安室奈美恵「SWEET 19 BLUES」いつの時代にも通じる小室哲哉のスタンダードナンバー  安室奈美恵の名曲「SWEET 19 BLUES」は、令和時代の今、聴き手にどう映るか?

90年代デビューアーティスト ヒット曲列伝vol.12
■安室奈美恵「SWEET 19 BLUES」
作詞:小室哲哉
作曲:小室哲哉
編曲:小室哲哉
発売:1996年8月21日
売上枚数:45.3万枚

1990年〜1999年の10年間にデビューし、ヒットを生み出したアーティストの楽曲を当時の時代背景や、ムーブメントとなった事象を深堀しながら紹介していく連載の第12弾。今回は、安室奈美恵「SWEET 19 BLUES」を紹介します。

1996年の安室奈美恵は社会現象だった!

前年の1995年10月に「Body Feels EXIT」で初の小室哲哉プロデュース楽曲をリリースした安室奈美恵は、続く日本テレビ系列で放送されたドラマ『ザ・シェフ』の主題歌に起用された「Chase the Chance」でシングルチャート初の1位を獲得、1996年3月リリースの「Don't wanna cry」「You're my sunshine」と、3作連続でミリオンヒットを記録し、約1年でJ-POP界のド真ん中に君臨します。

“安室奈美恵のようになりたい!” と思う女性たちが街にあふれ、ミニスカートに厚底ブーツでロングヘアの茶髪というスタイルの “アムラー” ファッションが流行し、その言葉が1996年の『新語・流行語大賞』に選出される社会現象を巻き起こしていました。

プロデューサー小室哲哉が魅せた、普遍性とトレンドの巧みな融合

シングルが3作連続でミリオンヒットを記録した飛ぶ鳥を落とす勢いの中で、この曲をタイトルにしたアルバムがリリースされることが発表されます。

プロデューサーの小室哲哉が目指したアルバムのコンセプトは、全てのブラックミュージックのテイストを網羅したサウンドアプローチで、当時19歳だった安室奈美恵と同世代の女の子が持つ世界観を、しっかりと映し出すこと。アルバムの顔となるこの曲の歌詞を、安室奈美恵が今、思っていること、考えている心境を偽りのない形で出したいと考え、二人で話し合いを重ねた中で出てきた言葉を、この曲のフレーズに落とし込んでいきます。

言葉を歌詞へと落とし込んでいる時に小室哲哉が意識していたことは、「いつの時代でも通じる、普遍的な言葉」を使うこと。この曲がリリースされた後のインタビューで小室哲哉は、こう話しています。

うーん……。その時代やブームを感じさせるところと、時代に関係ない普遍的なところか。よく例に出てくる、湯川(れい子)先生が書いた「恋におちて -Fall in love-」の「ダイヤル回して 手を止めた」っていう表現は、いい点と悪い点の両方ありますよね。その時代を象徴している言葉でもあるし、ダイヤルどころかプッシュでさえ番号を入れない今の時代では通じないことにもなる。僕の場合はこれがたまたまどっちでもないというか、どっちにしなきゃって考えたことがあまりないかもしれないです。

今パッと浮かんで、そういえば「どちらでも大丈夫なように」って考えたなっていうのは、安室(奈美恵)さんになっちゃいますけど「SWEET 19 BLUES」の「ベルを鳴らして」っていうフレーズ。あのとき、ちょうどポケベルと携帯電話と固定電話の3つがあった時期で。「ベル」なら、ケータイでも大丈夫だろう、ポケベルでも大丈夫だろうと。だからその前に何も付けず「ベル」だけにしたんです。cite: 音楽ナタリー「小室哲哉、20年目の再プロデュース trf を語る」より

あなたが19歳だった時、どんなことを考えていましたか?

安室奈美恵の内面を言葉にした歌詞を、ブラックミュージックのテイストの中から “ブルース” を選び、バラードとして仕上げたこの曲をタイトルにしたアルバムは335万枚のトリプルミリオンヒットを記録。彼女の人気をさらに不動のものへと導きます。

大人でもない、子供でもない年齢に、多くの人が感じる心の葛藤や成長を、むきだしで描いた「SWEET 19 BLUES」は、令和時代の今、聴き手にどう映るでしょうか。

 もうすぐ大人ぶらずに
 子供の武器も使える
 いちばん 旬なとき

 さみしさは昔よりも
 真実味おびてきたね
 でも明日はくる

 世の中かっこつけてて
 それよりかっこよくなきゃいけない
 もし飛び出るんだったら

2018年の引退まで、自らのスタイルを一切変えることなく貫いた時代の寵児が人生の甘さや苦さを、ポップにかつ耽美に歌う言葉たちは、どの世代が聴いても、19歳だった頃を思い出すスタンダードナンバーとして輝きを放ち続けています。

できればもう一度、パフォーマンスを観てみたいと思うのは、私だけではないでしょう。

カタリベ: 藤田太郎

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