政治刷新本部

 「さっしん」を手元の辞書で引くと〈悪いところを改めて、全く新しくすること〉と明快な語義がある。一番に載っている用例は〈政界の刷新〉だが、「政治」以外の場面にはあまりこの言葉の使い途がなさそうに思えるのは気のせいか▲昨年末から派閥のパーティー裏金問題に揺れている自民党が昨日、総裁直属の「政治刷新本部」を設置することを決めた。本部長は党総裁の岸田文雄首相、最高顧問を首相経験者2人が務める▲来年で結党70年を迎える自民党と“刷新”は縁が深い。1962年には、当時の池田勇人首相の政治姿勢に反発した福田赳夫氏が派閥の解消と党の近代化を唱えて同志を募り「党風刷新連盟」を結成している▲以降の経過を詳述するには行数が足りないが、「連盟」に集った議員の一部が福田氏をトップに担いだのが福田派の始まりで、これが裏金問題の震源地になった安倍派の“源流”…皮肉な巡り合わせを思う▲さて、今回の刷新本部。岸田本部長以下“オールスター級”の陣容は、ひとまず首相や党の危機感を示すものと受け止めておきたいが、刷新の“実”は上がるだろうか▲「信頼回復に向け努力しなければならない」「最優先課題」「厳しい目が注がれている」…本部長の決意表明には目新しさや具体性が見つかりにくい。(智)

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