質低下などマイナスの影響を及ぼすこともある。

そのため、導入により実店舗販売員等の業務負担が増加しないこと、システムの操作やシステムを用いた効果測定が容易であること、実店舗販売員によるSNS投稿などのコンテンツがきっかけで生じた売上実績データを活用・評価し、販売員のモチベーション向上に繋げられること等、CX(顧客体験)向上以外の付加価値を持つシステムが、OMO に取り組むBtoC 事業者から高く評価されている。

従って、OMOの実現に必須といえる顧客視点の体験創出を支えながらも、業務の効率化や課題解決も可能という複数のニーズを捉えたシステムがベンダー事業者に求められている。顧客視点の体験創出は、企業の利便性ではなく顧客の利便性を高めるためのサービスを指し、実店舗でのアプリを活用した在庫位置情報検索サービスや、顧客の携帯電話で実店舗へ在庫の取り寄せを行うサービス等を指す。

© 矢野経済研究所