アッシュ旅立ちました~第82回~

アッシュ旅立ちました~第82回~

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里親募集型の保護猫カフェをご存知ですか? そこは、様々な事情で保護された猫たちが『ずっとの家族』との出会いを待っている場所。 東京の下町、人形町にある「保護猫カフェたまゆら」 ここには伊豆諸島の御蔵島から来た元ノネコたちが暮らしています。 今回は闘病生活に終わりを告げたアッシュのお話です。

アッシュは2019年1月5日にたまゆらにやって来ました。

御蔵島出身の元ノネコ第一号です。

たまゆらに来たばかりのアッシュはとても愛想が良くお客様全員に甘えに行くような猫さんで、「営業部長が来た」と思ったものでした。

しかしそれも束の間、自分から行かなくてもお客様の方から撫でに来てくれる、と学習したアッシュはすっかり動かなくなり、そして今のアッシュが出来上がったのです。

そんなアッシュですが、たまゆらに来てもうすぐで1年という2019年12月に糖尿病が発覚しました。

きっかけは多飲多尿。

これはきっと腎臓病に違いないと病院で尿検査をお願いしたところ、腎臓ではなく糖尿ということが判明し、ここから長い闘病生活が始まりました。

猫の糖尿病は人と同じようにインスリン注射をします。

幸いたまゆらの近くに糖尿病にとても強い病院があり、そちらにお世話になることで普通では考えられないくらいのインスリン量が必要だったアッシュも最後まで不安なく闘病生活を送ることが出来ました。

2020年4月にはてんかんも発症していたのですが、それも同病院で適切な診断をしていただき、おかげでその後一度も発作をおこすことなく生活できたのは本当にありがたいことと感謝しています。

2021年7月には口内の炎症がひどくお水を飲むのも辛そうにしていたため全抜歯をしました。

糖尿病で麻酔のリスクが高かったため、歯科に強い病院で麻酔科医の先生に管理してもらいながらというまるで人のような手術。

麻酔をかけて口の奥を見てみたらひどい炎症をおこしていて、普通はこのレベルだとごはんを食べられずにガリガリに痩せて来院するんですよ、と言われ、それまで全くご飯を残したことのないアッシュの強さに恐れ入りました。

その後数年は血糖値は高いものの体調は落ち着いていて、平穏な毎日を過ごしていました。

お腹がすくとお客様の肩に乗りたがって、毎日いろいろな方に抱っこしていただいたのもこの時期です。

抱っこされると何故かキリっとしたドヤ顔になるのが面白くて、あれは何を考えていたのかなあと今でも不思議です(笑)

そして半年前の2023年6月。

どうもアッシュの調子が悪そうに思いかかりつけの先生に相談をし、ちょっと遠方でしたが大きな病院で徹底的に検査をしていただいた結果、拘束型心筋症という診断が。

場合によっては急に亡くなる可能性もあるということで、それまでの穏やかな生活が一転、気の抜けない毎日になりました。

それまではインスリンと抗てんかん薬だけだったのが心臓の薬が増え、副作用で体調を崩して入院し、入院で体力が落ちてまともに歩けなくなるという悪循環。

毎月往診でマッサージに来てくださっている獣医さんに相談したところ、アッシュにあった無理のないリハビリのメニューを考案していただいて、おかげで一時は小走りできるくらいまでに回復したのです。

そして2023年12月。

それまでもちょくちょく体調を崩すことがあったのがここ3か月ほどは安定していたのですが、明らかに様子がおかしいので病院へ連れて行ってそのまま入院。その日の先生からのご連絡では、心臓の機能が限界に近く正直いつ亡くなってもおかしくない状況とのことでした。

数日後にいったん落ち着いて退院でき、追加された薬が効いてくれたのかちょっと持ち直した感じはありました。

たまゆらが年末年始の休業に入った12月30日の夜くらいから徐々に食欲がまた落ち始め、年始は病院通いが続きました。

日に日に調子が悪くなるのが目に見え、休業明けの1月5日、奇しくもたまゆらに来てちょうど5年のこの日にとうとう明らかに呼吸がおかしくなって病院へ駆け込みました。

この日はもう一人のスタッフが夜も付き添える日で、おかげで二人でアッシュを看取ることが出来ました。

先生のお話では先に意識がなくなってさほど苦しくはなかっただろうとのこと。

どんな形で亡くなるにしろ、なるべく苦しい時間は短くあってほしいと常に願っていたので先生のその言葉はとてもありがたかったです。

たまゆらに居た時はこれ以上ないくらいマイペースに思えていたアッシュでしたが、最後旅立つタイミングはお見事でした。

スタッフ二人で看取れる数少ない曜日と時間帯だったこと、年末年始の帰省から皆さんが戻って来ていてしかも土日だったこと、年末年始ペットホテルで滞在していた猫さんがちょうどお帰りになり、新しい猫さんが入居する直前のバックルームが使える唯一の日であったこと。

全てアッシュの計らいだったような気がしてなりません。

アッシュとのお別れにはたくさんの方が来てくださいました。

皆さまからうかがうアッシュとの思い出エピソードの多さに、アッシュがいかにお客様に愛されていたか改めて実感いたしました。

毎度恒例ではありますが、看取っていただいた病院で大きな箱を用意してくださったにもかかわらず、お花にすっかり埋もれてしまったアッシュです。

いつも寝ていて、自分からは何をすることもなかったアッシュですが、アッシュのいないたまゆらはなんだか火が消えたように静かで寂しいです。

5年間お世話をさせてくれてありがとう。

闘病生活はいろいろと辛いことも多かったと思うけど、全て淡々と受け入れてくれたからお世話は本当に楽でした。

アッシュじゃなかったら果たしてここまで出来ただろうか、と思うほどです。

今ごろは向こうの世界で友達たちと再会していることでしょう。

猫たちに慕われていつも猫に囲まれていたアッシュだから、向こうでもみんなで猫団子になるのかな。

これまで大変だった分しばらくのんびりして、気が向いたらまたこっちの世界に帰ってきてね。

気が向かなかったら、私が行くまでそっちで待っててね。

たまゆらに来てくれてありがとう、アッシュ。

文・今場奈々子(たまゆら店長)

保護猫カフェたまゆら

営業時間
※ホームページにてご確認ください

平日 13時~16時 17時~20時
土日祝 13時~17時(最終受付はクローズ40分前)
定休日:毎週火曜

東京都中央区日本橋人形町2-7-2 大江戸アクセス3階
TEL:070-8509-5639

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