男子トップ20でグランドスラムジュニア優勝経験のある選手とない選手を調査

意外と少ない!?
グランドスラムジュニアにおける優勝者

現在、行われているウィンブルドンジュニア。将来、有望な選手が出場しており、男子シングルスは日本から磯村志が出場(1回戦敗退)。グランドスラムジュニアはプロで活躍するための登竜門のような大会だが、現在ツアーで活躍するプロはどのような成績を残したのか。今回は、男子トップ20(2021年6月28日付ATPランキング)でグランドスラムジュニア(シングルス)のベスト4に入った選手を調査した。

男子トップ20選手のうち
7人が優勝経験あり!

ジュニア時代の戦績を調べてみたところ、男子トップ20のうち、グランドスラムジュニアで優勝した経験がある選手は7人で、全体の35%だった。一方、グランドスラムジュニアで優勝していないだけでなく、ベスト4にも入ったことがない選手は8人おり、全体の40%だった。

ちなみにグランドスラム本戦優勝者(現役選手のみ)の中で、ジュニアでも同じ大会で優勝している選手は3人しかいない。ウィンブルドン8度の栄冠を誇るロジャー・フェデラー(スイス/同8位/1998年ウィンブルドンジュニア)、2015年全仏オープンを制したスタン・ワウリンカ(スイス/同30位/2003年全仏ジュニア)、そして、2012年全米オープン優勝のアンディ・マレー(イギリス/同118位/2004年全米ジュニア)である。同じ大会ではないが、2014年全米オープン優勝のマリン・チリッチ(クロアチア/同37位)は、2005年全仏ジュニアで頂点に輝いている。

一方、現在世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)はグランドスラムジュニアで優勝した経験がない。ジョコビッチの場合は、早い段階でプロに転向したことが一つの理由だと考えられるが、同2位のダニール・メドベデフ(ロシア)に関しては18歳でプロに転向しているにもかかわらず、グランドスラムジュニアでベスト4に入ったことすらなかった。メドベデフのジュニアランキングにおける最高位は13位だった。

ジョコビッチのように、選手によっては早いうちにプロに転向し、まだジュニアとして大会に出場できる年齢であっても、ツアー下部大会のチャレンジャーやフューチャーズに出場し始める。例えば、ラファエル・ナダル(スペイン/同3位)は優勝した2002年ウィンブルドンとジュニアデビスカップの2大会しか出場していないし、同11位のディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)は2009年にグレード5のITFジュニア大会で優勝した以外はタイトルがなく、ランキングも217位だったが翌年2010年にプロに転向している。多くの選手がグランドスラムジュニアに出場していながらも、ベスト4にすら進出していないことも事実だ。

モンフィスはグランドスラムジュニア3大会を制覇

現在の男子トップ20のうち、グランドスラムジュニアで2回以上優勝しているのはガエル・モンフィス(フランス/同17位)だけだった。モンフィスが優勝を飾った2004年の全豪オープンではジョコビッチもベスト4まで進出している。とはいえ、準決勝においてジョコビッチをストレートで倒した相手を、決勝でモンフィスは6-0、6-3で破っており、力の差が見て取れる。

2016年の全米オープンでは、フィリックス・オジェ・アリアシム(カナダ/同19位)が優勝、ベスト4にステファノス・チチパス(ギリシャ/同4位)が入っている(準決勝でオジェ・アリアシムに敗退)。この時に準優勝したのはミオミール・ケツマノビッチ(セルビア/同49位)で、このケツマノビッチに準決勝で敗れたのが綿貫陽介(日清食品/同254位)だった。このように、2019年のウィンブルドンジュニアで優勝した望月慎太郎(Team YUKA/同499位)などの日本人選手をはじめ、アジアの選手らがジュニアの大会で活躍するケースは多々見られる。

錦織圭は全仏ジュニアのダブルスで優勝
大坂なおみはジュニアの大会を飛ばしてITF大会へ

グランドスラムジュニアのシングルスではベスト4に入った経験はないものの、2006年に全仏オープンのダブルスで優勝している錦織圭(日清食品/同53位)。この時のシングルスではベスト8で敗退している。とはいえ、この時点での錦織の年齢は16歳。ITFジュニアは18歳まで出場することができるため、他の選手と比較して若かったことがわかる。翌年にプロ転向し、18歳の時にATP250デルレイビーチ国際選手権(アメリカ・デルレイビーチ)でツアー初優勝した。

2013年、16歳でプロ転向した大坂なおみ(日清食品/同2位)は、ジュニアの大会には出場していない。2012年に15歳でITF大会に初めて参戦し、翌年にはWTA大会の予選に出場している。その後、2018年に全米オープンで優勝。初めてグランドスラムのタイトルを手にした。

ジュニアとプロの間にある隔たり

上記のデータを見ると、現在のトップ選手が必ずしもグランドスラムジュニアで最高の結果を残してきたというわけではないことがわかる。逆に言えば、ジュニア時代に素晴らしい成績を残したとしても、プロとして通用するかは別問題だ。プロを目指している選手にとっては、ジュニアとして活躍するよりもプロになってから活躍することが重要であり、その間にある隔たりは何なのかを考えていく必要がある。

プロになってからどのような活躍ができるのかを早い段階で見極めるのは非常に難しい。その意味では、諦めずに夢を追いかけ続けることも、プロとして活躍するための一つの大切な要素だと言えそうだ。

文=山根ゆずか

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