身体の不調を治すときに、病院や治療院では多くの場合、診療や施術のみがほとんどです。
ありがたいことに、身体の不調がめったにない筆者には遠い存在。
そんな筆者でも気軽に行ける、新しいスタイルの治療院が倉敷市浜ノ茶屋に2022年12月25日に誕生しました。
明るくて開放的なカフェスペースを備え、患者以外の一般のひとも利用できるとのこと。
コミュニティーの場としても利用されている「鍼灸と整体 じゅこうさん」を取材しました。
鍼灸と整体 じゅこうさんとは
倉敷駅から車で約7分の街なかにある鍼灸と整体 じゅこうさん(以下、じゅこうさん)。
施術歴35年の夫婦が経営しています。
院長は鍼灸師の木下智子(きのした ともこ)さん、副院長は柔道整復師や鍼灸師の木下広志(きのした ひろし)さん。
智子さんは、柔道整復師で整骨院を営む父の影響からか、東洋医学に興味を持ち、鍼灸師になったそうです。
広志さんは、倉敷市と総社市に4施設を構える寿晃(じゅこう)整骨院の総院長も務めています。
今は若い世代に寿晃整骨院を任せ、じゅこうさんをオープンしました。
朗らかな笑顔で出迎えてくれるお二人が営むじゅこうさんの雰囲気は、治療院というよりまるで“家”のよう。
明るく温かみを感じられるアットホームなようすを紹介します。
じゅこうさんのようす
木の温もりがある、2階建ての建物はどの場所も落ち着く造りに。
ドアを開けた瞬間から居心地の良さを感じられます。
施術室
1階に2部屋、2階に1部屋の施術室があり、それぞれ完全個室です。
個室だと安心して施術が受けられそう。
2階は広めの部屋で、絵画が飾られていました。
ゆったりと落ち着けそうです。
施術は、さまざまなコースがあります。
▼金額は税込5,500円。
- 腰痛コース
- 関節痛コース
- 慢性疼痛(まんせいとうつう)コース
- 頭痛・肩こり解消コース
- 女性ならではコース(生理痛、更年期障害など)
- 自律神経調整コース
- 筋膜リリース療法
- 小児・夜尿症コース(税込1,500円)
2階のようす
2階には施術室以外に、飲食スペースや団らんできる席が。
フードやドリンクを2階でも食べられます。
ハイカウンターでゆったりとするのも良さそう。
おしゃべりを楽しむなら窓際の席もあります。
緑に囲まれてゆったりできる席です。
階段側の本棚には本がずらり。
広志さんの蔵書で、医療系のほか、カフェや哲学など、幅広いジャンルのラインナップです。
カフェスペース
1階はカフェスペースを広く設けており、奥には施術室が。
カフェスペースには2階と同じように、カウンター席とテーブル席の両方があります。
ひとりでも複数人でも訪れやすい造りです。
カウンター席の頭上は吹き抜けになっていて、とても開放的。
圧迫感がなく、居心地の良い空間です。
モーニング
カフェではドリンクとモーニングを提供しています。
お客さんの要望から生まれたというモーニング。
提供時間は午前9時から午前11時としているのですが、「要望があれば昼間もお出しできるかも」とのこと。
▼ドリンクメニューはいずれも税込500円
- コーヒー(ホットまたはアイス)
- 紅茶
ドリンクにプラス100円(税込)でモーニングセットを付けられます。
トースト、ゆで卵、野菜スープが100円で食べられて、とてもお得な内容です。
スープには、食物繊維を意識して5種類の野菜を使用し、卵でタンパク質を摂取。
身体に良いものを、と考えられたメニューです。
施術とカフェサービスを提供するじゅこうさん。
じゅこうさんを切り盛りする院長の木下智子さんと、副委員長の木下広志さんに話を聞きました。
夫婦でじゅこうさんを営む院長の木下智子(きのした ともこ)さんと、副院長の木下広志(きのした ひろし)さん。
お二人に店を作った経緯や想いなどを聞きました。
じゅこうさんを始めたきっかけ
──寿晃整骨院を経営されていますが、なぜじゅこうさんも始めたのですか?
木下広志(敬称略)──
寿晃整骨院は怪我であれば健康保険が使えます。
保険対象のかたは整骨院へ、それとは違う客層がじゅこうさんの対象です。
通常の医療から取りこぼされてしまうかたや、他の治療に物足らなさを感じている患者さんが来られています。
ずっと腰痛や頭痛、肩こりがある慢性疾患は保険の対象外なので、そういったかたも来られますね。
整骨院でカバーしきれないところを、じゅこうさんで補っている感じです。
薬は使わず基本的に手で施術をおこないます。
院長の妻は東洋医学で身体のエネルギーの流れや経絡(けいらく)がわかるよう、昔から修業していまして。
経絡とは、気や血の通り道で、全身に張り巡らされている。
エネルギーの流れがわかると、うつ病や自律神経の調整ができます。
たとえば「腰が痛いからレントゲンを撮ります」「薬を処方します」とするのが西洋医学。
一方で東洋医学は単に痛い部分だけを診るのではなく、仕事の疲れから自律神経が不調となり、痛みが出ているかもしれないと他の要因も考えます。
きちんと自律神経の調整をしないと症状の緩和ができません。
いくら鎮痛剤を飲んでも、そのときは治まるけれどすぐ痛みは復活します。
われわれは身体全体を診て治す、といった感じですね。
──もともと東洋医学を目指していたのですか?
木下広志──
親が同じ職業をしていまして、私の母が鍼灸師で、妻の父が柔道整復師です。
高校に行く頃には自然と、「東洋医学の道を進むんだろうな」って思っていました。
木下智子(敬称略)──
私の父がもともと警察官だったんですが、柔道整復師の資格を取って整骨院を開業したんです。
東洋医学に触れる環境にいたので、その頃からこの分野を意識していました。
木下広志──
ただ西洋医学を否定とか批判とする立場ではありません。
過去に私は整形外科で4年間ぐらい修業させてもらい、西洋医学の医療を経験しました。
私たちの患者さんでも西洋医学が必要だと思ったら、すぐに紹介しています。
探求が尽きない木下広志副委員長
──じゅこうさんのブログに「死ぬまでにやりたい100個のこと」と書かれていましたが、100もあるんですか?
木下広志──
100個あるんですが、100に収まっていないかもしれません。
木下智子──
次から次へとやりたいことができているのよね。
本もすごく好きで枕元に雪崩になるくらい本を積んでいます。
本を読んでいるうちに新しい興味も生まれて、どんどん世界が広がっているようです。
木下広志──
1個消化しても10個ぐらい生まれるので、たぶん100のままかもしれないです。
この100個のうちの一つが岡山大学経済学部の夜間主コースで勉強すること。
50歳から始めました。
大学に通っている間にアメリカに8か月語学留学へ行って、卒業した後に大学を続けて。
それから大学院に進み、今年(2023年)の3月に卒業しました。
修士論文も書きましたよ。
岡山大学で勉強した理由は、社会保障論を学ぶためです。
整骨院では健康保険が使えるのですが、全国的に不正請求が問題になって。
整骨院をやっている側からは、健康保険を使うのはメリットがあり、国に還元できていると自信を持っていました。
安く、医療を提供していると思っていたけれど、不正請求があるとその考えに自信が持てなくなって。
自分たちの価値をもう一度捉え直すためにも、社会保障について学ぶことにしました。
じゅこうさんが目指すもの
──じゅこうさんをどのように利用してほしいですか?
木下広志──
毎日のように来てくださるひともいます。
私がここを立ち上げたのは、町内のいろいろなひとが集まれる場所を作りたかったから。
昔は商店街なんかに、地元のひとが集まっておしゃべりできるような場所がありました。
モーニングやカフェをしながら、お客さんが「腰が痛い」という話になって。
筋力の問題だから、その場でスクワットを30回ぐらいして、毎日続けてもらったら良くなったんですよ。
じゅこうさんを始めるときから、このカフェスペースの構想はありました。
私の母がしていた鍼灸院では、患者さんとの距離が近くて、治療後に「顔色が良くなったね。ちょっとおにぎりでも食べて帰り」とか言いながら運営していました。
母の治療を見ていて、ちょっと踏み込んだ部分までケアできるような空間が作れたら良いな、そこでちょっと飲食もできればと思っていました。
じゅこうさんがコミュニケーションの場となればうれしいですね。
自分もコミュニケーションをするし、このような場を求めて来られるかたの受け皿になるようにしたいです。
木下智子──
私は患者さんから「施術を受けると良くなった」とか「楽になった」という喜びの報酬のほうがお金より大切ですね。
喜ばれている患者さんを見て、私のほうも元気をもらっています。
自分の援助がひとのためになるならうれしい、と思いながら仕事をしています。
おわりに
じゅこうさんを取材するまで、治療院では施術を受けるのみだと思っていました。
しかし、じゅこうさんでは患者以外の施術を受けないひとも立ち寄れるカフェスペースもあります。
仕事や恋愛の相談をされることもあるとのこと。
コミュニケーションの場や心のよりどころとなっているようです。
取材後に雑談をさせてもらいましたが、そのときも筆者の話を笑顔いっぱいに聞いてくださいました。
誰かに話を聞いてもらうだけで、気持ちが良くなり楽しいと感じます。
取材時には、笑顔いっぱいで楽しそうに木下夫婦と話す常連客もいました。
きっと「木下さんにまた話を聞いてもらいに行こう」と思い、通うかたも多いのでしょう。
施術や会話を通して元気を与えてくれるじゅこうさんに、気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。