意識失った運転手、この4人がいたからこそ 助手席の女性がブレーキ、間一髪で衝突回避の救命劇 小野

感謝状を受けた(右から)長谷川道子さん、澤口浩幸さん、山本明宏さん、藤本剛さん=小野市消防本部

 車を運転中の70代男性が、突然意識を失った。異変に気付いた助手席の女性は必死にハンドルとブレーキを操作して車を停車。近くにいた男性3人は、心臓マッサージ(胸骨圧迫)で運転手の命を救い、後続車の交通整理に当たった。突発的な事態に冷静に対処し、事故回避に尽力した男女4人に、兵庫県小野市消防本部の藤原靖消防長から感謝状が贈られた。(坂本 勝)

 4人は天神町の長谷川道子さん(42)と、榊町自治会長の藤本剛さん(55)、副会長の澤口浩幸さん(54)、前会長の山本明宏さん(59)。

 昨年12月6日。長谷川さんは修理のため車を預けた後、板金会社社長の男性が運転する軽乗用車の助手席に乗っていた。

 午前9時35分ごろ、同市榊町で男性が首を傾け、意識を失ったことに気付いた。カーブに差しかかっており、助手席からハンドルを切り、懸命に脚を伸ばしてブレーキを踏んだ。道路脇のごみステーションにいた藤本さんら3人との衝突をかろうじて避け、約20メートル行き過ぎて車道中央付近で車を停止させた。車は3人の約1メートル脇を通り、セメント製の縁石をこすっていた。

 3人は停止した車に駆け寄った。男性はいったん意識が戻り、後部座席にいた妻と運転を代わろうとしたが道路に倒れ込んだ。藤本さんは119番通報するとともに、消防車が到着するまで約10分間、道路で胸骨圧迫を続けた。澤口さんと山本さんは後続車に迂回(うかい)するよう伝えて、二次災害を防いだ。

 男性は駆けつけた消防隊員に自動体外式除細動器(AED)で電気ショックを施され、救急車内で意識を回復した。心筋梗塞のため北播磨総合医療センターに入院し、無事退院。「迅速な救命活動で命を助けてもらった」と藤本さんらに感謝して回ったという。

 長谷川さんは「衝突しなくて良かった。『よくやったな』と自分でも驚いている」と振り返った。

 藤本さんら3人は消防団OBで、心肺蘇生法の訓練を受けていた。「男性が目の前で倒れ、何とかしなければと無我夢中だった。携帯電話をつないだまま、男性の胸を押すタイミングについて消防の指示を仰いだ」と藤本さん。澤口さんと山本さんは「4人がそろっていなかったら事態は変わっていたかも。救命率を上げるため、多くの人に市民救命士講習会を受けてほしい」と強調した。

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