巻き網船来て 船員に銭湯入浴券配布 八戸港(青森県)水揚げ伸び悩み受け

県外船の船員向けに配布した八戸市浴場組合の「共通入浴券」
サバの水揚げ作業を行う巻き網船の乗組員ら=2023年12月28日、八戸市の八戸港第1魚市場

 八戸港に活気を取り戻そうと、青森県八戸市の水産関連団体が本年度、同港に水揚げする巻き網船の船員に対し、市内銭湯の入浴券を配布する取り組みを行っている。水揚げ誘致の一環で、銭湯関係者も「県外船が長く港にとどまれば、業界の活性化にもつながる」と期待を寄せている。

 入浴券は1セットが480円分の10枚つづりで、市浴場組合(大館光雄組合長)の銭湯11カ所(2023年12月からは10カ所)で使用できる。市水産事務所や同市の卸売業・八戸魚市場(うおいちば)、同港廻船(かいせん)問屋組合の関係者でつくる「八戸漁港漁船誘致推進委員会」(川村嘉朗会長)が本年度から配布を始めた。

 八戸港の水揚げが伸び悩む近年、市水産事務所と魚市場はそれぞれ巻き網船の船会社に出向き、八戸港への水揚げを要望してきた。22年5月の同委員会発足後は両者が協力し、船会社がある九州や関東など約20地域を訪問してきた。

 入浴券の配布事業は、こうした巻き網船の誘致活動の一環。費用は推進委が負担する。本年度は廻船問屋を通して、同港に入港した巻き網船に計40セットを配布したという。誘致効果を検証しながら、今後も継続する予定。

 同魚市場漁船部の工藤亮人部長は「昨年は6、7月にマイワシが豊漁だったので、本当はその時期に(入浴券を)配り始めることができればよかった。来季はもっと早く提供できるようにしたい」と話した。

 一方、市浴場組合事務局の深川幹司(よしもり)さん(52)は「10年ほど前は、巻き網の時期になると県外の漁師がグループでよく入浴に来ていたが、最近は不漁のためあまり見かけなくなった」と説明。その上で「入浴券がきっかけになり、県外船の乗組員の方々に長く港にとどまってもらえたらうれしい。漁師の客が増えることで、業界も盛り上がれば」と期待を寄せる。

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