「FFXIV ファンフェスティバル 2024 in 東京」プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏へのインタビューを発表内容も振り返りつつお届け!

2024年1月7日(日)と8日(月)に東京ドームで開催された、「ファイナルファンタジーXIV」(以下、FF14)のリアルイベント「ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル 2024 in 東京」。ここでは、プロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏へのインタビューの様子をお届けする。

■クルルがピクトマンサーになったのは“みんなと一緒に戦わせてあげたい”想いから

――ひさびさにリアルでファンフェスを開催して世界を巡り、Day1までを終えた率直な感想を教えてください。

吉田氏:リアルで開催できて、世界中のヒカセンたちと直接お会いできるのがすごく嬉しかったです。これだけたくさんの方が遊んでくださって、遠いところからも来てくださって、盛り上がってるっていうのは“開発者冥利につきる”と言うところがありますので、と運藤に喜ばしいことだと思っています。

それと同時にハードだったコロナ化からここまでこぎつけられたのは、世界中の医療従事者の皆さんが献身的に状況を打破しようとしてくださったからだと思っているので、改めて感謝の気持ちも込めつつファンフェスを盛り上げていこうって言う気持ちでやってきました。新生10年目と節目にこれだけ大きな場所でファンフェスを開催できたことも、開発者人生で最高の思い出になりました。

――新ジョブとしてピクトマンサーを選んだ理由を教えてください。「FF6」に登場するリムルとクルルのイメージの近さもあったのでしょうか?

吉田氏:ストーリー上の都合もあるのですが、じつはそれぞれ別の事象です。クルルというキャラクターの成長や彼女の心情を考えた時に、本当は暁のメンバーと一緒に肩を並べて戦いたいと思っているんじゃないかと考えていたので、いずれかのタイミングでジョブチェンジはするつもりでした。「暁月のフィナーレ」ではヴェーネスとシンクロするという役回りがあったので、やるならこのタイミングかなと。なので、クルルが今回ピクトマンサーになったのは、前線に出してあげたいという気持ちがあったからですね。

ピクトマンサーに決めたのは、まずロールから考えています。お客様に遊んでもらうときにどういったロールを入れることによって全体が盛り上がり、よりマッチングが早くなり安定して楽しくプレイできるようになるのかなっということを考えているので、いつもロールから考えて決めていくことにしています。ただ、DPS(攻撃を主体とするジョブ)はいずれにせよ人気なので実装する2つのジョブのうち片方はDPSを外せないんです。

これまで、タンクとヒーラーはこれまでしっかり実装できていて、数的にはちょうどいいバランスになっているので、今回はどちらもDPSにしようということになりました。当然ですがヴァイパーが近接なのでもう片方は遠隔、数が少ないのがキャスターなのでキャスターだろう、というところから考えて面白さや絵的な魅力、期待に応えられるのはどれかと候補の中から絞っていきました。

もちろんすぐにピクトマンサーに決まったわけではなく、有力候補の1つとして挙げられていて、ストレートにその絵を描くということが攻撃にどう置き換えられるのかという検証をしてアイデアを出し合って。そうして、形にしていけそうだなと決まったときに、じゃあクルルなんじゃないかって繋げていきました。結果的にクルルとピクトマンサーがシンクロしていて、最初から計画していたことだと感じていただけたのだとしたらチームとしてうまくやれている証拠なのかなと思います。いろいろな物語の種や薄い導線っていうのを、みんなで手繰り寄せて繋いで太い一本のロープにしていく作業を繰り返してきたのでこのあたりはチーム力の賜物だなと思います。

■ピクトマンサー

「黄金のレガシー」から実装されるジョブ。絵筆に似た魔具「筆」を武器に持つ「ピクトマンサー」は、練り上げた魔力を「絵の具」に見立て、溢れる想像力を具現化して戦う。描いた生物や武器、風景すらも具現化する、絵画魔法の使い手でバフを持つキャスターとなっている。FFシリーズでは「FF6」で登場した。初期レベルは80で、ジョブクエスト解放場所はグリダニアとなっている。

――新たに実装されるロスガル女性の新NPCのウクラマトについて、開発時にどのような点を重視しましたか?

吉田氏:「FF14」の新たな門出というのもありますし、これまでにない拡張の仕方をしたい、そしていろいろな側面があることをプレイヤーのみなさんに見せていきたいと思っていました。今回は“主人公が主人公じゃない”というか、王位継承レースの助力なのであくまでオブザーバーに近いんです。そのときに手助けをするキャラクターが魅力的じゃないと「こんなやつもういいよ」ってなってしまうので、ウクラマトをどう魅力的に描くかというところから構成をはじめていきました。

■ウクラマト

これまでの冒険の舞台である三大州の外であるトラル大陸から来たロスガルの女性。詳しいことは不明だが、どうやら王女らしい。「黄金のレガシー」の物語がはじまるきっかけとなるそうで王位継承レースへの助力を光の戦士に求めてきたようだ。1月16日に公開されるパッチ6.55のメインストーリーPart2で登場予定。

ロスガルの女性を出してほしいというお声を多くいただいていて、その約束を守っていきたいと思ったときに、グラフィックのアップデートもあって本当にできるのかというのは思っていたんですが、開発チーム、とくにグラフィックスが献身的にやりますと言ってくれたんです。そうであれば、ウクラマトはロスガルの女性にして、キャラクターの魅力や考え方、集落との関わり深く描けるようになるのでそういったところ合わせて作った形になります。これまでにないキャラクターで、あえて最初から完璧ではないキャラクターなのでぜひ彼女の成長を見ていただけると嬉しいです。そこを見ていただけるとロスガルの女性とが人格を伴ったときに、そういう魅力があるのかというのがわかっていただけるんじゃないかと思います。

■ロスガル女性

イルサバード大陸に由来する民族で、男女の出征比率に極端な偏りがあり、女性は男性に比べて少ない。肉体は強靭かつしなやかで、優れた指導者として才能を発揮してきた。「黄金のレガシー」の舞台であるトラル大陸においてはシュバラール族と呼ばれ、ヤクテル樹海に本拠地を置いている。

――「黄金のレガシー」のメインストーリーは二部構成になっているとのことですが、途中からまったく違うストーリーが展開していくのでしょうか?

吉田氏:二部構成とは言ったものの、通して1つの物語になるようになっています。プレイしたあとに「二部構成、あぁ確かに!」となるんじゃないかなと。大きな山が来る中で、ここが分岐点だったというポイントが来ると思うので、ちょっとその1つの物語を進めていく中で様変わりしてく価値観とか様々なキャラクターたちの葛藤と同時に世界とか命運みたいなところに対して、急なハンドルの切り替えしみたいなところを今回チャレンジしています。ニュアンスで申し訳ないですが、新しい「FF14」の側面をお見せできるんじゃないかなと思います。不安もありますが期待の方が高いので、次なる「FF14」の展開を楽しみにしていてください!

■さまざまなフィールド

プレイヤータウンである“トライヨラ”のよう自然の多いエリアだけでなく、“ソリューション・ナイン”という近代的なエリアもあるようだ。“トライヨラ”と“ソリューション・ナイン”は全く異なる文明によって築かれたとのこと。

――「黄金のレガシー」では、たとえば大規模戦闘、プレイヤー間の交流、QOL(ゲーム内の生活の質)の充実など、どういったユーザー体験を目標として開発をしていますか?

吉田氏:新たな挑戦、新たな側面を感じてもらいたいとは思うんですが、新しいことが正義だとは思っていなくて。いくら新しくてもつまらなかったら価値がなくなるので、押さえるところは押さえて、安心してこれまで通りのクオリティを感じられるというベースラインをしっかり取った上で、その上に新しさを感じてもらえるような展開だったり、ひとつひとつのクオリティの底上げだったりを目標にしています。

第二の新生のような感覚で挑んでいる感じです。ただ、当時の新生から比べたらはるかに経験も積ませていただいているので、3倍・4倍のゲーム体験をお届けできると思いますので、楽しみに待っていてください。

■新たな生活系大規模コンテンツ「コスモエクスプローラー」

惑星を訪れてたくさんのプレイヤーと協力しながら、開拓していくコンテンツになるようだ。詳しい内容はまだわからないが、アートワークには街のようなものやレポリットなどが描かれている。

――「新生エオルゼア」のサービス開始からの10年間でスキルやジョブ、ボス、ギミックなど、さまざまなゲームデザインが行われてきましたが、プレイヤーに新鮮な驚きとおもしろさを提供しています。こうしたアイデアはどこから生まれているのでしょうか。また、アイデアが枯渇しないために気をつけていることがあれば教えてください。

吉田氏:どこからアイデアが出るのかというのは、これだけ巨大なゲームになるとゲームデザインという一言で語るのは少し難しくて。全体の舵取りはディレクターとして僕がやっていて、次に挑む世界はこうだ、そこで訴えかけるテーマはこれで、こういうフィーリングを皆さんに与えるんだという話は全体にします。その中にストーリーを作っていき、コンテンツを配置していって、そのコンテンツの中のデザインって言うところは各担当に裁量を大きく渡すタイプのディレクターなんです。企画が上がってきた段階で確認をして、仕様になった段階でもう一回確認して、実機で確認してバランスをチェックして最後に通しチェックするっていう、それぐらいチェック細かくやってはいるんですけど、結局面白ければいいと! バランスは何とかみんなで取るから、とにかく面白いと思うものを作ろうとやってきました。

そこに対して新しいスタッフをできるだけ徴用していくことですね。そういうとかっこいいんですけど、第三開発本部は下剋上気質でして。バイトから入っても3年経ったらサブリーダーやってますみたいな子もいるんですよ。本当に面白いものをしっかりとしたコスト感覚でいろんな人に支えてもらいながら作れるっていうのは得難い才能だと思っているので、そういう人たちにアイデアを先輩たちがサポートしながら形にするというのをやってきたので常に新鮮というのがあるのかなと思っています。

もうひとつ、「FF14」をMMOだと思って作っているとおそらくアイデアが枯渇していると思っていて、ここは「ファイナルファンタジー」で幸いだったなと思っていますね。コンソールで育てられたゲームですし、開発の主力世代がオンラインでなくオフラインのゲーム体験で育ってきた人がまだまだ多いんです。それらのオフラインゲーム体験でのアイデアをMMOにしようとした場合どうなるかというチャレンジは、意外とMMO業界ではやれていないんです。そこが「FF14」の強みだと思っています。オンラインじゃなく「FF」だったらどうするだろうか、「FF」でこれができたら面白いよねとなってから、じゃあMMOでどうやるんだろうって。そこがもしかしたらアイデアが枯渇しない秘訣なのかもしれませんね。

――1月16日に公開となるパッチ6.55で追加される物語やコンテンツの見どころを教えてください。

吉田氏:パート2っていままであっさりした印象があったと思うんですけど、ウクラマトの魅力を描くためにも、普通にプレイしても2時間以上は遊べるようにしています。キャラクターたちの掛け合いが見物でツッコミ合いだったりとコミカルな一面をお見せできるんじゃないかなと思います。あとは、帰ってきたヒルディブランドがいよいよ完結するので今後どうなるのかが注目ですね! あほなノリでリテイクまでして作りあげたヒルディの完結編もぜひ楽しみにしていてください。継続的にパッチは用意していくので、それまでの間いろいろなコンテンツで遊んでいただければと思っています。

――「黄金のレガシー」に関する新発表のファンの反応はいかがでしたか?

吉田氏:「暁月のフィナーレ」でこれまで続いてきたハイデリンとゾディアークの物語が、まさかMMOでここまでキレイにエンドって出るとは思っていなかったと思うんです。「終わったんだけど1回。めっちゃすっきりしたし。これ、どうするんだろう」って光の戦士であればあるほど感じたと思うんです。ただこれは終わらせることで得られるカタルシスで、新生から石をひとつずつ積み上げてきたからこそのあのクライマックスなんです。

1回目のドミノは倒したので、さぁ2回目のドミノを積み上げていくぞっていうのが「黄金のレガシー」です。ただ、あれだけのクライマックスを迎えると人ってさらなるクライマックスを求めるんですよ。なので、インフレを1度リセットして、戦うべきものは強さだけじゃない部分も見せたい。それがあるからこそ、物語をさらにこの先続けていけることになると思います。

プレイヤーさんは次に対して期待感と不安感もあるはずで、フェスフェスとしてはいきなりネタバレでいくわけにもいかない、それでも期待感をもってもらえるような情報出しに気をつけていました。1回目2回目でのファンフェスでは、すごく自然の中でのびのびとした冒険みたいなイメージを作ってきて、それを一気にバーンと今回「うわ、なんだこれ、どうなるんだろう」という演出はできたのかなと思っています。そこに対してのみなさんの反応は、すごくポジティブにいろいろな要素を楽しみにしてくれていて、僕の不安感もかなり消えましたね。

■新たなレイドバトル

「FF11」をモチーフとしたアライアンスレイド「エコーズ オブ ヴァナ・ディール」。ファンフェスでは闇の王の画像が公開された。また、8人パーティで挑むレイドバトル「至天の座 アルカディア」の近代的な塔のようなアートワークが公開された。

――ペルペル族の隣に登場しているアルパカが気になります。マウントなどで登場するのでしょうか?

吉田氏:開発チーム内でアルパカ大人気でございます! なぜかというと、今回から実装した毛を表現できるファーシェーダ―が思う存分使われておりまして。それだけ愛でられているということは、光の戦士を乗せて駆けるでしょうし、なんだったら空も飛ぶんじゃないかなと思います。

■新たな友好部族“ハヌハヌ族”

“ハヌハヌ族”が公開されたスライド。真ん中にいる“ペルぺル族”の隣にアルパカらしき生き物が! “ペルぺル族”は特徴的な仮面を付けている小柄な部族でコーヒーなどのさまざまな飲み物を作っているそうだ。左上にはゴブリン族とルーツが同じ“モブリン族”。希少な素材を見つけ出す達人で密林に住む民族となっている。

――「黄金のレガシー」の前にやっておいたほうがいいことはありますか?

吉田氏:大丈夫です、ないです! これはいつもコンセプトにしていて、これやっとかなきゃというのはのめり込んでいるうちはいいんですけど、疲れた時に急につらくなるんですよね。アイテムレベルなどもあれだけレベルキャップが上がれば大きく変わりますので、中途半端な装備でも全く問題ありません。事前情報を追わなくても、新作RPGとして遊べるようにしているので、なにも考えずにストレートに遊んでいただけます!

ここまでがディレクターとしての回答で、プロデューサーとしては今アカウントが止まっている方には復帰してもらって遊んでくれた方が我々としては嬉しいです(笑)。お友達との再会とか今のシステムを体験しておくだとか。拡張で復帰するぞという方は1ヵ月前と言わず2か月前、3ヵ月前からゆっくりと身体を慣らしていただけると幸いです。

――「FF14」の次の10年に向けてなにを見据えていますか? また、20年、30年先のことかもしれませんが、ご自身の引退や世代交代など、運営の引き継ぎについてお考えになられることはありますか?

吉田氏:1回目のドミノ倒しを我々も壮絶に気持ちよくさせていただいたので、2回目も最高になっていくであろうドミノを並べて積み上げていきたいという感覚です。まだ7.0開発中ですが、これからの展開を2、3個思い付きはしているので、9.0くらいまではいまのままでも枯渇せずには行くんじゃないかと思っています。それはまだ僕の頭の中にしかなくて、あんまり先のことをスタッフに言っても逆につらくなっちゃうところが出てきちゃうので。今を全力でやった上でイメージしている展開の舵取りをしているつもりなので、引き続き安心して「FF14」という船に乗って一緒に航海を楽しんでいただければと思っています。

ライフワークとお話させていただいているので、もうゲーム業界から引退するまでは「FF14」で僕ができることをすべてしていきたいと思っています。もし仮に僕が倒れてしまったとしても「FF14」チームはもう大丈夫です! たしかに、僕のようにステージに立ってこれだけのお客様を前に拡張の話を2時間プレゼンするのは無理だと思います。形は変わると思うんですが、同じような興奮とか情報のお届けと言うのは間違いなくでます。

それは何人かで分担すれば可能ですし、ゲームの今の方向性というのもごく一部の人間には軽く話しています。「FF16」のプロデューサーを同時にやれたのも、もちろん人の3倍働いている自負はありますが、僕の機能をどんどん持って行ってくれている人たちがいます。なので、プロデュース部分はチームで成り立つし、ゲームディレクション部分も数人でできると思います。唯一変わるとしたら、僕が僕の個性で言ってたあほなことを実現しようとする人がいなくなることですね。逆に僕が重石になってそれができない人もいるはずで。なので、そういった新しいアイデアが出てくるチャンスでもあるのかなと。

みなさんが思っている以上にチームは強くたくましく成長させていただいております。当面なにがあっても「FF14」は安泰だと思いますので、ぜひ安心してプレイをしていただきたいと思います。もしゲーム業界を引退したとしても、1プレイヤーとして運営に文句を言う役を引き受けますので!

「黄金のレガシー」ティザーサイト
https://jp.finalfantasyxiv.com/dawntrail/

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