八代亜紀さんが愛した故郷のローカル線…「死後も声が生き続ければ」…車窓の風景や特産品、何千通りの文章を録音

2004年8月、肥薩おれんじ鉄道で阿久根市から薩摩川内市へ向かう車中で参加者と東シナ海の景色やゲームを楽しむ八代亜紀さん

 2023年12月30日に73歳で死去した歌手八代亜紀さんは、出身が熊本県八代市だったことから同市と鹿児島県薩摩川内市を結ぶ肥薩おれんじ鉄道と縁があった。新曲のプロモーションや熊本地震の復興支援を通して古里の鉄道振興に貢献した。

 04年の九州新幹線の部分開業時にJR新八代駅の一日駅長を務めた。おれんじ鉄道では同年、当時の新曲「不知火(しらぬい)酒」のキャンペーンと利用促進を兼ねたイベント列車に乗車した。

 観光列車「おれんじ食堂」では22年4月から、八代さんの音声をもとに自動生成されたAIアナウンスで沿線の風景や特産品を紹介。「地震や大雨、新型コロナウイルスでつらい思いをする古里を元気にしたい」という八代さんの思いを形にした企画だった。

 営業戦略室長の菊川実さん(51)は「新八代駅を出発しアナウンスが流れると乗客からは拍手が起こっていた」と振り返る。「地元の地名がついた名前で私たちにとって近い存在。とても残念」と悼んだ。

 所属事務所のミリオン企画(東京)によると、八代さんは「自身がいなくなっても声が生き続ければ」と何千通りの文章を読み上げて録音していた。活用方針について担当者は「本人の遺志に基づき、作品や声を後世に残していきたいとスタッフ一同思っている。どのような形がいいか検討していきたい」と話した。

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