輝く大判・小判から藩札まで…「お金」に映る時代模様 姫路・歴博 日本と中国の600点展示

江戸幕府が発行した小判。手前から奥にかけて時系列で展示し、次第に小さくなっていったことが分かる=姫路市本町

 誰もが使う「お金」をテーマに、各時代の社会や経済のあり方を考える企画展「古銭・古札を楽しむ」(神戸新聞社など主催)が、兵庫県姫路市本町の県立歴史博物館で開かれている。神戸の収集家が寄贈した「菅野コレクション」など館蔵品を中心に、日本と中国の古代から近代までのコイン、紙幣約600点が見られる。(上杉順子)

 会場は4部構成。①前近代日本の貨幣②兵庫県域の近世古札③近代日本の貨幣④中国の貨幣-の順に展示している。

 「前近代日本の貨幣」では時代劇でおなじみ、江戸幕府が発行した大判・小判の輝きに目を奪われる。小判は1601年の慶長小判以降、全10種中9種が時代順に並ぶ。次第に小さくなるのが一目瞭然で、これは金含有率や重量を下げて差益を得る「出目(でめ)稼ぎ」が主な理由だったという。

 藩や旗本はもちろん、寺社や鉱山、町村、さらには私人が発行した札類が見比べられるのが「兵庫県域の近世古札」コーナー。現在の兵庫県域は紙幣類の使用が盛んだったといい、どのような共同体に通貨が介在できる信頼関係が成立していたのかが分かる。

 藩札の中でも特徴的なのは、姫路藩札の「木綿切手」だ。江戸時代後期の名家老とうたわれた河合寸翁(すんのう)が発案し、藩特産の木綿の専売制に合わせて発行された。木綿の対価として農民への支払いに使われ、藩は江戸など藩外で木綿を販売する際に小判を受け取って「現金」をためることができるため、藩財政の再建に大きく寄与した。後に、今年から1万円札の肖像になる若き日の渋沢栄一がこの仕組みを手本とし、同様の札の発行に尽力したという。

 「近代日本の貨幣」では、戦時中の粗悪な紙幣や軍隊が占領地で発行した軍票、戦後の記念硬貨などを展示。「中国の貨幣」コーナーは、古代の銭から孫文の肖像が入った中華民国の銀貨まで、さまざまな貨幣がそろう。

 小さい展示物には拡大鏡を設置しており、刻印や印刷内容を細部まで観察できる。前田徹学芸員は「日本と、その源流となった中国のお金の流れ、貨幣に刻まれた文字や文様の細かな違いが持つ意味を楽しんでほしい」と話している。

 2月18日まで。午前10時~午後5時。月曜(振り替え休日の場合は翌日)休館。一般500円、大学生350円、高校生以下無料。県立歴史博物館TEL079.288.9011

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